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生贄娘と呪われ神の契約婚  作者: 乙原 ゆん


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五十四.生贄娘、山吹と薬草茶を作る

 朝餉の後、白麗は早速出発した。

 香世が知らない間に準備を整えていたらしい。

 紫水の見守る村を見て回り、堕ち神の気配を探るという。


「どうぞ、お気を付けて」

「もちろんだ。絶対に香世の元に帰ってくる」


 見送りに立った香世に、白麗はそう約束してくれた。


「香世も、無理はせぬようにな」


 そう言って、白麗は狼の姿に転じると紫水の屋敷を出立した。



「私も、やるべきことをやらなくてはね」


 玄関で香世が気合いを入れていると、先日、書庫を案内してくれた山吹がやってきた。


「香世様、こちらにいらっしゃったのですね」

「山吹様。どうかなさいましたか?」

「いえ。私でも、薬草茶を作れると聞いて、お手伝いできたらと」

「本当ですか!」


 喜びの声を上げた香世に、山吹は照れたように頷いた。


「ただ、お恥ずかしながら、薬草の名前などはわかりますが、その、どう摘んでいいのかなどはわからないのです。色々教えてください」

「大丈夫です。どんな人でも作ることができるものですから」


 庭の薬草を使うのは、紫水の許可を得ていた。

 ドクダミは奥の林に取り切れない程群生しているし、他の薬草も特別珍しい物ではない。

 地上で暮らしていた香世が、身近で手に入れることができたくらいだ。


「では、このまま庭に向かいましょう」


 そうして、山吹と連れだって庭に向かった。



 紫水から作業場も好きに使っていいと言われている。

 山吹に多少においがすると伝えた上でドクダミを摘みに行った。


「結構においが強いのですね」


 山吹は普段は全く薬草に触れないそうで、物珍しげにドクダミを摘んでいる。


「においで気分が悪くなったりなどはされていませんか?」

「いえ。独特のにおいですが、馴れるとこれはこれでいいにおいかも……? あっ、今のは気のせいでした」

「まぁ」


 慌てて言い直して、やってしまったと言う山吹につられて香世も笑う。

 収穫用の籠一杯にドクダミを摘み、帰り道で他の薬草も摘んでから洗い場に向かった。

 下処理を終え、作業場に戻ると、昨日紫水の眷属が下準備を行っていたのだろう、ドクダミや薬草を取り込んでいく。今回は作業場内に干せたが、それも数回で場所が埋まってしまいそうだった。

 干せる場所が足りなくなれば、作業場の軒下を使おうと、香世は考える。

 作業場自体が、北の、あまり日の当たらない場所にあるから問題はないだろう。

 その後、洗ったばかりの干しつつ、香世は山吹に尋ねる。


「ところで、患者様はどのくらい、いらっしゃるのですか」

「今のところ七つの村で流行病が確認されていて、そのうち五つの村が蔓延していると聞いています」

「なら、これだけでは足りないかと」

「えっ、こんなに摘んできたのにですか」


 驚きを浮かべる山吹に、香世は頷く。

 二人で摘んだドクダミや他の薬草で、小屋のほとんどは埋まっていた。


「乾燥したら嵩が減ってしまうから、七つもの村に配るには全然足りないと思います」

「そうでしたか」


 山吹は頷くと続ける。


「なら、まだ午前中ですし、もう一度参りましょう」

「そうですね」


 午後からは、取り込んだ薬草を加工しようと思いながら、香世は山吹と共に外に向かった。

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