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展開 4
アルテルの腕の中で、
何を嘆いているのか見失う程に嘆き続けた。
その腕は頼もしく、優しく包み込んでくれていた。
何故だか、それすらも悲しくて、
暫く「どうして、どうして…」
と、何かを責めるように言い続けた。
そうして、何故なのかを悟った。
今、私は頼もしい温もりに優しく包まれているけれど、
マロンはあの不可解な球体の中にいる。
それは、どんな感触なのだろ。
寂しくないのだろうか。
もはや、感覚はないのだろうか。
冷静に考えれば、
マロンがどんな存在だったかも、わからなかった。
わからないまま居なくなってしまった。
今となっては、確認のしようもない。
「アルテル…マロンは一体なんだったの?」
答えなど期待していなかった。
ふと、口を吐いてしまっただけのこと。
しかし。
「マロンさんは、マロンさんです。
あなたの知っているマロンさんが、全てです。」
ますます謎が深まる。
何故なら、マロンは私が此処に来る数日前に、
死んでしまっていたから。




