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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

可愛いあの子は男前

***BL*** 高校で友達になった一ノ瀬くんは、ベリーショートの女の子みたいに可愛かった。でも、本人はそんな顔が嫌いで、、、。ハッピーエンドです。

 


めちゃくちゃ可愛いのに、かっこ良い。



**********



 たまにいるよね、ベリーショートの女の子。

 一ノ瀬くんの見た目は、まさにソレ!

 但し、中身は男の子なんだ。しかも、性格が男前。

 裏表が無い。正義感が強くて、頼り甲斐がある。物事をはっきり言うし、嫌な事はイヤと言う。



 僕とは正反対なんだ、、、。



**********



 一ノ瀬くんが

「俺、自分の顔嫌い」

と言った時、こんなに綺麗な顔なのに、嫌いなんて贅沢だな、、、と、思った。

「この顔だからみんな近付いて来るんだ、って思うと気持ち悪い」

「そんな、、、」

「背も低いから女と間違えられるし、俺は男だっつーの」



なんかイヤな事でもあったのかな、、、。



 それを聞いてから、一ノ瀬くんの事、可愛いって思ったらいけないんだと考える様になった。



 でも、可愛いものは可愛い。



**********



 三嶋優斗は、背が高かった。いつも俺を見下ろしている。優しい顔で、ふにゃふにゃしていて、怒る所が想像出来なかった。

 


 入学早々、俺はこの顔の所為で周りをザワザワとさせた。別に俺が何かした訳じゃないのに、こっちを見ながらヒソヒソ話しをされるとイライラする。

 いかにもと言う感じで話し掛けてくるヤツも嫌いだ。


 そんな中、優斗だけは何だかのんびりしたヤツで、我関せずって感じだった。

 


*****



 たまたま同じ電車だった時、他の高校の生徒が俺に「話し掛けよう」だの、「恥ずかしい」だの言っているのが聞こえて来て、うんざりしていた。


 高校生活に、まだ慣れない俺はイライラした。

 目の端にスマホが見えて、アイツ等が勝手に写真を撮ろうとしたのがわかって、文句を言おうと振り向いた時、目の前に三嶋が立っていた。

「おはよう」

「お、、、おはよう、、、」

自然にアイツ等と俺の間に立ち、写真を撮られるのを防いでくれた。

「今日、委員会決める日だね。何かやる?」

フツーに話し掛ける。

「えっと、、、」

「一ノ瀬くんだよね?」

「うん」

「良かった、間違えてたらどうしようかと思ったから」

「三嶋は何やるの?」

「うーん、、、出来ればやりたく無いな、、、」

「ははっ!俺も!部活も委員会もやりたく無いよ」

「一ノ瀬くんは、中学で部活やってた?」

「陸上、、、」

「僕は帰宅部」

優斗はそれ以上、部活の事は聞いて来なかった。


 俺は部活に良い思い出が無かった。

 陸上の試合用のユニフォームで、会場をフラフラしていると写真を撮られた。一回や二回じゃ無い。一緒に写真を撮りたいと言われたり、隠れて撮られたり。

 ビデオの時も有った。


 陸上は嫌いじゃなかったけど、ユニフォームが嫌いになった。



**********



 委員会を決める時、風紀委員だけがなかなか決まらなかった。俺もやりたくなかったけど、何時迄もグダグダやっていても仕方無いし、結局誰かがやるんだからと立候補した。

「はいっ!」

俺が手を上げると、女子が少しザワついた。内心舌打ちした。

 本当はやりたく無いクセに、俺と一緒ならやりたいと、手を上げようか悩んでるヤツがいる雰囲気だった。

 そんなヤツと一緒にやるのはイヤだ。

「俺と三嶋でやります」

「えっ?!」

窓際から素っ頓狂な声がした。

「三嶋、一緒にやろうぜ」

顔を見ながら言うと

「良いよ」

と返事をしてくれた。



 放課後、初めての委員会がある。二人で廊下を歩きながら

「三嶋、悪かったな。無理矢理誘って」

と言うと

「大丈夫だよ。一ノ瀬くんと一緒なら心強いし。誰かがやらないといけなかったんだから」

と笑ってくれた。

「すごい声で反応したからさ」

「外見てたら、急に呼ばれてびっくりしちゃった」

照れ笑いをした。

「何見てたの?」

「新幹線」

「え?見えるの?」

「見えるよ。川を渡る時、小さいけどね」

「授業中も見てる?」

「、、、たまに」

恥ずかしそうに笑う顔が可愛かった。



**********



 一ノ瀬くんに風紀委員を一緒にやろうと言われた時、一瞬迷ったけど、彼となら大丈夫な気がした。

 一ノ瀬くんはしっかりしていて、意見もちゃんと言えるし、ハキハキしているから隣にいると安心出来た。

 逆に僕なんかでいいのかな?と思ったけど、三年間で一度は委員会をやらないとって考えていたから、丁度良かった。



 風紀委員の教室に入ると、一ノ瀬くんの顔を見てみんな騒ついた。

「めっちゃ可愛い」

「え?男子?」

「顔小さぁ〜」 

 すぐに一ノ瀬くんの機嫌が悪くなった。

 僕達は、廊下側一番後ろの席に座った。

 壁際に一ノ瀬くんが座る。

 

