三十.生贄娘、紫水に薬草茶の作り方を教える
翌日のことである。
早速、薬草茶の作り方を紫水に教えるため、香世は紫水と共に庭に出ていた。
折角だから薬草を摘むところから見たいとの紫水の要望だ。
「奥方殿、今日はよろしく頼む」
「こちらこそ、よろしくお願いします。私のことは香世とお呼びください」
「わかった。香世殿。私のことは紫水と呼んで欲しい」
紫水は頷くと庭に向かう。
「さぁ、早速行こうか」
挨拶が済むと、紫水は香世の手を引いて庭を行く。
「紫水様、その、薬草はそちらでは」
「すまない。早く見たくて、逸る心を抑えられなかった」
紫水は罰が悪そうに微笑む。
その様子に、香世は頬が緩む。
女性なのに男性のような話し方をする紫水を、最初は少し怖いと思っていた。けれど、こういう薬草や薬に対して興味が真っ直ぐに向いているところは砥青とそっくりだと思うと、最初に感じた怖いという気持ちは消えていった。
歩きながらも、紫水の目は庭に植わっている植物を追いかけている。
「香世殿は、ここにある植物で切り傷の応急処置をして欲しいと言われたら、どうする?」
唐突な紫水の言葉に、香世は周囲を見回した。
「この場での薬草を使って、切り傷の応急処置を、ですか」
頷く紫水に、香世はこの一月の間に砥青に教えてもらったことを思い出しながら口を開く。
「応急処置ということでしたら、あちらのヨモギを揉んで傷口に貼ります」
「うん。きちんと覚えているようだな。では、ヨモギ以外で同じように傷の手当てをするのならどうする?」
「ヨモギ以外でしたら、こちらのオトギリソウで同じように手当ができます」
「なるほど。砥青はきちんと教えているようだ」
香世が答えると、その通りだと紫水は満足げに頷いている。
そうしている間に、ドクダミが生えている場所に着いた。
「では、摘んでいきますね」
紫水は香世のやり方を見て、頷いている。
「採取の際にも特別なことは行わないのだな」
頷く香世に、紫水は考え込む。
「ということは、やはり他の薬草と配合することで浄化を助ける効果が出来ているのか」
「えっと、ドクダミの採取が終わったので、場所を移動したいのですが」
考え込んでいる紫水に恐る恐る声をかけると、紫水は頷いた。
「わかった。ちなみに、この量で、出来上がりはどのくらいの分量になるんだ?」
「ひとまず一週間分位でしょうか。乾燥すると、嵩が減るので」
籠に山盛りになっているドクダミを見て、紫水は頷いている。
そんな話をしながら別の薬草を採りに向かった。




