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第七回「見た目はチャラ男、中身はオカン、それが蒼山海青なり」そのニ


「厚かましいぞ。それでなくても黒川は俺が作る菓子を食べているんだからさ」

「ケチケチしないで海ちゃん。口止め料金ってことで頼むけん。料理部や裁縫部の女子達が、王子様の正体かぎまわっているとよ。部長にしか正体明かしてないから神格化しているたい」

「放っておけ。そのうち飽きるだろ。いちいちかまけてられんよ」


 バレたらひと悶着起きそうだ。ここは隠し通すしかない。黒川はギャップ萌で人気出そうとは言ってくれているがお得意の社交辞令だろう。悪い噂なんてそんな簡単に上書きできるわけ無いだろう?

 俺は編み棒をクイクイ動かして二色の毛糸を編み込んでいく。黒川がウザ絡みするせいで雑念が入ったのか編む方向を間違った。


「海ちゃんマフラーも欲しいたい」

「それは彼女にでも作ってもらえ。お前なら簡単だろ? 大体俺も貰ったことないのに生意気なことを口走るな」


 黒川はこういう性格なので結構交友関係は広い。女子とも平気で長年の友達みたいに振る舞える。俺には真似出来ない羨ましいスキルだ。


「それ言うかなぁ、俺はモテないばい。女友達はいるけど友達はどこまで行っても友達とよ。男と女の友情は成立しないが通説だが、恋愛感情に発展しなければいつまで経っても友人から抜け出さないたい」


 黒川は自分の席に座るもまだ話を切り上げるつもりは更々ないのか、椅子をそのままに逆座りをする。


「--いやいや、女友達いるだけでリア充さぁ。世のモテない男子を敵に回す発言だっぺよ。野球部のエースさん」


 呆れ顔で会話に混ざってくる白石。女子と間違うぐらい声のトーンが高いからドキッとくる。


 と陰口がちらほら。あんな危険生物とよく話できるなとか、悪行三昧のクズ野郎を黒川が身をもって防いでくれているとか、彼方たんはもう奴の性奴隷なんよとか。


 この俺をなんだと解釈しているんだか……。まぁいいけどな。

 ただ共に聴こえていた黒川と白石は気に食わないのか、一瞬だけ不機嫌な顔になる。    

 俺が侮辱されていることを怒ってくれてるのか、それとも自分達の風評被害を憂いて怒りを露わにしているのかは分からない。

 でも見下されているのはあまり気持ちいいもんじゃない。俺をコケにすることは一向に構わないが、友人までその対象にされるのは許されることじゃないぞ。


「それはそれで大変とよ。悪い噂なんて一瞬だから。特に女同士のコミュニティーの伝達速読なんてマッハだから」

「それは分かるさ」


 何で俺をジト目で観察する? 目が怖い怖い。

 確かに同級生、特に女子には基本塩対応だがそれは奴らは色眼鏡で接してくれからであって、黒川や白石みたく接してくれるのなら邪険には扱わないぞ。


「大体かなちゃんも女子に隠れファンが多いじゃん。それどころか男にもモテモテたい。たまたまこの前、朝練のランニング中に目撃して目が点になったけん」

「黒川は余計なことを周囲に話すなしょ。 このっおしゃべりは!」


 白石は黒川にヘッドロックを掛ける。いたたたと、喧嘩ではなくふざけあっているだけなので俺は止めない。実に楽しそうだ。俺のキャラじゃないから羨ましくはないけど。

 二人共訛っているから言葉のイントネーションが標準語より伸ばすところと切るところが違う。

 それがまた面白くて俺はこいつらとつるむのが好きだ。本人達に話したから調子づくので口が避けてもオフレコだが、思わず口角の先端が緩む。


「--おい、いつまでくっちゃべってる! お前ら席に付け! 今からホームルームを始めるぞ!」


 クラスの担任教師、緑川翠香みどりかわすいか先生が黒板を叩き、みんなを一喝して席に付かせる。

 スーツが似合う美人教師だが鬼教官のイメージが強いので敬意を込めて軍曹殿と呼ぶ。

 そしてお馴染みつまらん青春という名の一日が始まった。

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