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発見 1
「マロン」
エサを用意して呼びかける。
此処へ来てどのくらいの時間が経ったのかを、
地球時間で正確に表す事は出来ない。
けれど、もう大分時間は経ったに違いない。
最初のうちはわからなかった事も、
マロンが現れ、行動を観察していたら、
大分わかるようになった。
例えば、マロンのエサの時間。
そして寝る時間。
思い起こせばいつも同じ時間にエサを食べ、寝ていた。
今も変わらないと信じ、
つけ始めた記録を元に考えると、
此処で過ぎた時間は、およそ3~4ヶ月といったところだろう。
「マロン」
マロンはいつでも予想外の所から現れる。
その度、驚かされた。
と、同時に、
この存在が、自分の作り出した幻影に過ぎない事を、
実感していた。
「彩伽!これ、おもちゃにしていい?」
壁や家具をすり抜け、
口にくわえて持ってきたものを床に置くと、
行儀良くお座りをして、
尻尾を振りながら見上げてくる。
「何を見つけてきたの?」
複雑な気持ちを気取られないよう、
精一杯に平静を装おいながら、
床へ視線を落とす。
「これだよ。」
それは、木の枝のようだった。




