決別 1
腕を伸ばし、手を広げた。
そこに透明な壁があるような、
奇妙な違和感を覚える。
『わたしは此処にいる?』
水面に触れた様に目の前に広がる波紋。
世界は歪み、
元から居た場所が水中であったかの如く、
身体が浮力を感じた。
温度は変化なく、
気付けば世界は遠く、
手を伸ばすとピンポン玉位の大きさ。
更に閉じていく世界が、
やがて完全に見えなくなると、
辺りはしばらく暗闇に包まれていた。
落ちているのか、
上がっているのか。
あるいは自分自身の身体は全く動いておらず、
周囲の景色だけが変化し続けているのか。
全く判断がつかないまま、
しばらく呆然としていた。
『ここはどこだろう』
そう思うと、
身体の後ろから小さな泡のようなものが、
沢山通り過ぎていく。
ビー球くらいの大きさのそれらは、
目をこらすと何かが見える。
『もう少し、よく見たい』
すると、直径20cmくらいの水晶玉のような形になったそれらが、
我先にと集まり、その速度に恐怖を覚えた途端全てが止まった。
『この場所は、思うとおりに動いている。』
気付いて、そっと手を伸ばした。
「一番近くにあるやつ、ここにおいで。」
そう告げると、すんなり一つの玉が手に乗った。
中を覗くと、そこには山や川の続く自然風景。
海辺の楽園のような場所。
空中に浮かぶ都市。
様々な景色が広がっていた。
そうして暫く見ていて、
これは世界だと理解した。
空中都市がある以上、
地球上の別の場所でない事は、明らかだ。
しかし、いくら考えても答えは出てこない。
『誰か、教えて!』
頭の中で叫んだ瞬間、
目の前に、
うさぎが二本足で歩けるようになったかのような、
不思議な形の存在が、白く光って目の前に現れた。




