継続 6
けれど、ある時に、
その惑星の一日を、私とアルテルも一日として考える事にしたのだ。
小さな球体の状態で惑星を見る時、視点を1箇所に留める事が出来る。
それは最初から出来た事だった。
最初は、その惑星のある一点に視点を留め、
生活のサイクルを一日として、感覚的に捉えていたが、
いつしかカレンダーや時計が現れる。
そうして更に時間は経過し、文字は読めないものの、
1ヶ月がおよそ30日前後であり、
12ヶ月で1年という区切りがある事がわかるようになる。
その惑星には衛生があり、まるで地球のよう。
ただし、時間の区切り方が違うらしく、
正確に24時間と言うことではないらしい。
その惑星に暮らす人々は、1日を2つに分割して考えているようだった。
空に光のある時間帯と、暗闇に包まれる時間帯。
雨が降ったり、光が陰ると外には出たがらない。
当然暗闇の中には踏み出さない。
そういう人々だった。
やがて、その惑星の日付が明確になってから3年が経過した。
感覚的に振り返れば、恐らくは此処に来てから10年は経過している。
あのまま地球で暮らしていれば、
私は今頃26歳~28歳といったところだろうか。
アルテルとの間に違和感を感じる事はもはや殆どなくなっていた。
何よりも、私自身が此処に適応しているのだろう。
目安としてつけているだけで、日付は決して拠り所ではない。
何しろ私やアルテルの外見や、此処の様子は何も変わらないのだから。
鏡を見て「ああ、皺が増えた」とか、
「私も年を取った」と実感する事がない。
変わり行くのは惑星の数と様子だけだった。
此処は何も変わらないのだと、もはや確信していた。
しかし、それはある日突然、
否、本当は少しずつ変化していたのかもしれない。
ある一箇所の壁が明滅を繰り返し、
その壁の方へ向かって空間が広がりつつあるようだった。
確かではない、なんとなく感じた違和感を元に、
基準点を設けてみると、やはり実際に空間が広がっている。
確信に変わると同時。
「アルテル…どうも此処は大きくなりつつあるようなのだけれど、
どういう事なのかしら?」
私の問いかけにアルテルは。
「…ついに、この時が来たんですね。」
呟くように言うと、諦めのような、
少し寂しそうな表情を浮かべた。
ずっと以前から、アルテルには語ろうとしない事があった。
自分の存在について、極力話そうとはしてくれるものの、
根源的な話には一切触れようとしない。
その事で、
アルテルの存在そのものが何かの答えである、と、予感していた。
おもむろにアルテルが私に近付き、両手を差し出した。
言葉にしない意図を自然と理解できて、殆ど反射的に両手を重ねると、
アルテルは元のタキシード姿に戻る。
「戻ってはいません。
よく見て。」
そう言われてよくよく見てみると、
元は灰色だったタキシードが今はシルバーで、
時折光を反射させて輝いていることに気付く。
軽く身体が浮いた事を感じると、
次の瞬間には全く違う景色の場所に出ていた。
何かを突き抜けた間隔は、気のせいではなかったと気付くのに、
そう時間は掛からなかった。




