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魔法科学  作者: ひのきのぼう
――第2章――
14/59

14話 適性審査

無事に魔法学園にこれて、初日にして運良くリザにも会えた。言う事なしと言ったところだ。



僕はまだ朝日が昇る前に目が覚めてしまった…ベッドの用意を忘れて硬い床で寝た為だ。

体の節々が痛い。魔法を使い辺りを照らす…自分以外誰もいない部屋。二部屋隣にブライスさんが居るがこんな時間には起きていない…

この寮はブライスさんと僕だけの二人しか居ない…


(気味悪いな…)


呟くように思考を働かせた後、見えない寝癖を直しながら外に出る…

向かう先は学校の廃品置き場…錬金で使えそうな物を使ってベッドや必要な物を作ろうと思ったからだ。


(何でもいいか…持って行こう…)


壊れた椅子、ボロボロのカーテン、布を手当たりしだい運ぶ。

何回か往復していると、太陽が顔を出した。

有る程度、素材がそろったところで、錬金をして…部屋を飾る。

壊れた椅子を直し、ベッドや机に変える。ボロボロのカーテンや布でベッドに使う布団や白いカーテンを作る。あまった素材で床と壁も補修した。

作業が終わった頃にブライスさんが起こしに来てくれた。後でベットでも作ってあげよう…そう思う。


移動して学園内の食堂に行くとマリーとリザが既に居た。他にも昨日は見なかった学生がちらほら居る。

今は春休み期間で授業は休みらしい。リザも今日は私服だ。


「おはよう」

「おはよう、良く眠れた?」


部屋の惨状を報告した…


「え、何それ…酷い。そしたら私の部屋に来ればよかったのに。二人用の部屋なんだけど、私一人だから…」

「何?なら私が行こう、リザと同じ部屋の方が私も気楽だ」

「ありがとう、気持ちだけ受け取っておくよ…それにもう改善してきたから大丈夫」


冗談だよ…な?微妙な会話を続けた後…食事を終え…マリーと階級審査の教室に向かう。途中までリザが案内してくれた。

教室の椅子に座ると大学を思い出す…教卓が前にあり、弧を描くように作られた長い机と椅子。既に待機している人がちらほら居る


(一緒だな…)


適当な前の方の席に座りマリーと待つ…教室で待機していると色々な人が入ってきた…


「おい、あれを見てみろ…あの人だ」

「行儀が悪いよ………あ」


教室に入って来たのは背中に翼を生やした亜人…有翼人セレスティア

有翼人セレスティアはスペリアム教国に居る亜人。綺麗な翼を持ち、多くの者が争いを拒み、とてもおおらかな性格の持ち主。まぁ個人差は有るだろう…教国を導く現教皇も有翼人だ。


他にも数人、有翼人が入ってきた…どれも綺麗な羽だ。

マリーが見とれている、僕はもまじまじと見ていたいが常識的に考えると色々と失礼なのでやらない。そうしているとある人物から声をかけられた…ブライスさんだ。


「隣をいいかい?」

「あ、どうぞ」


マリーとブライスさんに挟まれる形になる。


「誰だ?」

「話して無かったね…船の中で知り合ったブライスさんだ」

「ほう…」

「で、そちらの娘さんは?」

「私はマリー・アトロットだ」

「僕はブライス・チェリオだ。よろしく」


挨拶をして握手を交わす。


「いや、知り合いが居ないし…小父さんだしで寂しかったんだ…」

「皆若いですもんね…でもほら…ちらほら居ますよ?」

「うん…さっき話しかけたんだけどね…無視されちゃったよ…」

「はは…それはお気の毒に…」


会話を続けていると昨日案内をしてくれた若い男の魔術師が入ってきた。


「皆さん、お静かにお願いします…ではコレより始める階級審査にあたっての説明をしましす」


階級審査の内容は簡単なものだ…魔法と特殊技能を見て実力に見合った階級に特進させてくれる。ただ年齢以上の階級にはなれない…もしかしたらリザと同じクラスになれる可能性もある。と、言う事だ。