 前の席の女の子が

「6組の風紀委員?」

と振り向いて聞いて来た。座席が指定されていたから、僕達が6組だってわかっているのに。

 一ノ瀬くんは鞄を片付けるフリをして無視をした。

「うん」

と僕が返事をすると

「私、5組の山城りり、仲良くしてね」

と一ノ瀬くんに言った。

「じゃあ、風紀委員会始めるぞー」

と先生が言い、山城さんは前を向く。

 はぁ、、、。

 一ノ瀬くんの小さなため息が聞こえて来た。



**********



 風紀委員の仕事に、高校の最寄り駅に立って、生徒達が通行の邪魔にならない様に声掛けをする日がある。

 他に、校門での挨拶活動と制服、手荷物チェック、花火大会や文化祭、体育祭での見回りが有って、先生が日程の予定一覧を配布した。

 担当クラスは縦割りだった。


 自己紹介をして、風紀委員長と副委員長、書記、会計を決める。



*****



 委員会が終わって、教室を出ると山城が三嶋を呼び止めた。

「三嶋くん、ちょっと良いかな?」

五組のもう一人の風紀委員は先に帰って行った。

「この日の駅の活動、私と担当変わって貰いたいんだけど、ダメ?」

山城りりは、上目遣いでお願いしていた。

「別に良いよ」

「やった!」

俺はピンと来た。三嶋と交代して俺とやりたいんだ。

「一ノ瀬くん、よろしくね!」

「じゃあ、クラスごとチェンジしようよ。俺と三嶋がこの日に入るから、六組の担当の時にもう一人の風紀委員と入れば良いよ」

「え、、、」

山城は小さく言った。

「後、先生と先輩達にも事情説明して連絡しておいて。縦割りで活動なのに、次の日に違う人が来たら二年と三年がびっくりするから」

「あ、、、。そ、そうだよね。じゃ、じゃあ、やっぱりいいや。私の個人的な用事だし、そっちを調整するよ。ごめんね」

山城はパタパタと小走りで去って行った。



「えっと、、、結局どうなったの?」

三嶋は何が何だかわからない感じだった。

「特に変更無し、予定表通りだよ」

俺が返事をすると

「了解」

と笑った。



 風紀委員の仕事なんて、たいした事ないと思っていたのに、意外と人前に出る日が有ってイヤだなと思った。

 でも、立候補したのは俺だし、三嶋も犠牲にしたんだから仕事はちゃんとやる。



*****



 駅での活動は、一回だけだった。

 春に入学した一年生が、駅でのマナーに慣れるまでの二ヶ月だけだからだ。

 各学年、8クラスある。最初は縦割りの一組が駅に立つ。毎週、月曜日。俺達六組は、もうすぐ梅雨入りしそうな頃に、順番が回って来た。


 朝、いつもより早い時間に、改札横で集合だった。腕章を貰う。

 腕章って、自分で着けるの難しく無い?

