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旅立ち  作者: 白銀みゆ
35/119

展開 9

「マロン?」


その日、一番早く帰宅したのは私だった。

高校生の私は、友達と遊ぶ事もあったけれど、

この日は両親の帰りが遅い事がわかっていた為、

なるべく早く帰ろうと努め、16:30には帰宅した。

季節は冬に近く、空は暮れかけていた。


「マロン?」


呼びかけながら家中を探す。

家の中にいるはずのマロンが、どこにも見当たらない。

庭に面した窓が開いているのに気付き、庭に出た。

すると、植木の下に黒い影が見えた。


「・・・マロン?」


その姿は出会った時の風景を思い起こさせた。

恐る恐る近付くと、マロンは眠っているように見えた。

しかし。


「マロン…。」


触れた瞬間、マロンがもう逝ってしまったのだとわかった。

冷たく、硬く、少しも動かない身体。

毛の触り心地は心なしか柔らかく、生きている間のそれとは何もかも違っていた。


庭にへたり込み、動けないまま、

ふと気付けば、辺りは暗闇となっていた。

寒さに身震いしてようやく我に帰り、

マロンをこのままにしておくのは可愛そうで、

抱き上げて、また膝の力が抜けた。

何故こんなに軽いのだろう。

こんなに冷たいのだろう。


「マロン・・・」


涙が溢れて止まらなかった。

その涙がマロンに落ちて染みる。

いつか見たアニメのように、

マロンが生き返ってくれないだろうか。

夢のような考えが頭を過ぎり、

また切なくなった。


その後、マロンをタオルで包み、両親の帰りを待った。

珍しく駅で偶然会った、と、一緒に帰ってきた二人は、

異常に気付くなり私に駆け寄った。


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