十八.生贄娘、思い悩む
あっという間に、砥青が来てから一ヶ月が過ぎていた。
白麗は相変わらず姿を見せない。
(今日は、お会いできるかしら)
朝、目を覚ました香世は、白麗のことに思いを馳せた。
毎日、楓と桜に白麗に会えるかどうか聞いてしまうが、二人に聞いても困ったように「今日も難しい」と言われてしまう。
香世自身も、二人を困らせると分かっていても、聞かずにおられないのだ。
香世は、右手を宙に掲げ、白麗の契約紋があるはずの場所を見つめる。
今は見えなくなっているが、その場所には白麗の契約妻となった証があるはずなのだ。
それに、既に白麗は香世との約束は果たし、地上の雨を晴らしてくれている。
(だから、今、少しくらい会えなくても、私は白麗様を信じるわ)
神には神の事情があるのだろう。
(私は、私にできることを頑張ろう)
考えて居ると、襖の外から楓と桜の声が聞こえた。
「おはようございます」
「起きていらっしゃいますか」
「楓さん、桜さん、起きています」
「失礼いたします」
入ってきた二人に着付けを手伝ってもらいながら、香世は今日もダメだろうと思いながらも、尋ねていた。
「本日は、白麗様は――」
「……本日も。申し訳ございません」
「あっ、ですが、お着物は、白麗様が選ばれたものですから!」
そう言って頭を下げる二人に、香世は首を振る。
「いえ。ご事情がおありと伺っておりますから。私の方こそ、毎日尋ねてしまってごめんなさい」
「いえ!」
「香世様はお嫁様なのに、お構いできない主様が原因ですから」
「こら、桜」
「だって本当のことだもん」
楓の叱責に、桜はむっと唇を尖らせる。
「私も、我慢しなければと思うのですが……でも、どうしても聞かずにはおられなくて……」
「いいのです!」
「むしろ、香世様が何もおっしゃられなくなったら、主様は見捨てられてしまったのだなと思ってしまいます」
「そんなことは、絶対にいたしません」
「よかったです」
「明日も、遠慮無く聞いてください。その、お答えは変わらないと思いますが……」
「わかりました。ありがとうございます、楓さん、桜さん」
香世は、仕度を調えてもらうと、朝食へと向かった。