 モタモタしてると、三嶋が着けてくれた。俺も三嶋の腕章を着ける。

 俺は、背の高い三嶋の横に一歩下がって立った。通学中の生徒はコチラを見る事も無く、挨拶だけして通り過ぎて行く。


 先生と生徒六人での活動が終わると、学校の始業時間に間に合う様に駅を離れる。

 俺と三嶋は一番後ろを歩いていた。

 学校の校門を入って解散になる。

 三嶋と腕章を外し合い、先生に渡す。

 二年と三年の風紀委員の女子が、俺ににっこり笑って

「お疲れ様」

と言った。

 他の男子や三嶋には、殆ど無視だった。

 俺は思わず大きな声で

「お疲れ様でした!」

とみんなに向かって挨拶をした。三嶋もみんなに挨拶をする。

「お疲れ様でした」

あの二年と三年の女子は、少し気まずい感じになっていた。



**********



 一ノ瀬くんは本当にモテた。女の子だけじゃ無くて、男の子にも告白されていた。

 呼び出される度に面倒臭がる。

 それでもちゃんと時間を取り、きっちり断って来るんだ。



「いい加減勘弁して欲しい、、、」

お昼ご飯を食べながら呟いた。

 僕は微笑むしか無かった。

「どうしたら告白され無くなるかな」

「うーん、彼女作るしか無いんじゃない?」

「それは無理、相手がいない」

「いるフリをしたら?」

「それも難しい、俺、嘘吐くのヘタだから」

「そっか」

僕は、お弁当の肉団子に箸を伸ばす。

「肉団子、美味そう」

「え?食べる?」

「食う!」

嬉しそうに返事をした。

「じゃあ、何かと交換しよう」

僕が言うと

「ピーマン上げる」

「ピーマン、、、」

「嫌い?」

「肉団子とピーマンじゃ、等価交換にならないよ」

一ノ瀬くんが笑う。

「わかった、わかった。ピーマンとハンバーグ上げるから」

と言うと、お弁当の蓋に小さいハンバーグとピーマンを全部載せた。

「ピーマン嫌いなんでしょ」

と言う僕を無視して、僕のお弁当から直接肉団子を奪った。パクッと一口で食べて

「美味い!」

と喜ぶ。その顔が少し幼くて、可愛かった。



**********



 俺は三嶋といると気が楽だった。弁当を食べる時も廊下側の真ん中、目立たない位置で食べる。三嶋の身長のお陰で俺は隠れる様になる。

 他のクラスや上級生が俺を探しに来ても、見つけられない席だ。

「え、、、三嶋、赤点だった?」

恥ずかしそうに

「英語が苦手なんだ、、、」

と言う。

「なら、一緒に勉強しよう。俺、英語得意だから」

俺から何かを誘うなんて今まで無かった。

 他人と一緒にいるのが面倒だったからだ。

 でも、三嶋だけは違った。俺の顔の事は言わないし、俺に特別な感情が無いのがわかった。だから、俺は三嶋といたいと思うんだ。



**********



 一ノ瀬くんが英語の勉強方法を教えてくれた。兎に角、単語を覚えろと言う。スマホのアプリを使い、通学中のバスと電車の中では必ず勉強しろと言われた。

 まぁ、どっちみち一人だし、バスでも電車でも座れるから、言われた様に単語を覚える。


 僕が登校中歩いていると、ポンッと背中を叩かれた。

「お早よっ」

一ノ瀬くんだ。

「おっ!単語やってる?偉いな!」

にかっと笑ってくれた顔にドキッとした。


 可愛いのに、ちょっとカッコ良かった。


 僕はイヤフォンを外して挨拶をする。

「お早よう。一ノ瀬くんが教えてくれたアプリ良いね。いつも聞いてるよ」

「だろ?俺も今朝やって来た」

イヤフォンを無くさない様にしまって、一ノ瀬くんと学校まで歩く。



 後ろから、同じ学年の男子が近付いて来た。

「一ノ瀬くん!」

一ノ瀬くんはその子の顔を見て、「またか」って表情になる。

「今日の昼休み、話したい事があるんだけど」

彼が緊張してるのが分かる。

「わかった、どこに行けば良い?」

「じゃあ、えっと、体育館の入り口前に」

「話し、すぐ終わる?」

「うん!」

「なら、休み時間になったら行くから」

「ごめん、ありがとう」

約束を取り付けると、彼は

「じゃあ、後でね!」

と言って、行ってしまった。


 一ノ瀬くんは本当にモテる、、、。


「昼休み行って来るから、席だけ取っておいて」

「うん、わかった」

僕は、少し淋しいなと思った。



*****



 僕のこの気持ちは、誰にも言えなかった。高校に入ってから、友達は一ノ瀬くんだけだし


「彼が告白される度にモヤモヤする気持ち」


が、何だか分からなかった。


 友達を取られたく無い、、、。


 そんな気持ちだと思う。僕の高校の唯一の友達だし、、、。一ノ瀬くんがいなかったら、僕は独りぼっちだ、、、。

 


*****



 それなら、友達を作れば良い。

 そう思って、教室を見回す。

 夏休み前のこの時期は、もうグループが出来てんだな、、、と実感した。



 一ノ瀬くんが

「お待たせ」

と言って、お弁当箱を取り出す。

 僕は、告白されたのか聞きたかったけど、聞けなかった。

 一ノ瀬くんも聞かれたくないと思う。



 今日で、何回告白されたんだろう。



**********



「三嶋くん」

同じクラスの女子に声を掛けられた。

「三組の近藤さん知ってる?」

「知ってるよ、同じ中学だった」

「私ね、近藤さんと同じ部活なんだ」

「部活?」

「料理部」

「え?近藤さん、料理部なの?」

「うん、中学の時はバスケやってたって」

初めて話しをしたけど、話し易くて楽しかった。


 それから、何と無く菱沼さんとは話しが出来る様になった。

 菱沼さんは、一ノ瀬くんがいない時に声を掛けてくれる。

「三嶋くんは、甘い物好き?」

「好きだよ」

「じゃあ、今度部活でクッキーを作ったら食べてくれる?」

「部活でクッキー作るの?楽しそう!」

「、、、三島くんもやってみる?」

「え?いいの?」

「うん、体験って事にすれば、平気」

「行ってみようかな」

僕は、参加してみようと思った。



*****



 登校中、後ろから菱沼さんが話し掛けて来た。

「お早よう」

と言われて

「お早よう」

と返事をする。

 一緒に歩き、少し話しをしては無言になるを繰り返して学校に着いた。

 下駄箱で、一ノ瀬くんに会う。少し後ろを歩いていたみたいだった。

 そのまま菱沼さんと教室に行く。中に入ると自然と別れて、お互い自分の席に着いた。



*****



 体育で、二人ペアになる時は、当然の様に一ノ瀬くんと組む。だから今日も一ノ瀬くんと二人で柔軟体操をした。

「今朝、菱沼と一緒だったね」

「うん、声を掛けられたんだ」

「最近、仲良いね」

「そうだね、今度、部活にお邪魔させて貰うよ」

「部活?」

「料理部。クッキー作る予定」

「三嶋が?」

「うん」

「作れるの?」

「簡単だから教えてくれるって」

「ふうん、、、」

興味無さそうに返事をした。



 一ノ瀬くんが100メートル走を走るのを見て、カッコ良いと思った。スタートのフォームが綺麗で見る見るスピードに乗った。一緒に走っている人が可哀想な位引き離されていた。



