継続7
これまでいた場所を抜け出して、広い空間へ連れ出された彩伽は、
アルテルに促され振り返った。
すると、そこには、ぶどうの房のような巨大な物体があった。
その中央には円柱状に空洞があり、その中を上から下へ光の粒が流動している。
下から出た光は巨大な物体の全体を覆うように今度は下から上に流れ、
また円柱状の中心へ流れていた。
光の隙間から時折見え隠れするのは大小ざまざまな、部屋だろうか。
つい先ほどまで自分はあの中の一つにいたのだろう。
「アルテル…」
何をどう言葉にしていいかわからなかった。
ただ、これが世界の中心のようなものであることは、
想像出来、同時にその恐ろしさに震えた。
「卵が先か鶏が先かという話はナンセンスです。
この世界は、人の想像力で形成され、成長し、そして崩壊していく。」
世界の中のただ1人の人間だったのに、
今は世界を作っている。
「想像力で生み出される世界の中に、
とてつもない想像力を持つ存在が現れた時、
その存在は目の前の世界に絶望し、ここへやって来ます。」
アルテル言葉を少し遠くに感じながら、
めぐり巡るその姿を呆然と眺めていた。
「その想像力は世界を壊しかねない諸刃の剣。」
アルテルは真っ直ぐ彩伽の瞳を見つめると、
少しな悲しげな顔で告げた。
「いつからこのようなシステムで世界が成り立っているのか、
わかりませんが…、想像力が枯渇すれば、
やがてあの光の循環の中に還ることになります。」
アルテルは、きっといくつもの別れを経験してきたのだろう。
「今、初めて、その別れを恐ろしいと感じています。」
アルテルの言葉に驚き、無意識に目を丸くした彩伽。
「彩伽と出会ってから、初めてのことばかりだ。」
複雑な表情を浮かべるアルテルは、
初めて会った時とは全く別物だった。
 




