展開 6
マロンはまだ小さくて、
ずっと苦しそうに鳴いていた。
一人、砂場で遊ぼうとしていた私の耳に、
時折聞こえてくる小さな声を追いかけ、
人目につかない低い植木の間にマロンを見つけた。
「開けて!!」
マロンを抱えて病院に行った私は、ドアを開けられずに叫んだ。
病院の制服を着た女の人が出てきて、
マロンを見るや、驚きの声を上げた。
「公園で鳴いてたの。
助けてあげて!!」
泣きそうになるのを必死で堪えて言うと、
女の人はタオルを持ってきて、マロンを包んで連れて行った。
呆然と立ち尽くしていると、他の女性スタッフが別のタオルを持ってやってきて、
私を化粧室へ連れて行ってくれた。
汚れてしまった手や服を出来る限り綺麗にしてくれると、
そっと頭を撫で。
「ありがとう。」
と、お礼を言われた。
私はそれが酷く不思議で、少し首を傾げた。
「動物を、大事にしてくれてありがとう。」
私は、まだよくわからなかったけれど、
頷き、訊ねた。
「あの子、治る?」
女性は一瞬戸惑った表情を浮かべたけれど、
すぐに笑顔になり。
「きっと大丈夫よ。」
そう力強く言ってくれた。
それから、待合室でマロンの手術が終わるのを待っていると、
帰る時間を知らせる17時の音楽が鳴った。
私は家に帰り状況を説明すると、親と共に再び動物病院を訪れ、
マロンの手術が終わるのを待った。
食事も摂らず、ただ待っていた。
マロンは一命を取り留めた。
蹴られ踏みつけられ、所々カッターで切り裂かれており、
内臓にも損傷があったため、手術に時間がかかったそうだ。
幸い命に関わるまでの重篤な傷はなかったものの、
放置すればいずれは死んでしまうような状態だった。
「よく連れてきてくれたね。
君はあの子の命の恩人だよ。」
先生はそう言い、私の頭を撫でた。
そうして、一通りマロンの病状の説明が終わると、
大人たちだけでの話し合いが始まった。
その内容を聞き取ることは出来なかったけれど、、
恐らく今後の事を話していたのだろう。
話が一段落したのか、
母が私に歩み寄り、目の前に膝をついて語りかけてきた。
「彩伽、あの子が元気になったら、お家に一緒に帰る?」
そう訊かれ、私は即答していた。
「うん。」




