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魔法科学  作者: ひのきのぼう
――第5章――
39/59

39話 マリー式剣術訓練

 私はついこの間、創世の大樹の天辺から世界の本当の広さを知った。

 そしてセレクトはそんな広い世界を言葉で語り、見せてくれた。

 最初はいかにセレクトの言葉とて、見ていないものを語って知ったような振りをしてるだけだと思った。

 しかし、目の当たりにしたらすべてが一致していた。

 青い空の上には黒い宇宙が広がっている……創世の大樹の上では夜なのに日が出ていたのがその証拠だ。

 私の力だけでは絶対に見れなかった、だから感謝をしてもしきれない。

 昔からそうだった、私はセレクトに感謝ばかりしている。

 だからこそ考えてしまうのだ、セレクトが私に感謝してくれている事があるのだろうか……

 そんな不安もある中、セレクトに色々と無茶をさせてしまった。

 スペリアムから帰ってきてセレクトの事情も考えずに何度も苦労をかけてしまい……セレクトが倒れた。

 最初にベルモットから聞かされた時は、悪い冗談か何かかと思ったが、泣き崩れるリザを見れば本当なのだと確信した。

 同時に震えが止まらない、膝に力が入らず立っているのがやっと。

 直ぐにでも走り出したかったが、この時の私はセレクトの居場所を知らず、何とかベルモットに聞こうとしたがしっかりと口が動いてくれない。

 そこで私は気がついてしまう。一度セレクトの名を口にしてしまえばリザと同様に泣き崩れてしまいそうだった事に。

 リザが泣いている中、ナターシャ先輩が”冷静になりなさい”とリザを叩いた。

 それを見てセレクトがいつも冷静でいるのは私達の為なのだと気がついた……

 その後は立ち直るリザを見てから、カトレアとキャリーに店を閉める準備をさせ、ベルモットと共に保健室へとむかい、ナターシャ先輩とリザがてきぱきと介抱し特別な病院を紹介してくれた。


 夜中、寝ているセレクトを見ているのは辛かった。

 医者は過度の疲労と言っていたが、もしこのまま起きなかったらと考える度に涙があふれる。

 私は怖いものが無いと思っていたがセレクトが居なくなる事が……こんなにも怖い。

 何も出来ずにセレクトが死んでしまうのが怖い、セレクトが居ない日常を考えるのが怖い……

 このままセレクトが起きなければきっと私は立ち直れないだろう……

 そんな時にセレクトは起きてくれた。

 泣き疲れたリザの手を見ているセレクトに声をかけ、状況の説明をするまでは泣かなかった。

 この後はセレクトに色々と謝罪をし励まされつつ、手の温もりについても語ってくれた。

 そして次からは私がしっかりとセレクトの支えになると決める。


 だが、そんなそばからあの事件が起きた。

 

 あんなにも怒ったセレクトは見たことがなく、どう止めていいのかも分からず、誤解を招き胸が張り裂ける思いだった。

 そして泣きじゃくるセレクトも見たことがなかった。

 メルヴィナとの戦いで両の手が痛かったが、そんなセレクトを見ている方が痛かった……だからたまらず抱きしめてしまった。

 この時に互いに支え合うとはこんな事で良かったのだと知り、そこには何よりも代え難い物があると感じた……

 その日の夜、不思議な星が降る夜空を私とセレクトとリザ、何時もの三人で一緒に眺めた。

 見つめていたはずの夜空はいつの間にかセレクトの寝顔に変わり。

 少し寒い毛布の中、寝ながらセレクトの温もりを感じ、手を握ってみると次第に体の真から暖かくなった。

 ずっとこうしていたいと私は思った……




――――それから3日が過ぎた朝。

 メルヴィアから一文が届く。

『初等部練習場にて待つ』

 そんなメルヴィナからの申し出に答えたいが、まだ私の手元には剣はない。

 だが、よく考えれば殺傷能力の高い剣での戦闘は危険だ。それにセレクトに知られれば怒られるだけでは済まないかもしれない。

 ならば普段からボイル相手に使っている木刀なら何も問題はないのではないか?

