決別 3
「では、彩伽。あなたの好きな色は?」
口にする前に、アルテルはステッキを一振りした。
すると、頭の中に浮かべた水色が辺りを取り囲んだ。
8畳ほどのスペースだろうか。
少し広めの一間だ。
「天上はどんな風?」
また、思い浮かべた瞬間にアルテルがステッキを振ると、
青空に雲が浮かんだような天上が現れた。
次から次へそんなやり取りを繰り返し、
質問に疲れた頃。
「さあ、どうぞお掛けになって。」
促されるままソファに腰掛け、
ふと見回せば部屋が出来上がっていた。
「いい部屋ですね。」
全ての色やデザインは彩伽の頭の中にあり、
自分が褒められているのだとわかった。
「ありがとう。
でも、不思議で仕方がないわ。」
言った途端、アルテルの放つ空気が変わった。
「今は不思議な事でしょうが、
これからはあなたがこのような事をするのですよ。」
妙に冷たく、死の宣告でもされたかと感じた。
意味がわからず、頭の中で反芻された言葉に、
ますます混乱していく。
そうしてある考えに至る。
『帰りたい』
しかし、それまでとは違った。
それは叶えられないという風に、
アルテルが首を横に振っていた。
「…帰れません。
だって、あなたが捨てたのですから。」
 




