発見 9
そして、アルテルは、
ゆっくりと振り向いた。
「出来ますよ。」
値踏みでもする様に見つめてくるアルテルへ、
私は首を傾げながら自分の考えを話した。
「今、此処にあるこの生物…
仮にシルバルドとでも言いましょう。
シルバルドから、バランスを取れるところまで要素を吸収してから、
世界に帰すのはどうかしら?」
アルテルはそれを聞くと目を輝かせて、
明るい空気を撒き散らした。
「素晴らしい!!」
踊りだすのではないかと言うくらいの勢いに、
思わず一歩引いてしまう。
「これは失礼。」
照れた仕草が妙に可愛い。
ウサギのようで、
決してウサギではない二足歩行の不思議な存在に対し、
これまで一度も可愛いと思った事がなかった。
だからなのだろうか、
気付くと、無意識にアルテルを撫で回していた。
「あ・・・あのぉ・・・」
困惑する様子が更に可愛いアルテルへ、
堪えきれずに抱きついた。
初めて知るアルテルの感触。
ウサギのようなふわふわの羽毛では無いものの、
艶めく毛は猫のそれに近い。
伝わる温もりで心が和んだ。
「さ、彩伽!!」
慌てる様子はあるものの、
決して逃れようとはしない。
逃げたところで離すつもりはなく、
ずっと此処にいれば良いのに…
と、思った。
「アルテル…」
思い余って頬に口付けると、
アルテルは真っ赤になってしまった。
「なっ…ななななっなにをっ…」
赤いままのアルテルに、
白いタキシードを着せたくなり、
思い浮かべてみると、
あっさりその姿を見られた。
「素敵よ、アルテル。」
もう一度抱きついて、
先ほどとは反対側の頬にもう一度キスをした。
するとアルテルは突如跪き、私の手を取り口付ける。
「彩伽、この世界の掟により
私は只今をもって彩伽の従者となります。」