 そう思った私は木刀を片手に練習場に向かい、メルヴィナに挑んだのだ。


「今の私はこれしかないからな」

 木刀を構えてからメルヴィナに言った。

「なら我も同じ木剣にしなくてはな……少々重みが足りないが。こい!」

 助走をを付け私は斜め下から木刀を斬り上げ、メルヴィナの振り下ろす一激が交差した瞬間……愛刀の木刀が粉々に吹き飛び、メルヴィナの持っていた木剣も同じに木っ端微塵に吹き飛んだ。

「…………」

「……うむ、これでは勝負にならんな。興を削がれた……私は帰る。マリーよ次は鉄の剣をもってこい!」

 一人去っていくメルヴィナ。

 そして私は長年連れ添った愛刀を無くした。

 決して悲観的にはなっていない、多少の後悔はあるかもしれないが……私の軽率な行動が招いたことだ。

 それにセレクトが近い内に私に刀を作ってくれると言っていた。

 

 それから次の朝、剣を持てなくて一日だというのに……私は何かを持ちたくてたまらない衝動に駆られていた。

 いつも立て掛けてあった父親の剣と木刀があった場所を気にしてしまう。

 徐々に汗ばむ掌を拭いていたりすると、リザが心配して話しかけてきてくれた。

「マリー、セレクトのところにお願いしに行こっか?」

「な、何をだ?」

「マリーのお父さんに作ってもらった剣も無くなっちゃって寂しんでしょ?行こうよ、剣の事をお願いしに。ね?」

 リザはなんて優しいんだ!