**********



 朝、改札を出ると少し前に三嶋がいた。さっき電車の中で菱沼を見掛けたから、急いで三嶋に話し掛ける。

 先に菱沼が話し掛けると、俺は三嶋と一緒に行けなくなるからだ。

「三嶋!」

三嶋は俺に気が付くと笑う。

「一緒に行こう」

二人で並んで歩く。

「今日、放課後勉強しない?」

と誘ってみた。

「ごめん、料理部でクッキー作るの今日なんだ」

「そっ、、、か。残念」

俺は少し淋しかった。

 今まで、自分から何かを誘う事が無かった。断られる事がこんなにショックとは知らなかった。



*****



 昼飯を食いながら

「今日の料理部、何時に終わる?」

と聞くと

「6時かな?」

と言われた。6時か、、、

「待ってても良い?」

三嶋がキョトンとした顔になる。

「え、、、っと、クッキーが食べたいの?」

違う、でも、、、それでも良いか

「三嶋の作るクッキー食べたい」

ふふ、、、と笑われた。

「終わったら、教室に来れば良い?」

「じゃ、教室で勉強して待ってるよ」

「わかった」

俺は放課後が楽しみになった。



**********



 放課後、菱沼さんと料理部に行く。

 女子ばかりの中に入るのは恥ずかしいけど、みんな気さくで優しかった。


 エプロンが無いから、上着を脱ぐ。

「ごめんね、予備のエプロン持って来れば良かったね」

「三嶋くんのエプロン姿見たかったわー!」

「制服で腕捲りして、料理する男子も良い感じだよ?」

俺より背の低い女子が、仲良くチョロチョロ作業をしているのは可愛かった。


 材料を計量して、混ぜる。

 女の子の手って本当に小さいんだな。

 マジマジと眺めてしまう。

 料理部は7人で活動していた。各自同じ分量で、同じクッキーを作る。

 慣れている人は混ぜるのも早く、型抜きも綺麗だった。

 僕はバターを混ぜて柔らかくするだけなのに、ゴムベラが上手く使えずに時間が掛かる。

「料理ってさ、上手くいかなくても、作ってる時間が楽しくて良いよね」

「上手に出来た時は凄く嬉しいけど、集中してる時間も好きだな」

みんなとお喋りしながら、僕の進み具合を確認して、菱沼さんと近藤さんは次の手順を教えてくれる。


 型抜きが出来た人から順に焼いて行く。

 僕は型抜きにも神経を使い、壊れない様に型から外す。綺麗に外れると、生地の艶っとした感じが美味しそうに見えた。

「このままでも美味しそう、、、」

「ね!本当に美味しそう。でも、食べちゃだめだよ?」

 みんなで笑いながら型抜きをした。

 クッキーが焼けて来ると、教室に甘い匂いがしてくる。学校でクッキーを焼くなんて新鮮だった。

 クッキーを焼きながら待っている間に、料理道具の片付けをする。

 洗い物をしながら、菱沼さんが

「どうだった?」

と聞いて来た。

「面白かった。計量するのも、型抜きも楽しかったよ」

「明日、レシピ持って来るね。家でも作れるよ」

「色々ありがとう」

お礼を言う。


 全員の片付けが終わり、ラッピングまですると調理室を片付けて解散になった。

 予定より早く終わり、教室に戻る。



*****



 教室の後ろのドアを静かに開けると、一ノ瀬くんと知らない人がいた。

 しまった、、、一ノ瀬くんが告白されている。


 ドアが開いた事に気付いた二人が振り返る。僕は仕方無く

「お邪魔します」

と言って、鞄を取りに入る。

 本当に気まずくて、頭を下げながら素早く、静かに廊下に出る。

 そっと、音を立てない様にドアを閉めた。


 はぁ、、、。と、ため息をく。


 困ったな、、、。クッキー、どうしよう、、、。

トボトボと廊下を歩く。


 二人で食べようと思ったクッキーだから、僕もまだ食べて無かった。でも、一ノ瀬くんに食べて貰いたい。

 下駄箱まで来ると、僕は靴を履き替えて、ラッピングされたクッキーを、一ノ瀬くんの下駄箱にそっと入れた。


 駅までの道が遠く感じる。一ノ瀬くんは誰とも付き合う気が無いみたいだから、きっとさっきの告白は断ると思う。

 でも、わからないな、、、。告白していた彼はすごくカッコ良かったし、、、。



 僕は、一ノ瀬くんが好きなんだって気が付いた。



 ううん、違う。大分前から好きだった。きっと、初めて会った時からだ。

 一ノ瀬くんの可愛い顔に惹かれていた。彼に告白した人達と、何ら変わらない。僕も一ノ瀬くんの顔が好きなんだ。

 でも、一ノ瀬くんは自分の顔が嫌いと言った。

 顔が可愛いからと言って告白されるのを嫌がっていた。

 

 きっと、僕の気持ちを知ったら、一ノ瀬くんは僕から離れて行くと思う。

 


 そんなの辛いな、、、。



**********



 三嶋を待っていたら、知らない男が教室に入って来た。

「一ノ瀬くん、誰か待ってるの?」

誰だコイツ?

