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生贄娘と呪われ神の契約婚  作者: 乙原 ゆん


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五十三.生贄娘、手伝いを申し出る

 その日の昼餉も、夕餉の時刻も紫水と砥青は食事の席に現れなかった。

 眷属が持ってきてくれた伝言を聞き、先に食事を進める。


「心配ですね」

「そうだな」


 伝言を持ってきた眷属が申し訳なさそうに頭を下げる。


「申し訳ありません」

「謝る必要はない。手が離せないほど患者の容態が良くないのだろう」

「明日も無理はなさらないで欲しいとお伝えください」


 ほっとしたように眷属が頭を下げ、部屋を出て行くのだった。



 紫水達と顔を合わせることができたのは、結局、その三日後だった。

 朝餉の時間、久々に目にする紫水達の顔は幾分やつれている。


「忙しかったようだな」


 白麗の言葉に、紫水と砥青が頷いた。紫水が言う。


「まだ、実は落ち着いていないんだ。昨晩も徹夜で、そのままこちらに来た」

「それは……」


 言葉をなくした香世に、紫水は続ける。


「患者は増えるばかりで、はじめは一つの村だけから患者が出ていたのが、今はいくつもの村で同じ症状が出ている。手分けして原因を探っているが、瘴気による伝染病という線が濃厚だ」

「瘴気による伝染病というと、堕ち神が関係しているのか?」


 白麗が尋ねると、紫水は頷いた。


「確実ではないが、可能性は高いと思っている」

「そうか……」


 白麗が考え込むように黙り込んだ。

 暗くなった雰囲気を和らげようと砥青が言う。


「白麗様達にいただいた半島人参で、栄養剤を作ることができました。おかげで、今のところ死者は出ていません。それに、今は希望者を募り、香世様の薬草茶が効くかどうか確かめているところです」

「おそらくは効果があると思うが、確かめもせず無闇に配るわけにもいかぬからな」


 薬草茶が役に立つと聞いて、香世は目を丸くした。


「薬草茶が効くなら、私にもお手伝いできることはありますか」

「香世?」


 驚いたように白麗が香世を見る。


「私が薬師の知識を教えていただいているのは、ただ知識を蓄えるためではありません。この知識を使い、必要としている人を助けるためです」

「だが、危険だ」

「ですが……」


 言いよどむ香世を援護するように、紫水が口を挟む。


「では、危険でない仕事なら、手伝ってもらっていいのだな」

「紫水」


 咎めるように紫水を睨む白麗に、紫水は涼しい顔で告げる。


「薬草茶を作る仕事をできれば香世殿に手伝っていただけると助かるのだが。香世殿が手伝ってくれるのならば、今その仕事をしている者達を特に状況が厳しい村にも派遣できる」

「む」


 しかめ面をする白麗に、紫水は続ける。


「ここで薬草茶を作るのならば白麗も安心だろう。それに香世殿が一番、薬草茶を作るのは馴れているだろうし」


 どうだろうかと紫水は表情を変えない白麗を見る。


「白麗様、どうかやらせてください!」


 香世の言葉に、白麗も渋々頷いた。


「……仕方ない、か」


 そう言うと、白麗は紫水の方を向き頭を下げる。


「紫水、では、香世を頼む」

「安心してくれ。それに、そんなに心配なら白麗が側についておればいいではないか」


 紫水の言葉に白麗は首を振った。


「私は、外に出て伝染病の元を探そうと思う」

「白麗様⁉」


 驚く香世に、白麗は淡々と告げる。


「堕ち神が関わっている可能性が高いのであろう。本当に奴が原因ならば、奴を倒さねばこの病は治まらぬ」

「そうだが……、違ったらどうするのだ」

「違ったら、その時だ。どうせ、私の呪いを解けるのも堕ち神だ。いずれは、相対せねばならん」

「そんな……」


 呆然とする香世に、白麗は「心配不要だ」と告げると、残っている朝餉に口を付けた。

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