 だが問題なのは今は午前中。

 約束も無しにこの時間に行くと、セレクトは少し不機嫌になる。

 それに私の私情をセレクトに押し付けることに抵抗があった。また無理をさせて倒れたらどうしようと……

 リザはそんな私に大丈夫と言ってくれて、何とか行くことにした。


「セ、セ、セフィラあああぁぁ!!」

 何やらセレクトが叫びながら大木に抱きついている。

 明らかに不審な行動……

「セレクトは何をしている?」

 セレクトに問い詰めながらとある事を思い出す。

 それは気を病んでしまった人は狂人になってしまうとか。

「マ、マリー……とリザか、どうしたの?今日は早いね」

 しかし、振り向いたセレクトはいつもと変わりない。

 良かったと胸を撫で下ろす反面、実は疲れていて隠しているのではないかと思ってしまった。

「セレクトは最近疲れていたからな、今日は休め。また倒れるぞ」

 私はできる限りの心配をしたが、セレクトはそんな事は他所にセフィラを紹介してくれた。

「名前をつけたんだよ。この子がセフィラだ」

 いい名前だと思う。いつしか女神リアム・レアルのように偉大な名前になれる名だと私は本当に思う。

 一通り会話した後、意を決して刀についてセレクトに頼んだ。

 すると丁度作っていたらしく、材料としてセフィラの枝が必要だったようだ。

 私にそのまま部屋に運んで欲しいと頼まれ、大切に運んだ。


 しかし、これが思いのほかかなり重い、力には自慢があったがあれ以上重ければ運べなかっただろう。

 なんとかその枝を部屋に運び込みその理由をセレクトは教えてくれた。

「なるほど。マリーは魔力を吸われたのか」

「そうなのか?」

「まだ枝自身が生きようとしてるんだ。それで担いだマリーの魔力を吸ったんだよ」

 なんとも恐ろしい植物だろう……

 こんな材料を使って刀とやらは本当に出来るのかは分からなかったが。

 素材の説明を分かりやすく教えてくれた。

 しかし、鉄を錬金術で刀の形にした瞬間に説明や心配などはどうでも良くなった。

 なんて美しい刀身なのだろう……

 以前手にした刀は鈍らだと言っていた。

 だが私はあの刀を掴んだ瞬間に全身に走った衝撃は忘れてはいない。

 だから早く持ちたい、触ってみたい、細かい所まで見たい。

 あふれる欲望を私は抑え込んでいると、何やらセレクトが布を取り出し、刀の上で手放す。

 さらりと落ちる布が刀を隔てて真っ二つに分かれる事に驚愕する。

 布が切れたのだと認識する事にズレが生じるほどの衝撃的な出来事だった。

 もはやこれで完成だと思った所に木材を合成するらしい。

 地道で時間のかかる作業に私は生唾を飲みこみ終始見とれていた。


「…………ふぅ、これでとりあえず刀身の完成かな」

「触っていいか!見てもいいか!」

「いいけど気をつけてね。掴んだだけで指取れちゃうから」

 掴んだだけで指が取れる……怖いが、すごい話である。

 どんな匠でもこれ程までに強靭で鋭い刃を作れる人が居るだろうか。

 それはセレクトを除いてどこにもいない。親父なんか足元にも及ばない。

 少し弄っていて指先が刃に触れてしまった。

 痛いという感覚は無いが、徐々に熱くなる。セレクトに言うと取り上げられそうなので黙っておこう……

 血が出てきたが塞いでいると直ぐに治った。


 徐々に刀は完成していく。

 柄もついて見栄えが一段と良くなる。

 かっこいい……これが私の刀になると思うと興奮がまだ覚めない。

 そして鞘が完成し、刀がそこに収まっていく。最後に鳴り響く音が心の奥底で反響する。

 何度も音を聞いていたくて刀を出し入れをしていたら、セレクトに大事な話があると怒られてしまった。

 「いいか、これは切れ味がすごい。今まで触ってきた武器で一番だ。手加減が出来ても絶対に人に向けて使うなよ!」

 セレクトはそう言うがこの刀を持っていたら絶対と言っていいほどに襲ってくる相手がいる。

「だが、攻撃されたらどうする。例えるならメルヴィナとかにだ」

「ああ、拒否してもやってくるようならしょうがない、か……刀を使った実戦訓練と思って相手をしてやれ」

 どうしてもダメな時は相手をしてもいいのか……

 メルヴィナの事である、どんな手を使っても戦闘させようとしてくるだろう。私はその構図を思い浮かべる。

「じゃあ、本題にはいるよ」

「これからが本題なのか?」

「その刀に施した魔法についてだよ」

 魔法と聞いて私に扱えるのか疑問に思ったが、私が思い浮かべる事で力を発揮してくれるようだ。

 重量を増やして威力をあげたり、刀身の間合いが伸びる魔法とやらは特に気になる。

 魔獣相手にも十分対等に渡り合える、そんな光景を思い浮かべると早く練習がしたくてたまらない。

 気がつけば廊下に出ていて後ろからセレクトの声が聞こえた。

「使った感想とか後で教えて、調整とかするから!」

「分かった!」

 私はその言葉を残し、練習場へと向かった。




 

