発見 7
マロンが例の世界に入る。
と、次の瞬間、
その世界に吸い込まれるようにマロンは姿を消した。
それが食べるという行為なのか、定かではない。
言い表すならば、“取り込まれた”
と、言うのが相応しいのではないだろうか。
考えているうち、マロンが帰ってきた。
「彩伽、どうだった?」
マロンはそう言って、
ぶるぶると水を払うように身体を動かしながら訊ねると、
身体を休めるように横たえた。
「お疲れ様。」
言いながら撫でると、マロンはとても嬉しそうにする。
そういえば、最近ちっとも触れていなかった。
「彩伽ぁ~…」
服の裾を肉球で何度も引っ張るようにして、尻尾を振る。
それは、マロンが膝に乗りたい時の動作だった。
絨毯を敷き、クッションの上に座ってから、
マロンを抱き寄せた。
膝の上に落ち着くと、
マロンは眠そうにしながらも先ほどの質問を繰り返すから、
撫でながら答えた。
「食べられるというより、取り込まれている感じだったわ。」
マロンが最初にあの世界に行った時には、
少なくともそんな事は起こらなかった。
だから、此処にサンプルはあるし、
今も成長を続けている。
世界も成長しているのだろうか。
「ボクがあの世界から一部分を持ち帰った事が、原因なのかなぁ。」
だとすれば、あの一部を返せば良いのだろうか。
マロンを取り込むという行為が、
足りないパーツを補おうとしているのなら、
きっとそういう事になるだろう。
しかし、今となってはあの無機生物がどれほどに大きくなっているか、
検討もつかない。
器の中から出したら、この空間が飲み込まれてしまうような事はないのか…
あらゆる可能性を考えようとするが、
やはり行き詰る。
そして、極自然に願った。
「アルテル!!」
願いを自覚した時には、もう目の前にいる、
白い二足歩行のうさぎに似た存在。
「彩伽、お久しぶりです。
あれ、ですか?」
早速、無機生物に近付く。
「そう、それよ。
その銀色にうごめく、それ。」