僕の特殊技能は錬金術にでもしておこう…


「では呼ばれた人達は来て下さい、その他の人はこの部屋で待機していてください…ではまず………」



僕達は呼ばれるまで互いの魔法を話しあっていた。


「やっぱり、印象に残りやすい魔法の方がいいですかな?」

「物によるんじゃないですか…たとえば簡単なものでも、すばやく的確に組み合わせて発動とかでも…」

「剣術は使えないか…」

「それは特殊技能で使えるはず」


「では、次の方…ブライス・ロドルド…マリー・アトロット…フレイア・ゼノーク…ブライス・チェリオ…」


マリー達が呼ばれた、僕はまだだ。


「じゃー、行って来る。食堂で待ってればいいか?」

「了解、がんばってきてね」


ブライスさんが気合を入れて歩き出す。後ろにマリーが追随する形で教室を出て行った。上手くやってくれることを祈る…

僕が呼ばれたのは15分後だった…



「………では、次。セレクト・ヴェント君。中へ」

「はい…」


一緒に呼ばれた人とは別に一人で教室に入る。


「よろしくお願いします」


中に入ると5人ほどの審査員が居た。中央に居た初老の審査員が質問をしてくる。


「えーと、セレクト君はさっきのマリー・アトロットさんと出身地が一緒だが…知り合いなのかな?」

「はい…友人です」(あいつ何かやらかしたか…)

「なら、期待できるかな」

「は、はぁ」(どういうことだ?)

「では、今、君が出来る事を見せてくれるかな?」


出来る事…と、言われたがどうするべきか分からず、相当な手加減をして魔法を構築する。


手の平に魔法陣を映し出す。内容は水…次に水を電気で分解。水素と酸素に分離させる。すぐさまもう一度複合させる。軽く爆発音が響くが魔法で調整する事で抑える…そして燃えながら水に戻す…一連の魔法はどれも単純だが動作の速さと精密さは異常だ。

久しぶりの高速詠唱に舌を噛みそうになった。


「………」

「…どうですか?」

「…ああ」


審査員が口をあけてポカンとしている…僕はまたやりすぎてしまったのだろうか…

中央の初老の審査員が聞いてくる。


「凄いね、高速詠唱だけでなく、正確にあれだけの数の魔法を…どれだけの練習をつんだのかな…?」

「毎日のように研究してるんで…自然と…」

「そ…そうか。じゃーこんな物で良いよね?」


周りの審査員に聞くが無言で頷くばかり…僕は部屋を後にした。次は特殊技能だ。

特殊技能審査は外で行なうらしい。


こちらも同様に5人ほど審査員が居た。隅には壊れた木剣と輪切りに切れた丸太が有る…たぶんマリーがやったのだろう…


「よろしくお願いします」


中央の座っている若い剣士風情の男が質問してくる。


「君は何が出来るのかな?」

「錬金術を少々…」

「見せてもらっても良いかな?」

「はい」


今度はやりすぎずに…砂の中に含まれる砂鉄を取り出し…鈍らのナイフを作り出す。


「こんな物でいかがでしょう」


出来たものを審査員に渡す。ナイフを回し見て評価を付け始める。


「うん、ありがとう。もういいよ」

「はい、失礼しました!」


直ぐにその場を離れる…今度は上手く出来たはずだ!