 夏休みなので誰も居ない練習場……忘れていた昼食を食べた。

 それから私は刀身を出して素振りをする。

 しかし、その一振りで天井に傷が出来た。

 魔力を常に流して戦ってきた癖が出てしまったのだろう……凄まじい威力に頭をかるく掻いてみる。

 それを見ているリザも内心はらはらしているのか心配した目で見てくる。

 まだ私には刀身を出しての練習は早い……そういう事なのだろう。

 鞘に収め重量を体感する。次に型の練習をし徐々に慣れてきた頃に……やつは呼んでいないのに来た。

「メルヴィナか、どうした?」

「マリーが剣を手に入れたと聞いてな。我は駆けつけた次第だ」

 何処の情報かは分からないが……多分、監視されていたのかもしれない。

「すまないな。私は練習している最中だ」

「ならば相応の相手が必要であろう?」

「こればかりはまだ無理だ」

 刀を使った戦闘で手加減が出来ない内は戦いたくは無い。

「戯言を申すな、貴様にくれてやった褒美だ!剣を交えよ」

 強情な奴だとは思ったが、ここまで露骨に戦闘を申し込んでくるとは思っていなかった。

 だが、本当に今の私はこの申し出を拒否せざるをえない……

 それはセレクトとの約束もあるが、どうしてもイメージが出来てしまう、手加減が出来ずにメルヴィナの胴と下半身を切断するという場面を。

 その事を一生懸命に説明したが、戯言の一言で済まされてしまう。

 挙句にはその背中の黒い大剣を抜く。

「おい、やめろメルヴィナ!」

「今の我は聞く耳はもたん!その刃でもって応えろ!」

 メルヴィナはまるで狂犬のように素早く襲いかかってくる。

「そんな物が貴様の信頼における剣だというのか!本当に命を預けられるのか!!」

 目の前で振り払う一撃をくらいそうになった私は咄嗟に鞘に収まった刀を前に出し、防ぐ。

 流しきれない衝撃が私を吹き飛ばし、練習場の扉を破壊し、その身は外に投げ出された。


「ふ、そんな細い剣で我の剛剣を受け止められる訳が無かろう」

 私は2回転ほど受身をしながら転がり、衝撃を和らげる。

 自分の傷よりも刀はどうなったのかが気になり見てみるが。

 そこには何事も無かったかのように鞘に収まる刀があった。

「鞘も無傷か、すごい。ならこのままで行くか……クソッ」

 不本意だが仕方がない、刀を鞘に収めたまま相対する事を決める。

 刀と鞘が外れないように服の布をちぎり強く巻く。

 そこにメルヴィナの容赦のない剣撃が襲ってきた。

「やっとやる気になったか!」

「五月蝿い!貴様のせいで約束を破ってしまったではないか!!」

 メルヴィナの攻撃を受け流してみたが、以前とは手応えがまるで違う。

 それは受け流すのでは無く、普通に受けることが出来るのではないかという錯覚にも似た何か。

 確信はまるで無いが、体が勝手に動く。

 そして受け流した次の攻撃を受け止めていた。

「む。受け流さないだと…いいぞ、その調子だ」

 何度も交差する剣を受け止め、魔力を込めたメルヴィナの剣をも受け止める。

 それにはメルヴィナも驚いている様子だったが。

 何よりも実感している私はより驚いた。



 普段から劣勢に立たされる事は無かったメルヴィナだったが、押されるという事を初めて実感する。

 一撃一撃とマリーの攻撃が素早くなり、鋭く急所を狙われるたびにメルヴィナは高揚していく。

 だが、興奮するたびに鮮明に現状を捉え始め、そこでメルヴィナは不思議に思う、マリーの刀と交差するたびに金属の音や衝撃の伝わりに違和感があると。

 確かに最初から変ではあったと思う。魔法のような模様が見えるので、それ自体が既に武器だとばかり勘違いをしていたのだ。

 メルヴィナは刀の根元を凝視する。

