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展開 10
泣きながら状況を伝えると、
両親も泣きながら抱きしめてくれた。
死因を特定する為に獣医に診てもらう事も検討したが、
マロンの身体を傷付けたくないという意見で一致。
死因不明のまま火葬する事になった。
マロンは、幸せを運んでくれた大切な家族だった。
その喪失感は想像を絶するもので、
3人とも突然の事に対処しきれず、
ふと涙が溢れ出したりする。
仕事や家事が全く手につかず、食欲もない。
それでも生きていかなければならず、
夫々が戦いながら、日常を這いつくばるように進んだ。
そんな悲しみの日々が、ついに8日目を迎えたその日、
父は妻子を元気付けようと、無理をした。
「出かけよう。」
意を決して言った父は気丈に振る舞い、
私たちを慰めようとピエロになっていた。
無理に明るく振舞う様は痛々しくて、
しかし、そんな父の姿に母も同じ様に努力を始めた。
両親の優しさが苦しくて切ない。
だから、訪れたマロンとの思い出の丘で叫んだ。
「無理しなくて良いよ!!
こんなの、変だよ。」
また3人で泣き崩れ、
日が暮れるまで何をするでなく過ごした。
「…帰ろうか。」
ぽつりと父が言い、私たちは丘を降りた。




