展開 5
6歳の頃だった。
いつも遊んでいた公園の片隅、
傷だらけで今にも死んでしまいそうなマロンを、
自分の服が汚れる事など考えずに抱き上げた。
誰に相談するでなく動物病院に駆け込んだのは、
動物の家族が欲しくて、何度か足を運んだ事があったから。
土曜日や日曜日、
動物病院の駐車場では、
ボランティアの集団が里親を募り、保護した動物を何匹か連れ、
朝から夕方まで興味を持つ人に受け答えていた。
最初の数回こそ、親に連れられていたが、
目移りして1匹に絞る事が出来ない私に痺れを切らし、
その後は一人で訪れていた。
家から大人の足で徒歩2分の場所だし、
いつも遊んでいる公園へ行く途中にあった為、
里親の募集がなくても、病院の中を覗き込んだりしていた。
何度目かの里親募集で、右前足を失った猫の入ったケージの前、
じっとその猫を見つめていると。
「どこかで怪我をしてしまったみたいで、
治そうとして自分で傷を舐めてしまったのね。
ばい菌が入って、熱が出て、弱って動けなくなっている時、
優しい人が見つけて、この病院に連れてきてくれたんですって。」
ボランティアの人は、隣に座って話してくれた。
「足を切らないと死んでしまうから、
ここの先生が足を切って、綺麗にしてくれたのよ。
足は失ってしまったけれど、今はすごく元気。
あなたも、怪我をしている動物を見つけたら、
病院へ連れて行ってあげてね。」
反射的に。
「うん!」
と、答えていた。