「友達を、、、」

俺が座っている椅子の横に立つと

「一ノ瀬くん、まだフリーなんでしょ?」

と聞いて来る。

「はい」

返事をして、相手の顔を見る。初めて見る顔だ。

「俺と付き合おうよ」

またか、、、。

 断ろうとした、その時、後ろのドアがそっと開いた。

 三嶋が俺達に気が付いて、静かに入って来る。

 6時半完全下校だから、三嶋も鞄を取ると教室を出て行った。

 一緒に帰る予定だったのに、何処かで待っていてくれれば良いけど、、、。

「俺、好きなヤツがいるから、、、」

早く三嶋を追い掛けたくて言った。

「へぇ、誰?」

「それはお前には関係ないだろ?」

「まぁ、そうだね」

「もう、話しは済んだよな」

俺は鞄を取り、三嶋を追い掛ける。

「好きな人って、今のデカい子?」

何気無い一言に、俺は少し戸惑った。



*****



 早く三嶋を追い掛けたくて言った言葉だったのに、コイツに言われて考える。


「兎に角、お前の事知らないし、付き合う気は無いから」

と言って、三嶋を追い掛ける。



 三嶋を追い掛けながら、三嶋の事が好きなのか考えた。

 好きと言えば好きだ。

 一緒にいるのは楽しいし、三嶋が他のヤツと仲良くするのはイヤだ。

 でも、それは友達としてだと思う、、、。


 

 下駄箱に入っているクッキーを見つけて、三嶋が俺を置いて帰ったとわかった。

 一緒に帰る約束をしたのに、何で先に帰るんだよ、、、。



 まだ、そんなに遠くに行って無いと思う。俺は走って追い掛ける事にした。

 クッキーを鞄にしまい、ふと顔を見上げるとバスが来るのが見えた。

 急いで交通系電子マネーを出し、バス停に並ぶ。到着したバスに乗り込み、三嶋を探す。

 三つ先のバス停の手前を歩いている三嶋を見つけた。降車を知らせるボタンを押し、バスを降りた。

「三嶋」

「え?え?」

バスは扉を閉めると走り出した。

「え?」

三嶋は状況を理解出来ないのか、「え?」しか言わない。

「一緒に帰ろうって言ったのに」

「、、、ごめん」

俺は、鞄からクッキーを取り出した。

「三嶋はクッキー食べたの?」

「一緒に食べようと思ってたから、まだ」

「それなのに、先に帰るんだ」

「だって、一ノ瀬くん、告白されてたから」



 三嶋らしい気がした。

「待っててくれれば良かったのに」

「、、、待たれるのイヤかなって、、、」

小さな公園を見つけた。

「こっち、来て」

そう言って腕を引っ張る。

「一緒にクッキー食べよう」

二人で並んで歩くと、三嶋が本当に背が高いのがわかる。

「はい」

クッキーを三嶋に渡す。

「三嶋が作ったんだから、三嶋が開けて」

ブランコの柵に座りながら言う。

「うん」

三嶋は丁寧にラッピングを開く。

「どうぞ」

中を覗くとちゃんとクッキーだった。

 一枚取り出すと、三嶋がクッキーを取り出すのを待つ。

 三嶋が一口食べるのを確認してから、俺も一口食べる。

美味うま、、、」

三嶋が俺の顔を見て、安心した様に

「良かった」

と微笑んだ。



**********



 僕は、自分の気持ちに気が付いてから、一ノ瀬くんの側に行けなくなった。

 僕も気持ち悪い存在なんだ。

 一ノ瀬くんが、自分の顔が嫌いだと言ったあの日、一ノ瀬くんの顔が好きで近寄って来る人の事を「気持ち悪い」と言っていた。

 だから、僕も気持ち悪い存在だと思う。

 