 そして布が巻かれている事に気がついた。

「貴様、その剣は鞘に収まっているのか!!」

「当たり前だ!でないとお前を殺してしまいそうだからな!」

 マリーの何気なく言ったその一言が引き金となった。

 メルヴィナは鍔迫り合いから一度距離を離すと。高ぶっていた高揚が一気に何処かへ吹き飛び、その反動で怒りを露わにした。

「ふざけるな!我を弄んでいたのか!?」

「お前が襲いかかってきたんだろ!」

 手加減されたことへの怒りは強く、それは同時にメルヴィナの力に対しての侮辱と変わり、抑え込んでいた魔力を体内で暴走させた。

 赤黒かった髪は紅色に染まり本当の炎のように逆立っていく。

「ははは、はははは!!こんなにも愚弄されたのは初めてだ!!!いいだろう、我への屈辱はその身をもって償え……」

 マリーは刀を掴んでいた手に汗がにじむ。

 メルヴィナの得体の知れない力の暴走を目の当たりにしたマリーは何が起こったのかは分からない、それよりも本能が逃げろと足に伝える命令を必死に抗うので精一杯だった。

「その剣を完膚無きまでにへし折ってくれる!そして我の前にひれ伏せ!」

 その一撃は今までくらっていた物とは比べ物にならない威力で放たれ、何とか受け流したはいいが、地形を変える。

 それが幾度となく繰り返される。

「これでは前と同じではないか。やはり人の子よ。竜化した我には到底抗えぬ定めだ」

「……なんだそれは私は知らないぞ!」

「獣人は獣化出来るように、竜人も竜化という突出した能力をもっておる、もしや知らぬのか……戯けめ」

 そんな物があるのかとマリーは思ったが、ガイアスが一度ピンチになった時に凶暴化した事を思い出した。

 やがてマリーは力で完全に押され、受け流すたびに強くなる力に抗えなくなっていく。

 そして次の一撃を防ごうとした瞬間、今一度大きな貯めを用意したメルヴィナの一撃が振るわれる。

「すまんセレクト!!」

 刹那の中、マリーは謝りながら鞘から刀身を見せ、受け流そうとした瞬間、初めての金属音が響いた。


 攻撃を防いだ次の瞬間には私は吹き飛んでいた。

 良くは見えなかったがその衝撃は、私が使う魔力の爆発に似ていたと思う…

 そのまま地面に叩きつけられ肺の空気が押し出された。

 何回か弾みながら転がり体が止まる。

 うっすらと映る視界の先にはメルヴィナが立っていた。

 そして自分の手にはもう刀が握られていない。

 吹き飛ばされている途中で刀を落としたのか、視界の片隅にある。

 何とか這いずってでも刀の所まで戻ろうと力を振り絞る、すると誰かがメルヴィナと会話をしているのが見え、それはリザではない他の誰かだった。

 次第にメルヴィナの逆立った紅の長髪は元の色に戻り、私を一瞥するなり去っていった。



 マリーを吹き飛ばした後に我は後悔していた。

 憤怒のあまり我を忘れてドラゴンをも致命に追い込む一撃を放ってしまった事に。

 そして後悔している我の前に従者のペトゥナが現れる。

「メルヴィナ様……お戯れが過ぎます……」

「ああ……我も大人気なかった…………!!」

 今一度我の手にある”狂者の宝剣”を見て驚く、そこには信じられないほどの亀裂が入っていた。

 昔から代々伝わる王家の剣、王族内の強者に渡される最強の剣…それが無残にも壊れている。

 ありえないと考えたが、我の想像を遥かに越えるマリーの言動を思い出す。

「……ふっ、我を殺さぬよう……か」

 我は倒れているマリーを眺め、駆け寄るリザイヤ・ルドロ・リリアスの姿も見えた。

 行っても掛けるべき言葉が思いつかない、仕方なくその場を後にする。

「ペトゥナ、これを直せる職人を見つけてきてくれ。頼んだぞ」

「御意……」

 


