表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生贄娘と呪われ神の契約婚  作者: 乙原 ゆん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/65

十一.生贄娘、庭を散策する

 白麗が飲み干した茶器を台所に運ぶと、楓と桜が待っていた。


「主様のご様子はどうでしたか?」

「お喜びでしたでしょう?」

「そこまではわかりませんが、明日は私の分も持ってくるようにと言われました」

「まぁ! よかったですね、楓さん」

「ええ。思った以上ですわ、桜さん」


 二人は顔を見合わせて微笑んでいる。


「明日はとっておきのお茶を淹れましょう」

「甘いお菓子も準備をしておきましょう」


 白麗以上に甘やかそうとする二人を、香世は慌てて止める。


「その、いつも通りでお願いします」

「そういうわけには参りません」

「そうです。それに。香世様の笑顔を引き出せれば、主様もやる気が出るというものです」

「そういうもの、でしょうか……?」

「はい! ですので、香世様、私達にお任せくださいね」


 そう言う楓と、頷く桜に押し切られ、香世は頷くしかなかった。



 後片付けをさくっと終わらせ、三人で庭に向かう。

 白麗の屋敷の庭は、樹齢何百年もあるような松があり、菊や牡丹、芍薬と、父が持っていた図鑑の中でしか見たことがないような、珍しかったり高価だったりする草木が生き生きと茂っている。

 そんな庭を隅から隅まで歩いて回り、庭の北側にあたる場所に、香世は馴染みのある懐かしい植物を見つけた。


「ドクダミだわ……!」


 建物と庭の木々の丁度影になる場所に、赤みを帯びた茎と深緑の葉を持ち、小さな白い花を咲かせるドクダミが群生している。

香世は着ている着物を汚さぬよう気を付けながら進み、目当ての草の前で腰を落とした。


「ドクダミが、お好きなのですか?」

「傷の手当てで使うから植えていますが、においがきついから苦手です」


 確かにドクダミには癖の強いにおいを持つ。

 楓と桜は余程苦手なのか顔をしかめて近寄ってこない。

 そんな二人に香世は言う。


「これを使って、薬師の父様がよくお茶を煎じてくれていたのです」


 香世の言葉に、二人は目を丸くする。


「へぇ、この臭い草が?」

「傷薬になるだけではないのですね」


 味を想像しているのか、渋い顔になる二人に、香世は言葉を足す。


「はい。お茶になると意外とこの匂いはしないのですよ」

「そうなのですか……?」

「それならちょっと、飲んでみたいかも……?」

「ちなみに、香世様はそのお茶をお作りになられることができるのですか?」


 興味を惹かれた様子の楓と桜に、香世は答える。


「はい、簡単です。でも、お茶になった後はにおいませんが、加工してしまうまではそれなりににおいがします」

「うっ」

「で、でも、香世様の思い出の味に興味があります。桜はどう思います?」

「そうですね、私も飲んでみたいです!」


 もし楓達の口に合わなくても、自分が飲めばよいことだと、香世は頷いた。


「わかりました。では、作ってみますね。こちらのドクダミを少々分けていただいてもよろしいですか?」

「もちろんです! ね、楓」

「はい、桜。香世様、お手伝いすることがあれば教えてください!」

「でしたら、他にも必要な薬草があるのですが」


 香世がいくつか薬草の名を述べると、楓と桜は庭を指差し場所を教えてくれた。


「では、こちらのドクダミの後にそちらも摘ませてください」

「香世様のお茶、楽しみです! ね、楓」

「はい、桜」


 においが苦手と言いながらも、二人は楽しげに薬草茶の準備を手伝ってくれたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