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生贄娘と呪われ神の契約婚  作者: 乙原 ゆん


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二十一.生贄娘、調薬に取り組む

本日は2回、明日から3回更新していきます。

 屋敷に帰るとすぐに調薬に取りかかった。

 いつも部屋の中に控えてくれている桜が、興味深そうに香世の手元を見ている。

 砥青の指示通りに進めていき、白麗のための薬が出来上がる頃にはすっかり日が落ちていた。


 出来上がった丸薬は、瘴気の欠片を使ったためか今まで見たこともない程にどす黒い色をしている。香りも薬草の匂いを掻き消すようにヘドロのような臭いが漂っていて、本当に薬なのかと疑わしくなってくる。

 砥青は微笑み、丸薬を一つ選んで皿の上に載せる。


「後は、白麗様に飲んでいただくだけですが」


 そう呟く砥青を見て、香世は首を傾ける。


(白麗様に、本当に飲んでいただいていいものかしら……)


 香世が作ったこれは、薬というよりは毒物にしか見えない。

記憶に残っている、薬師の父が作っていた薬ともかけ離れていて、香世は自分が作った物なのにこれが薬だという自信がなかった。


(でも、今まで教わった知識は本物だった……)


 全部とはいえないが、砥青にこの一月あまり教わってきた薬草の中には、香世が父から教わった物もあった。だからこそ、砥青のことを疑えない。


「これが、本当に薬なのですか?」

「はい、よく出来ていると思いますよ」

「試しに、私が飲んでみてもよろしいでしょうか?」


 毒味、というわけではないが、せめてもそう申し出てみる。

 出来上がった丸薬はいくつもあるので、それはそれで良いだろう。


「それもおも――いえ、人には害になりますので。奥方様が飲まれるのはお止めになった方がよろしいかと。古来『毒をもって、毒を制す』という言葉があるように、こちらの薬は瘴気を含んでいます。奥方様が飲まれると害となりましょう」

「そうですか……」


 最初、砥青は何と言いかけたのだろうか。


「それでは、早速持って参りましょうか」

「えっ、白麗様のところにですか?」

「外出の許可を取る際に、奥方様が珍しい薬を作るので、出来上がればお持ちするとお伝えしておりますから」

「そう、なのですね……」

「どうかしましたか?」


 不思議そうに尋ねる砥青に首を振り、香世は息を吐いた。


(もしかして、私の存在が疎ましくなって、今までお会いしていただけなかったの……?)


 そのことに愕然とする。


(何か、嫌われることをしてしまったのかしら)


 だが、思い起こしても、香世にそれらしい心辺りはない。

 一月前のことだし、白麗と会えなくなる前にやったことと言えば、薬草茶を出し、白髪を見つけたことくらいだ。


(あっ、もしかして、薬草茶のせい)


 気に入っていると言ってくださっていたし、楓と桜を通じて、薬草茶を今も飲んでおられると聞いていたから、薬草茶が原因だと疑ったことはなかった。

 でも、よく考えたら、薬草茶を白麗に進めてから、白麗と顔を合わせることがなくなった。


(いえ、考えても仕方がない。私にはわからないご事情があるかもしれないもの……)


 白麗達が優しいから、つい忘れてしまいそうになるが、香世は生け贄なのだ。

 彼らの事情を教えてもらえなくても仕方が無い。

 それを寂しいと思ってしまいそうになる自分を抑え、出来上がった薬と共に白麗の元へと向かった。

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