はじまり 1
規則的な回転が不規則に変わる。
「え…」
迷いがそのまま投影されたかの様な揺らぎに、
ますます動揺する。
それはすぐに反映され、
涙が滲みそうになった。
「大丈夫。
あなたの心の形を伝えればいい。」
『私の心の形…』
目を閉じて想像すると、
映画のワンシーンに登場しそうな自然風景が広がっていた。
広大な湿地帯に生い茂る木々。
豊かな水はやがて瀧となり、
それらの自然は色とりどりの動物と共にある。
文明社会で暮らしてきた自分の中にあるものが、
これほどに豊かな自然なのか。
戸惑いを隠せないものの、
確かにそれは私の心だった。
やがて小さな川となり、
直径30mほどの泉のほとり。
ガラスの家に私は居た。
手を伸ばすと、心の中の私は応えて手を伸ばしてくる。
そうして。
『重なる』
不思議な光景。
不思議な感覚。
目を開けばそこにガラスのステッキが形成されていた。
鳥の翼が羽ばたき、
瀧が流れ泉に至る。
そして、重なる心。
「なんて美しい…」
アルテルが暫し見惚れて、
やがて気を取り直して私の左手をとった。
「この手で右腕の傷に触れて、
それからステッキを。」
手にした瞬間、傷は塞がり、
纏っていたものが全て変わった。