 そう考えた日から、一ノ瀬くんの視界に入るのが怖くなってしまった。



**********



 三嶋が俺を避ける様になった。理由はわからない。昼飯は今も一緒に食べるけど、会話が少し減った気がする。

 それと同時に、三嶋の側に菱沼がいる様になった。休み時間の度に、菱沼が三嶋の側に行く。


 どうして三嶋が俺から離れたのか分からなかった。特に何かあったとは思えない。



*****



 学期末最後の委員会があった、今回は8月にある花火大会の警備の話しだった。

 警備と言っても、近くである花火大会を見回りするだけで、高校名の入った腕章を着けて、30分歩くだけ。

 先生達とPTAの役員も参加しているので、何かあったら先生達に報告する、と言う簡単なものだった。

 当日は観客ですごく混むから、特に集合は無く、時間も強制では無かった。

「三嶋、どこで待ち合わせる?」

俺が相談すると、少し上の空だった。

「大丈夫?」

「う、うん、、、」



**********



 一ノ瀬くんと花火大会に行けるのは正直嬉しかった。でも、彼が僕を気持ち悪いと思っているんじゃないかと思うと気分が落ち込んだ。



 休み時間、菱沼さんが

「三嶋くん、花火大会行く?」

と聞いて来た。

「あ、風紀委員の見回りの仕事があって」

「え、風紀委員って大変なんだね」

「でも、30分腕章着けて歩くだけだから」

「そうしたら、見回り終わったら、近藤さんと一緒に花火見れるかな?」

「ダメだよ」

一ノ瀬くんだった。

「三嶋は、今年、俺と二人きりで見るから無理。それに、あんなに人が多い所、合流無理だから」

僕は突然の事に、どうして良いかわからなかった。

「ごめん」

菱沼さんに謝った。

「いいよ、いいよ。もし会えたら声掛けるね。風紀委員頑張って」

「ありがとう」

一ノ瀬くんは、そのまま僕の横の椅子を引いて座った。

 菱沼さんがいなくなるのを確認して

「最近、菱沼と仲が良いよね」

と言う。

「付き合ってるの?」

「え?」

「いつも一緒にいるから」

「付き合って無いよ」

「そっか、良かった」

「良かった?」

一ノ瀬くんは一度僕の顔を見てから視線を下げた。

「だって、二人が付き合ってたら、、、話し掛け辛いから」

「、、、」

「花火、二人で見るのイヤかな、、、?」

「一ノ瀬くんは、僕なんかで平気なの?」

「俺は、三嶋と二人で見たい」

そう言われるとやっぱり嬉しかった。



**********



 終業式の翌日から夏期講習があった。五日間出席して、翌日の土曜日が花火大会だった。天気も良くて、中止は無さそう。

 僕達は、花火大会開始の一時間前に待ち合わせをしていた。

「三嶋、ちょっと飲み物買いに行きたいから」

駅下にあるスーパーで買い物をする。

 惣菜コーナーが凄く混んでいて、レジにも長い列が出来ていた。たこ焼きとか、お好み焼き、焼き鳥、ポテトなんかが沢山あった。

 セルフレジが沢山あるから、思った以上にスムーズに水を買い、二人で花火大会会場まで歩く。

 たまに、先生やPTAの役員がチラホラ歩いている。

 僕達も、会場の手前から腕章を着けて歩いた。

「出店、たくさんあるな、、、」

一ノ瀬くんがびっくりしながら言う。

 まだ開始1時間前だから、ぎゅうぎゅう詰めでは無いけど、花火が始まったら大変そうだった。

「一ノ瀬くん!」

山城りりが浴衣の帯に腕章を挟んでいた。

「浴衣、、、アリなの?」

「え?先生に聞いたら良いって言ってたよ?」

もう一人の風紀委員も気にして無い様子だった。

「一緒に見回り行かない?」

と聞かれて

「浴衣じゃ、歩くの遅いだろ?俺達は先に行くよ」

一ノ瀬くんはそう言って、サッサと歩き出した。

「まさか、一番にアイツに会うとは、、、」

ブツブツ言っている。

「大体、浴衣で見回りって何だよ」

ご機嫌ナナメだった。

「でも、浴衣可愛かったよ?」

と言うと

「三嶋は、やっぱり山城みたいな子がタイプなの?。それとも菱沼?」

と聞かれた。

 急に一ノ瀬くんは僕の腕を取り、道を逸れる。

「ちょっと、こっち!」



**********



 山城の浴衣が、媚びている感じがしてイヤだった。それなのに、三嶋は可愛いって言うし、前からは菱沼と友達が浴衣を着て歩いて来た。

 俺は菱沼に会いたく無くて、三嶋の腕を引いて路地裏に入る。

「一ノ瀬くん?」

「ごめん、ちょっと会いたく無いヤツがいて」

「そうなんだ」

ペットボトルの水を飲む。三嶋も蓋を開けてゴクゴクと飲んだ。

「屋台がいっぱいあるね、、、」

三嶋が言う。

「見回り終わったら、屋台で何か食う?」

「そうだね、ちょっと位遊びたいよね」

遠くを見ながら言った。

 花火大会会場はもう少し先の土手だった。

 俺達は土手まで歩き、観覧席の後方、土手の上をのんびり歩く。人が増えて来て、有料の観覧席が埋まると花火大会が始まった。


ドンッ!!!