「マリー……マリー!!」

 気がつけばリザが隣にいて必死に声をかけて来てくれていた。

 少し気を失っていたらしい……

「びっくりしたよマリー……」

 リザは泣きながらも私の傷口を癒してくれる。

「すまなかった……リザ。本当は戦いたくなかったんだが……」

「わかってる……大丈夫」

「……クソ……私は負けたのだな」

 圧倒的な力に抗えぬ敗北に私は悔しかった。

 そしてリザの回復で段々と痛みが無くなり、体力も立ち上がるぐらいには戻る。

「何処行くの?」

「セレクトの場所だ……リザは先に帰っていてくれ」

 私はそのままトボトボと歩き刀を拾い、セレクトの寮に向かった。

 リザに帰るように言ったのはセレクトの部屋に着くまでは涙を誰にも見せたくは無かったからだ……


 涙の跡を拭き……

 私はセレクトとの約束を破ってしまった事を謝りに、部屋へと訪れたのだが。

 そんな事を既にセレクトは予期していたのか、その事については問われなかった。

 むしろとぼけた振りをしながら、私を元気づけてくれたのがとても嬉しかった。

 しかし、獣化が出来るガイアスのことを黙っていたのはいただけない……

 だがセレクトは他にも私の為にと防具も作ってくれていて、負けて悔しくなっていた事など忘れてしまった。

 セレクト手作りの防具はとても軽く、精密に作られていた。

 そんな鎧の調整の合間に夕飯を食べる。

 その時に私は意を決してメルヴィナに再戦してもいいかと聞いたら、出来る所まで頑張りなとセレクトが言ってくれた。

 夕食の後も何度も鎧の調整を行なっていると夜も遅くなり、リザが心配する時間になる。

「じゃあ、とりあえずはまた姫様とやりあうんだね」

「ああ、次こそは負けない!」

「頑張れとしか言いようがないけど、終わったらまた調整するから」

「助かる……こんなに遅くなるとは思わなかった。リザが心配するから帰るぞ」

 お休みと互に言い私はリザの待つ寮の部屋へと戻った。




――――次の日の朝

 私は昨夜セレクトに作ってもらった鎧を着て、誰も居ない朝一番の練習場にいた。

 そして昼手前まで汗を振り絞り、鎧を着た状態で刀を振るう。

 やはり夏休みだからだろう、誰ひとりとして来なかった。

 蒸し暑くなり始めた昼頃。

 その暑さを感じて、そういえば私は夏休みにリリアに帰ると言っていた事を思い出す。

 だが具体的な事は分からず午後にでもセレクトに聞きに行こうと思った矢先。

 また、あいつが現れた。

「いてて、やめてくれよ姉御ぉ」

「ふん、我がいない間にどれだけ強くなったか見定めてやる……お、マリーではないか!」

 まるで昨日の事など気にしていないと思わせるメルヴィナが、ボイルを連れて練習場に入ってきた。

「また来たのか、メルヴィナ」

「マリーよ昨日はすまなかったな。お前が手加減をしてくれなかったら我は真っ二つだったぞ」

「姉御が真っ二つ!?どう言う事だマリーよぉ!」

 ボイルに一々説明するのはかなりめんどくさいから無視をしておこう……

 それはメルヴィナも同じだったらしく無視する。

 しかし、無視できない物もあるらしく私の格好を見るなり。

「なかなか面白いものを着ておるな。見た所魔法の防具のようだが…」

「そうだ、私の特注だ」

「では、少し実戦的な練習が必要なのではないか?」

 昨日の今日だが、既にセレクトからはメルヴィナ相手になら刀を使っていいという御布令がある。

 気兼ねなく鞘から抜かせてもらおう!

「……ほう、今日は最初から全力でいいのだな?」

「来い!」

 次の瞬間メルヴィナの髪が逆立ち紅色に染まる。

 一瞬で竜化したメルヴィナは昨日の様に怒りはしていない。

 むしろ満面の笑みで言う。

「かかってこい!」

 私はゾクゾクしながらも突撃する。

 剣と刀がぶつかり合い生まれた衝撃で、練習場が悲鳴を上げる。

「おい!姉御にマリー!!外でやっ」

 何かボイルの声が聞こえたが途中で衝撃の中に消えた。

 私は目の前の怪物相手に幾度となく持てる技を使うが、昨日の様な勝利への確信がつかめない。

 明らかにまた、格段にメルヴィナが強くなっている。

 しかし理由がわからないまま私の大事な鎧は削がれ、ボロボロになっていく……

 そして私は…………また負けた。

ふいー 急に入れた話だから穴がありそうで怖い。

なるべくまとめられるように頑張ってみましたが。

何だか今回は指摘が多そうです……

誤字脱字もにもめげずに修正するのでバンバンお願いします!

にしてもこの話…疲れたな(o´Д`)=з

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