表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旅立ち  作者: 白銀みゆ
32/119

展開 6

マロンはまだ小さくて、

ずっと苦しそうに鳴いていた。

一人、砂場で遊ぼうとしていた私の耳に、

時折聞こえてくる小さな声を追いかけ、

人目につかない低い植木の間にマロンを見つけた。


「開けて!!」


マロンを抱えて病院に行った私は、ドアを開けられずに叫んだ。

病院の制服を着た女の人が出てきて、

マロンを見るや、驚きの声を上げた。


「公園で鳴いてたの。

 助けてあげて!!」


泣きそうになるのを必死で堪えて言うと、

女の人はタオルを持ってきて、マロンを包んで連れて行った。


呆然と立ち尽くしていると、他の女性スタッフが別のタオルを持ってやってきて、

私を化粧室へ連れて行ってくれた。

汚れてしまった手や服を出来る限り綺麗にしてくれると、

そっと頭を撫で。


「ありがとう。」


と、お礼を言われた。

私はそれが酷く不思議で、少し首を傾げた。


「動物を、大事にしてくれてありがとう。」


私は、まだよくわからなかったけれど、

頷き、訊ねた。


「あの子、治る?」


女性は一瞬戸惑った表情を浮かべたけれど、

すぐに笑顔になり。


「きっと大丈夫よ。」


そう力強く言ってくれた。


それから、待合室でマロンの手術が終わるのを待っていると、

帰る時間を知らせる17時の音楽が鳴った。

私は家に帰り状況を説明すると、親と共に再び動物病院を訪れ、

マロンの手術が終わるのを待った。

食事も摂らず、ただ待っていた。


マロンは一命を取り留めた。

蹴られ踏みつけられ、所々カッターで切り裂かれており、

内臓にも損傷があったため、手術に時間がかかったそうだ。

幸い命に関わるまでの重篤な傷はなかったものの、

放置すればいずれは死んでしまうような状態だった。


「よく連れてきてくれたね。

 君はあの子の命の恩人だよ。」


先生はそう言い、私の頭を撫でた。

そうして、一通りマロンの病状の説明が終わると、

大人たちだけでの話し合いが始まった。

その内容を聞き取ることは出来なかったけれど、、

恐らく今後の事を話していたのだろう。


話が一段落したのか、

母が私に歩み寄り、目の前に膝をついて語りかけてきた。


「彩伽、あの子が元気になったら、お家に一緒に帰る?」


そう訊かれ、私は即答していた。


「うん。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