と言う、もの凄い音が腹に響き、二人でびっくりして耳を塞ぐ。

 お互い同じ反応をして、思わず笑いあった。


 花火を見ながら、土手を行ったり来たりした。同じ腕章をしている人とすれ違う度に

「お疲れ様です」

と頭を下げる。

 予定時間になってから腕章を外し、無くさない様に鞄にしまった。



「もうちょっと、花火見て行く?」

三嶋に聞くと、迷っているみたいだった。

「折角来たんだから、最後まで見よう」

そう言うと、素直に頷いた。 

 観覧席より離れた場所に移動する。ほんの少し花火の音も小さくなる。土手の途中にある、階段に座って見た。


 花火は1時間位で終わった。最後の一発を見終わると人々が帰り始める。

 人が沢山居て、暫く落ち着く迄待った。


 花火が終わった大きな川は、黒くて少し怖かった。



*****



 半分位人が帰った頃、俺達も駅に向かった。屋台も少しずつ片付けが始まっている。

「三嶋、何食べたい?」

「えっと、たこ焼きと焼きそば、、、」

「じゃ、手分けして買おう。三嶋はたこ焼き二人分買って、俺は焼きそば買いに行くから。買ったら、、、そうだな、あそこ、屋根があるから」

俺が指差すと、わかったみたいだった。

「あそこに集合な!」

俺は急いで焼きそば屋に並んだ。


 新しい焼きそばは焼いていなかった。出来上がった焼きそばが、何個か山積みになっていて、それが売れればお終いだった。

「お!可愛いネェちゃんだね!最後だからオマケしてやるよ!」

二つの値段で三つビニール袋に入れてくれた。

 俺は現金でピッタリ払い、にっこり笑って屋台を後にした。


 三嶋がたこ焼きを二つ持って待っている。

「オマケして貰った!」

そう言うと、三嶋も喜んでくれた。



**********


 

 僕は花火を見ながら、こっそり一ノ瀬くんの顔を見た。瞳がキラキラしていて可愛かった。可愛いのに、キリッとしていて凛々しかった。

 顔が小さくて、目がパッチリしている。睫毛も長くて、ベリーショートの髪型が良く似合う。細い首が綺麗だった。

 


 一ノ瀬くんが悪い訳では無い。イヤな思いも沢山したんだろうと思う、、、。でも、一ノ瀬くんはやっぱり可愛いよ、、、。そんな風に思う僕は、一ノ瀬くんから見たら、やっぱり気持ち悪い存在だよね、、、。



**********



 生まれて初めて告白された。

 菱沼さんだった。

 


**********



 ふと気付くと、三嶋と菱沼に距離が出来ていた。

「三嶋?」

三嶋が俺の方を見る。

「何かあった?」

「何かって?」

「いや、わからないけど、、、何と無く」

三嶋はチラリと菱沼に視線を投げた。

「何でも無いよ」

「、、、それならいいけど」



**********



 一ノ瀬くんの鋭さに、びっくりした。

 菱沼さんに告白されて、返事を保留にしていた。

 決して嫌いでは無い。かと言って、付き合いたい程好きでも無い。どうしたら良いかわからなかった。

 一ノ瀬くんに何かあったか聞かれても、菱沼さんが同じ教室にいるから打ち明けられなかった。



*****



 放課後、一ノ瀬くんが一緒に帰ろうと誘ってくれた。

「菱沼と何かあった?」

 駅までバスで4駅、歩くと10分ちょっと。僕達はいつも歩いて通っていた。

 歩道を二人で歩きながら、菱沼さんの事を聞かれた時、周りに誰もいないのを確認して一ノ瀬くんに話した。

「菱沼さんに告白されて、、、。どう返事をしたら良いかわからないんだ」

「菱沼の事、好きなの?」

「嫌いじゃ無い。でも、付き合いたいとは思わない、、、」

「付き合う気が無いなら、はっきりそう言えば良い」

「付き合ってみたら、、、ちゃんと好きになるかも」

グイッと腕を掴まれた。脇道にそれて、あの公園に寄った。

「それって付き合ってみたいって事?」

「、、、」

それすら、僕には分からない。

「一ノ瀬くんはさ、、、どうやっていつも断ってるの?」

「知らないヤツとは付き合えないって言う」

「友達から告白されたら?」

一ノ瀬くんは考える。

「僕から告白されたら?なんて断る?」

「、、、」

返事が無い。僕の質問が、一ノ瀬くんを困らせているんだ。

「、、、なんてね、、、。菱沼さんと、、、付き合ってみようかな、、、」



**********



 三嶋が菱沼と付き合う?

「それはダメだ」

ただそう思う。


 三嶋が俺を見つめる。

 コイツの瞳に俺だけが映れば良いのに。


 アイツの事で悩んでいる三嶋にイライラする。あんな女、放って置けば良いのに。

 

「三嶋が俺に告白したら付き合う」

三嶋の瞳が揺れた。



**********



 僕は何故か微笑んだ。

「一ノ瀬くんは優しい、、、。僕の本当の気持ちを知ったら、きっと気持ち悪いって思うよ」

「?。気持ち悪い?」

「僕ね。僕も、一ノ瀬くんの事、可愛いって思ってた、、、。ほら、一ノ瀬くん言ってたでしょ?「この顔が嫌い。この顔だからみんな近付いて来ると思うと、気持ち悪い」って、、、。僕もそうなんだよ。一ノ瀬くんの事可愛いと思う、、、。一ノ瀬くんに告白した人達と同じなんだ。、、、気持ち悪いでしょ?」

「三嶋は気持ち悪く無い」

「でも、、、」

一ノ瀬くんが、僕のネクタイをグイッと引っ張った。顔が近い!

「三嶋は可愛いよ」

ちゅっと頬にキスされた。なんでっ?!

