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生贄娘と呪われ神の契約婚  作者: 乙原 ゆん


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四十三.生贄娘、紫水に教わる

 朝餉の席で、香世は笑いをこらえる紫水の視線に身を縮こまらせていた。

 白麗の二度寝につられ、香世も一緒に寝入ってしまったばかりか、朝餉に呼びに来た紫水の眷属にその姿を見られてしまっていた。


「くく、二人は仲がいいのだな」

「当たり前だ、夫婦だぞ」


 紫水の生温かい視線と言葉を、白麗はさらっと受け流す。


「祝言はまだだったよな。いつを予定しているのだ」

「考えていなかったな」

「そうか。なら、私も祝いたいので、決まったら呼んでくれ」

「わかった」


 会話の内容に、はっとして香世は白麗を見るが、白麗は紫水との話に集中している。

 形ばかりの妻にする気はないとは言われているが、その一環で祝言まで挙げてくれるのだろうか。


(本当に、そこまでしてもらっていいのかしら)


 白麗に好きな人ができた時、私がいたら困るのではないかとふと思う。


(それに、人間の私に、白麗様の隣は釣り合うの……?)


 だって、どう考えても私よりも紫水の方が、白麗とお似合いである。

 紫水は白麗と同じ神だし、付き合いも長いようだ。

 こうして話をしている紫水と白麗はどう見ても香世と白麗よりもお似合いに見えた。

 愕然としている間に、気が付くと香世以外は食事を終えている。


「香世殿、ゆっくりで大丈夫だぞ」


 紫水の言葉に頷きつつも香世は慌てて箸をすすめるのだった。



 朝食が終わると、白麗とは別行動だ。

 紫水の眷属達に連れて行かれ、香世は紫水と共に彼女の作業場へと入れてもらう。

 作業場は紫水の屋敷の奥にあり、本邸と渡り廊下で繋がった別棟の建物だった。

 渡り廊下から中に入ると、下処理した薬草が干してある、部屋の半分が土間になり、外との出入りも出来る部屋だった。

 そこからさらに奥にいくと、調剤室。その奥に薬の保管室もあり、全ての部屋を見せてもらう。


「白麗に作業場をねだる時には参考にするといい」

「えっ」

「薬師となれば、何かと場所を取る。管理に注意がいる薬草もあるし、本邸で作業をするよりは、こうして別の建物があると便利だ」


 紫水は不思議そうに香世を見る。


「香世殿は白麗の妻ではあるが、人を救うために薬師の技術を学びたいのだと聞いているが、違っただろうか」

「いえ、その通りです」

「なら、作業場はあった方がいい。それに、本邸は来客があるだろう。やってくる神によっては、薬の匂いを嫌う者もいるから別邸の方が安心だ」


 疑いなく言う紫水に、香世はなんとか頷く。

 香世としては、新しく建物を建てて欲しいなんてとても願えることではないという気持ちだったが、紫水の言葉で 白麗の客に不快な思いをさせる可能性があるのかと目が覚めるような思いだった。

 今までは白麗は伏せっていたし、香世のために招いてもらった砥青も薬師の眷属で気にする神がいなかっただけなのだ。


「教えていただきありがとうございます」


 礼を言うと、紫水はうむと頷き、では授業に入ろうかと作業場の座布団を香世に勧めた。

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