寄り道はせず、食堂に向い到着した。ちらほらと学生が食事している中で、暇そうにしているマリーを発見。


「お待たせ」

「やっと来たな」

「あ、居た!」


時間を見計らってか、リザが来た。


「リザ。丁度終わったところだ」

「うん、今日はどうする?」

「そうだ、リザ。校外を案内して欲しいな」


「じゃーまずは」と、考えるポーズをした後、歩き出す。

僕達はそれに着いて行く。


学校の門の手前まで来た所で、


「やぁ、ミス・リザイア。こんな所で会うなんて奇遇だね」

「でガイアスが転んだ拍子に…」

「フェリアちゃんも大変そうだね…ふふ」

「………」


金髪ロングの男が話しかけてきた。キザったらしく門に背をかけて片目でこちらを見ている…

マリーとリザが先導を歩き僕が後ろを着いて行く形だが。リザが無視をしているので僕もあえて突っ込まない…


「でさぁ…」

「ミス・リザイア!」


門を出たところでリザの名前を叫ばれたので、リザは無視仕切れなかった。笑顔での対応に違和感を覚える。


「………何ですか、リロイさん?」

「リロイなんてよしてくれ、ハーベスと呼んでくれても構わないんだから」

「で、リロイさんは何か御用で?」

「だから…まぁいい。これから親交を深めれば解決出来るだろうからね。これから僕の部屋でお茶でもどうだい?」

「ご遠慮させていただきます」


笑顔での対応に狂気を感じる…マリーも何時ものリザと違うので少し困惑している。

リザが歩き出そうとする。


「ちょっと待ってくれ。僕を差し置いてそんな見ず知らずの者と、何所に行こうって言うんだい?」

「あなたには関係ありません。それにマリーとセレクトは私の大事なお友達です」


リザの表情が変わり…ウザそうだ。

改めてキザな男は僕達に興味がわいたのか、まじまじと見てくる。


「ふーん………ん、平民じゃないか…リザ。君ははもっと高貴な存在なんだ、こんな連中と一緒に居るのはやめたほうがいい。だから…」

「それ以上言いますと、いくら私でも怒りますよ?」


リザさん、冷静な顔が凄く怖いです…

キザ男もそんなリザを見て汗をたらす。


「その、何だ。君はもっと周りとの関係を持った方が良い。だから結婚とまでは言わないが、僕と付き合わないか?」


よくもまぁこのタイミングでそんな言葉が出せるもんだなぁ…と、思いながら傍観をしていると。リザが一瞬だけ僕を見た気がした…


「何でこんな時に…そんな事が言えるのか分かりません………もう付き纏わないでください…気持ち悪いです」

「き…気持ち…わる………」


相当ショックだったらしい、両膝を砕かれたように地面に着く…対してリザは泣き出しそうな顔。

マリーがこの場から離れるように僕に合図を送ってきた。


マリーはリザの手を引きながらその場を離れる。僕も気持ち悪い男を横目に歩き出す。

気持ち悪い男が見えなくなってから、やっとリザが落ち着いてくれた。


「さっきの男は何なんだ。人をこんな呼ばわりして、一番腹立たしいのはリザを泣かせた事だ!」

「ごめん、二人とも。私もあんな人だとは思わなかった…前に傷の手当をしてあげてから会う度に話しかけてきてて………」

「僕達は何言われても大丈夫、それよりリザは大丈夫?」

「うん、平気だよ…」

「あ、そうだ」


忘れていた、リザにプレゼントが有ったんだ…と、僕はポケットに入れておいた物を取り出しリザに渡す。


「え、いいの?」

「僕とマリーからのプレゼント、受け取ってもらえる?」

「もちろん、絶対に大切にする!」


リザの顔に笑顔が戻る。今から町を案内してもらう予定だ。

2時間ほど町並みを見て回る、気になる店がちらほら。一番利用しそうな店は魔法道具の専門店。僕の開発した札やら何やらが置いてある、見た事のない物もあり調べようと思ったが、マリーがお腹が空いたとかで中断する…