「菱沼と付き合うな」

「え?あの、、、」

「俺が好きなんだろ?」

「いや、あの、、、一ノ瀬くん?」

「菱沼と手を繋ぎたい?」

そう言いながら、僕の手を繋ぐ。

 手を繋いだだけで、キュンッとなる。

 嬉しい。

「菱沼とキスしたい位好きなの?」

反対の手で、僕の頬を触る。

 頬を少し触れられたら、ゾクゾクした。

「ん、、、」

思わず声が出て、目を瞑る。

「菱沼にはやらない」

頬に触れていた手が首に回り、一ノ瀬くんは僕を引き寄せた。

 そしてキス。

 繋いだ手にキュッとちからが入った。

 唇が離れると、一ノ瀬くんが僕を見上げていた。

 可愛い顔をした、オスだった。



**********



 ヤバい、、、。キスしたら自覚したって、単純にヤバいヤツだ、、、。

 俺、三嶋の事好きだ。菱沼に取られたく無い。誰にも触らせたく無い。三嶋は俺のモノだ。

 一回のキスで理性が吹っ飛んだ。絶対にコイツを手放したく無い。

 俺は、三嶋の脇腹を指先で撫でる。少し引き気味の腰をそっと引き寄せた。

「俺が本当に好きなら、三嶋からもキスして」

身体を密着させる、

 三嶋の瞳が揺れる。ジッと見つめると、涙があふれて来るのが見える。可愛い、、、。

 恥ずかしそうに瞼を閉じると、涙がこぼれた。

「ねぇ」

催促する。薄っすら開けた瞳が俺の唇を見ている。

 キスしやすい様に顔を上げる。

「ごめんね、一ノ瀬くん。大好き」

そっと唇が触れた。三嶋は少し触れただけで、離れようとした。

「そんなキスで良いの?」

三嶋はオドオドと、俺の頬に触れる。

 もう一度軽く唇が触れた。もどかしいな。

 俺は、三嶋と同じ様に両手で頬を包み込む。

 でも、優しいキスはしない。

 三嶋の初めてのキスを、思い出す度に恥ずかしくなる様なキスにしたい。

 俺が三嶋を愛してるって知らしめたい。

 三嶋は俺のモノだと思わせたい。

 

 唇を離すと、三嶋は俺の背中に手を回し、抱き締めながら寄り掛かった。

「一ノ瀬くん、、、立ってられないよ、、、」

 俺は大満足で三嶋の手を引く。ベンチに座らせて俺も横に座ると、三嶋は両手で顔を隠した。

「僕、どうなっちゃったの?」

耳も、首の後ろも真っ赤だった。

「俺の彼女になったんでしょ?」

三嶋に寄り掛かると、思いっ切り照れていた。



**********



 僕は放課後、菱沼さんに返事をしに行く。

 今日は料理部があるはずだから、調理室に行ってみた。

 入り口の側に近藤さんがいて、菱沼さんを呼んで貰う。

 廊下には誰もいない。少しだけ移動して階段の踊り場迄行く。ちゃんと菱沼さんの正面を見て謝った。

「ごめんなさい。折角告白してくれたんだけど、付き合えません」

頭を下げた。

「理由、聞いても良いかな?」

「一ノ瀬くんが好きなんだ」

「一ノ瀬くんは知ってるの?」

「昨日、、、色々有って付き合う事になって」

「そっか、、、それってみんなには秘密にしたいの?」

「?。一ノ瀬くんは気にしないって、、、」

「じゃ、みんなに話して良いんだ!来てっ!」

いきなり制服を引っ張られた。調理室に入り、扉を閉めると

「三嶋くん!一ノ瀬くんと付き合ってるって!」

大きな声で言うと歓声が上がった。

「キャアー!」

「おめでとう!三嶋くん!」

「どっちが彼女?」

「え?あ、僕、、、?」

「だよねー!」

「どっちが告白したの?」

「どんな告白だったの?」

「手はもう繋いだの?」

女子のパワーが凄くて怖い、、、。

ガラッ!と扉が開いて一ノ瀬くんが入って来た。

「三嶋を返せっ!」

そう言いながら、僕を救出してくれた。

 一ノ瀬くんが扉を閉めるともう一度黄色い歓声が聞こえて来た。

「、、、こ、怖かった、、、」

一ノ瀬くんは、僕の手を繋ぎ

「後で、どんな会話をしたのかゆっくり聞かせてね」

と言いながら、僕の手の甲にキスをした。



**********



 後で聞いた話しなんだけど、僕の事を好きだったのは近藤さんだったらしい。

 菱沼さんは、近藤さんの応援をしていたらしいんだけど、気が付いたら、料理部全員で僕と一ノ瀬くんを応援していたんだって、、、。


 だから、あの黄色い歓声だったんだ、、、。



「それでもね、優斗が菱沼と話すのは見たく無い訳、、、。わかる?」



そう言いながら、一ノ瀬くんはキスをする。



 一ノ瀬くんは、思った以上にヤキモチ妬きで、僕はちょっぴり嬉しかった。



沢山の作品の中から選んで頂けて嬉しいです。二人がいつまでも仲良くいられますように!

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