発見 5
早送りのように時間が経過する世界の中へマロンが入ると、
マロンも適応して年をとる事になるはずなのだが、
マロンは決まった年齢で固定されているようだった。
その為、世界の中で特定の人間と長く関わる事はしない。
しかし、戦争に巻き込まれたりして物理的な損傷を受けると、
一度姿を消し、その後しばらくして此処へ現れる。
厳密に言えば、それは死と異なるものだろう。
灼熱の炎に焼かれても、消える事はないし、
水の中に居続けることも出来る。
正直なところ、明確な基準はわからない。
爆発が起きても、爆風だけならば消えないが、
破片が当たると消える。
そういった具合だ。
「マロン、新しい世界へは行った?」
戦争の話題はどうしても暗くなる。
早送りのように過ぎて行く人たちの人生は、
あまりにあっけない。
それでも、戦争でなくなる人がいるのは、
とても辛い現実だった。
「…うん。208番目の世界が、大分形になってきたから、
これを持ってきた。」
恐らく土に当たるであろうそれは、
先ほどの木片とは別に、既に持ってきていたようだ。
「光ってるわね。」
触れる事なくサンプル用の入れ物へ移し、
中を覗き込む。
「うん。掘り起こしても変わらず光っていたんだ。」
世界の器を引き寄せ、鏡に映し出すと、
大地が全面的に光っている。
白くも見えるが、
恐らくは常に薄紅の強い光を放ち、
多少の強弱を繰り返している。
「何かしら?」
此処へは、生物を運ぶ事が出来ない。
例えば木片は此処へ運んだ瞬間に枯れ木となるし、
その他、生物を含有している場合、
全て此処にきた途端に息絶える。
それも死とは異なる現象で、
中身がなくなり器になるという風に表現した方が、
適しているように思う。
つまり、この光の原因は生物ではないのだ。
この場所に、物質しか存在できないと判断した時。
それは、私とマロンが生物でない事を確信した瞬間でもあった。




