発見 8
銀色に不安定な動きを見せるそれは、
どこかで見たことがあるように思えた。
ずっと思いだせずにいたが、
今になって急に思い至る。
「水銀…の様ですね。」
頭の中に浮かんだ言葉を、
アルテルが口にした。
「ええ。」
同意をするとアルテルは続けて言った。
「恐らく、成長過程にあった世界の要素部分を、
半分丸ごと持ってきてしまったのでしょうね。」
不安定な様相を見せるその無機生物が、
水銀で構成されている事は間違いないようだ。
しかし、私は化学が得意でない。
「イオンバランスが崩れているのですよ、
この存在も、今そこにある世界も。
それ故、お互いを求めているのでしょう。
これは戻した方が良いです。
ただ…。」
言いよどむアルテルに、
化学的には理解出来ないにしろ、なんとなく察しがついて。
「元は半分だったものが、
今はそのまま戻すとバランスが取れない…。
そういうことかしら?」
アルテルは深く頷いた。
「はい。
この生物が、此処で何故このように成長したのかは、
正直わかりません。
しかし、成長しすぎていて、
元の世界に戻したとしてもイオンバランスは安定しないでしょうね。
最悪、世界が消滅してしまうか、
あるいはこの世界が周りの世界を飲み込んでしまうか。
それとも他の現象か…
何が起きるやら想像出来ません。」
暫く誰もが口を閉ざした。
良い考えも浮かばないまま、時間は過ぎて行く。
その時、不意に別の世界が壊れた。
滅びた時、その要素は私に還ってくる。
急速に流れ込むそれらを感じながら、ある考えが過ぎった。
「壊れていない世界から、この要素を取り出す事は出来るのかしら?」
その言葉を耳にしたアルテルは、
瞬間、大きな耳を揺らした。




