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生贄娘と呪われ神の契約婚  作者: 乙原 ゆん


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五十五.生贄娘、山吹を見送る

 数日経ち、かなりの量の薬草茶を作ることができた。

 できた物は紫水の眷属の手によって病が流行っている村々に配られている。

 全ての村に行き渡ったようだが、眷属達からは継続して欲しいと言われていた。

 もちろん、香世にも異存はないが、問題が一つあった。

 ドクダミ以外の薬草が足りないのだ。


「困りましたね」

「……どうしましょうか」


 香世の言葉に、山吹も困ったような表情を浮かべている。


「この薬草だったら、今の季節、地上にも生えていると思うのだけれど」


 流石に香世も紫水の屋敷を抜け出して取りに行くことはできないとわかっていた。

 せめて紫水の許可があればと思うが、その紫水も忙しそうで、なかなか捕まえることができない。

 けれど、山吹はそう思わなかったようだ。


「でしたら、私が摘んで参ります」

「えっですが」


 困惑する香世に、大丈夫だと山吹は言う。


「香世様に教わったおかげで、私にも必要な薬草はわかるようになりました。私でしたら、御使いで地上に降りることもありますし、心配はご不要です」

「ですが伝染病が流行っているのに」

「紫水様のご加護のおかげで私達眷属は病には強いのです。だから、伝染病にも強いのです。念のため、口を覆って行きますので」


 そう胸を張って言う山吹に、そこまで言うのならと香世は頷いた。

「でしたらお願いします。けれど、くれぐれもご無理はされないでください。山吹様に何かございましたら、私、絶対に頼んだことを後悔してしまいます」

「危ない所には近寄りませんから。どうぞ安心してお任せください」


 そう言うと、山吹は「では行って参ります」と、早々に出立した。



 作業場で一人になってしまったが、香世にできることはまだ残っている。


「さて、では私は、ドクダミの陰干しをすすめましょう」


 山吹が戻ってきたらすぐに作業に取り組めるように、ドクダミを摘みに行く。

 幸い、ドクダミは林で群生していて、かなりの量を収穫しているのに、まだ十分な量があった。

 摘んで、戻って、洗って、干して。

 干した後、時間が経って、良い案配にしおれた葉を取り込んで。

 何度か繰り返し、今日はあともう一巡くらい摘みにいけるかと考えながら摘んできたドクダミを水洗いしていると、ふと背後に人の気配を感じた。


「山吹様?」


 山吹が帰ってきたのかと思って振り返ると、そこにいたのは山吹ではなく、一人の老婆だった。

 よく見ると、老婆はずいぶんやつれている。

 着物も、紫水の眷属が着ているものとは違うので、紫水の屋敷で看病を行っている村人の一人だろうと香世は見当をつけた。

 重病者は紫水の元で看病をしていると聞いている。


「どうされましたか?」


 尋ねると、老婆は香世の問いには答えず言う。


「あんたが、あのお茶を作ってくれたんか?」

「そうですが、あの……?」

「……わしは、助かってよかったんじゃろうか」


 会話が成立しないながらも、このまま放置はできなくて、香世は老婆を作業場の縁側へと案内した。

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