昼食はあまり込んでいない適当な店に入り、円卓につきそこでマリーが…


「この、特製魔法料理ってなんだ…よし、コレにしよう」


マリーは僕の作る料理で多少はグルメ好きになっている気がする…僕とリザは適当な肉料理にした。

料理が来るまでマリーとリザがおしゃべりをしていた、僕は女性特有の会話に着いていけづに他の客の料理ばかりを見ていた…少し待っているとマリーの料理が運ばれてきた。


「こ…これは…」


何処かで見たようなメニュー…僕が作ったパンとスープと良く似ている…スープは多少彩られていたが、どう見ても簡易魔法保存食のパンとスープ

羨ましげに周りを見る。僕達の乗った料理が運ばれてきた、肉の焼けた匂いがする…


「くっ…」

「そんなぎらついた目で見るな…しかたない少し分けてやるから…」


こいつの食に対する冒険に少しは共感出来るので分けてやる事にする。


「それだったら、私があげるよ。こんなに食べれないし」

「ああ、ありがとう」







昼食を済ませ、店で午後から行く場所を教えてもらい、見て回る事になる。




「ここが魔法学園で最も大きい魔具屋さんになるの。生活で必要な物から、まるで見た事無いようなものまで…魔晶石も多少値段が高いけど売ってるのよ」


リリアの商館の2倍は大きい商館の前にやってきた。中は商店街のようにいくつかの店が共同で使っている。まるでショッピングモールだ。

マリーとリザは飾り物の魔具を見ている、僕は多少離れて魔具を見て回る。

使えそうな魔具は見当たらない…探していると魔具で作られた武器屋の前に来た。


「…なるほど、武器に魔力を流し込んで発動させるのもあるのか………だいぶ不安定な作りだな」


短剣を手に取り眺めていると、


「良さそうな短剣だな」

「これは良い物なのか?」

「私は鍛冶屋の娘だぞ」


そう言いながら僕の手から短剣を取り、見回す。手馴れた様に見ている姿が職人だ。


「ほら、ここを見てみろ…ここの角度から見たときの艶美な刀身…」


生前に何度か家宝の刀を見た事があった。これは、それにも似た洗礼された武器特有の怪しい輝きを持っている…気がする。

それにしてもマリーは何だか嬉しそうだ…リザは後ろで良く分からないと言った顔をしている。

研究の一環で購入しようか悩んだが、金貨2枚もする品物、これからの出費を考えるとあまり贅沢は出来ないので今はあきらめる。


この商館の奥に行くと別の建物と繋がっていた。それはこの商館を縦に貫くようにして建てられている。リザがそれについて説明してくれる。


「ここから先が魔法学園最大…いや世界一の図書館”グランモアの書庫”」

「これが図書館…」

「本には興味は無いが中はどうなってるんだ?」


門は開いている…僕が何時の間にか先導して進んでいた。この奥に王都を越える図書が保管されている…そう思うと居てもたっても居られない。


中に入ると受付のカウンターがあり、受付譲が居た。

リザが話しかける。


「では、こちらに魔力をそそいでください…」


王都で試験の前に使っていた装置、これに登録されている魔力で個人を認識するようだ。

僕とマリーは初めてなので魔力以外の登録用紙に記入し、やっと中に入れた。



「王都の図書館も圧倒されたけど…ここはそれを上回るな」


本棚で彩られた通路を抜けると中央、螺旋状に作られた大きな階段があり、全体を貫く一本の柱のようだ。

上から下まで続いていて、地下にも広がっている。


「全部見て回るにはどれくらい時間が掛かるかな…」

「人の人生3回分ぐらいは必要とか聞いたよ」

「私は何だか目眩がしてきた…」


僕は少し俯いて考えた後リザに聞く。


「そうだ、学校が始まるまで後何日だっけ?」

「セレクトとマリーの入学式が始まるのは1週間後だよ」


再度、俯いて考える…そして、


「…今日はここから別行動を取らせてもらうね」

「え…」

「む、明日からでもいいじゃないか?」

「僕がここに来た理由は魔法をより理解する事だからさ、もちろんリザに会いに来るのも目的の一つだったけど、大事な事は忘れちゃいけない。僕はこの図書館に在る魔法書を解読する為に来たんだ。それに、マリーも強くなって皆を守る力が欲しくて来たんだろ?」

「それもそうだが…」

「………」


リザが悲しそうな顔をしていたが、僕は魔道書を前に研究をしたくて我慢の限界…1年マリーの為に我慢したんだ、コレぐらいの我侭は許してもらおう…

それから少しリザに図書館を説明してもらい、別れる。

僕は一人図書館の中で黙々と魔道書を調べ始めた。

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