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二つの小さな影

 時は流れ、現代。鬼ヶ島には、どんな願いも叶えるという神社があるという噂が広がっていた。その鳥居をくぐる小さな影が二つ。


 小学生くらいの男の子と、幼稚園くらいの妹だった。兄の名はコウタ、妹の名はミオ。二人の願いはただ一つ。寝たきりになってしまった母親の病気を治してほしい。幼い二人の表情には、切実な願いが宿っていた。


 ミオは、コウタの手をぎゅっと握りながら、震える声で尋ねる。

「お兄ちゃん、本当にお母さん、元気になってくれるかな?」


 コウタは、不安を押し殺すように笑顔を見せる。


「ああ、大丈夫だ。この神社はどんな願いでも叶えてくれるんだから」


 しかし、コウタの心臓は、不安で大きく脈打っていた。病気になってからの母親は、笑顔を失い、日ごとに弱っていく。


 医者からも「奇跡でも起きない限りは…」と言われ、絶望の淵に立たされていた。そんな時、偶然見つけたのが、この鬼ヶ島の神社の噂だった。藁にもすがる思いで、二人は船に乗り、この島へやってきたのだ。


 社の前に立つ二人。風雨にさらされた木造の社は、まるで今にも崩れ落ちそうだった。


「おーい、神様、いますかー!」

 コウタが大声で呼びかけると、社の奥から不気味な声が聞こえてきた。


「よくぞ参った、人間の子よ…」

 姿を現したのは、神などではなかった。かつて桃太郎に退治され、この島に封印された黒鬼が、この神社の社を隠れ蓑にしていたのだ。黒鬼は、その醜悪な顔を歪め、二人を嘲笑う。

「母親の命と引き換えに、お前たちの命を差し出せ」

「な、なんだって…?」

 コウタの顔から血の気が引く。ミオは、恐怖でコウタの背中に隠れた。


「奇跡を望むなら、それなりの対価が必要だろう?  さあ、どうする?」

 黒鬼の言葉に、コウタの心臓が激しく波打つ。母親か、自分たちか。


 その時、神社の社の近くを根城にしていたブラディの魂が、この会話を聞いてしまった。成仏できない魂となって以来、幾度となく人々の願いを聞き、心を痛めてきたブラディだったが、この兄妹の純粋な願いと黒鬼の卑劣な嘘に、抑えきれない怒りがこみ上げる。


「待て…」

 ブラディの魂が、社の入り口に姿を現す。半透明の巨体が、黒鬼の視界を遮った。


「なんだ、貴様は…」

 黒鬼は、ブラディの存在に気づいていなかった。だが、その威圧感に、警戒心を強める。


「この話、俺が乗った…」

 ブラディの声は、魂の雄叫びとして響き渡る。

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