展開 2
「マロンさん、どこへ行かれたんでしょうね。」
アルテルは心配そうに言いながら、
思い悩んでいるような表情を隠すように俯いた。
「アルテル?」
顔を覗き込むと、困った風な顔で一つため息を漏らす。
「いえ、何でもありません。」
目を合わせずに誤魔化そうとするアルテルの両腕を、
正面からしっかり捕まえる。
「嘘はダメよ。」
瞳を瞳で捕らえ、強く言った。
狼狽しながらも、なおも隠そうとするアルテルへ、
私は、自分も驚く程の強い声を発した。
「アルテル!
隠さないで!」
それは決して大きな声ではない。
けれど心の真ん中に真直ぐに届き、
制する強さを持っていた。
アルテルは驚き目を丸くした。
一呼吸おいて苦笑いを浮かべると。
「表情が率直に出ると言うのは、本当に困りますね。」
他人事のように言い、
吹っ切るように一度深呼吸をした。
覚悟を決めた様子を見て、
アルテルの両腕を解放した。
すると、今度はアルテルが私の両腕をしっかり掴む。
「…一つ、仮説を立てたのです。」
先ほどまで隠していた事が信じられない程に、
揺らぎのない視線。
しかし、その瞳には計り知れない悲しみが満ちている。
それは、ただの仮説ではなく、
殆ど確信なのだと告げているようで、
聴くのが恐ろしくなる。
それでも、聴かなくてはいけない。
私が求めたのだから。
「どういうこと?」




