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継続 1
アルテルはアルテルのままでいて欲しい。
それを一時とはいえ汚してしまった事が悔やまれた。
「ごめんね、アルテル。
アルテルは、アルテルのままでいて。」
記憶を追いかけるのは、もう止めよう。
そんな風に思ったのは初めての事だった。
どれ位の時間が過ぎたのか、
正確にはわからない。
けれど、今、決して短くない時間の中で、
環境に適応し、前向きに生きていこうとしている自分がいる。
「アルテル、私はこの世界で生きていく。」
地球では亀の甲より年の功と言うことわざの通り、
時を経たものが優るとされていたけれど、
此処ではそんな事は通用しない。
時間の概念がなく、
経験だけが増えていく。
比較対象はなく、優劣を考える事すらない。
いつまで続くのかわからない此処での生活を、
一人で過ごしていたなら、投げ出していたに違いない。
「彩伽、私も彩伽が好きです。」
友があれば、
生きていける。
一人でない事が、こんなにも大切だと、
心の底から実感していた。




