継続12
思い出せない記憶。
それは、すなわち思い出したくない記憶。
自分の身に何が起こったのか、一時は必死に思い出そうとしたけれど、
もう、どうでもいいとさえ思っていた。
それでも突然に思い出す日が来るのかもしれない。
そして、アルテルの恐れているような私の想像力の枯渇と消滅が起こるのかもしれない。
例えそうだとしても。
「アルテルは私を特別だと思っているのでしょう?」
頬を赤らめてなおアルテルはうなずいた。
「それなら、私が消滅する時に、あなたも一緒に行けるかもしれないわ。」
その言葉には、アルテルは暗い表情を見せた。
「…さっき見たここの全体像を覚えていますか?。」
彩伽は黙って頷いた。
「その中に、善をつかさどる部屋と、悪をつかさどる部屋があります。
その中には誰もおらず、ただ、思念が渦巻いている。」
アルテルは、意を決したように告げた。
「私はその中に渦巻く善の思念と、悪の思念を半分ずつ合わせて作られた47番目の存在です。」
この、世界の根源とも思える場所に意思があり、そういった存在を作っているのか、
彩伽にはわからなかったが、アルテルが次に発する言葉を待った。
「1番目から46番目までは今なお健在で、48番目以降も存在しています。
私たちはこの世界の子供です。
私の本来の名は、クァドラーギンター・セプテム。
47番目の子供という意味です。」
番号が振られている以上欠番はあり得ない。
世界がそう言っているかのようだ。
「つまり、この世界の子供たちは、一人もかけたことがないという事なのね。」
アルテルは黙って頷き、そのままうつむいた。
「…アルテル。
この先どうなるかはアルテルも私もわからない。
けれど、この世界が必要としているのは、世界を創造する者でしょう?」
「はい」
彩伽はアルテルの両手を握りしめた。
「それなら、私が世界を作らなければ、不要な存在として排除されるでしょう。」
アルテルはハッとした。
「やらなければならないことはわかっている。
…それが、いつまでなのかは、誰もわからない。」
「…」
「いつか、終わりは来るのでしょう。
きっと、それは避けられない。」
アルテルの大きな瞳から大粒の涙がこぼれた。




