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彩伽2
二人が見ていたのは、ランドセルを背負った彩伽だった。
「これは・・・マロンに出会った時ね。」
彩伽が呟いた。
アルテルは黙ってその光景を見つめている。
状況が呑み込めないまま、それでもそんなことはどうでもよくなっていた。
彩伽を知りたい。
彩伽がどのように生きてきたのか、知りたい。
その思いの方がずっと強かった。
夢中になって見入っているとあっという間に時間は過ぎ、
彩伽は今の姿と同じになっていた。
そして、マロンが亡くなった日が過ぎ、家族3人で丘へ出かけた日の光景となった。
父がマロンの喪失感で意気消沈する家族を元気づけるために車で訪れたその場所は、
マロンと共によく訪れた場所だった。
しかし、彩伽はそれに反発し、帰宅することになる。
「いつも、ここで止まるのよ。」
何度も再生した記憶。
この先に一体何が起きたのか。
彩伽はその記憶こそがカギになっていると考え必死に思い出そうとしてきたが、
今では思い出すのが恐ろしいと感じている。
しかし、ついにその先の光景が広がろうとしていた。




