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第九回「異端者にして変わり者の緑川萃香先生とその教え子蒼山海青の生き様」そのニ

——ネオン煌めく駅前商店街。

 もうあたりは暗い。


 放課後、部活が出来ない日は駅前の塾に通う。絶対見捨てないを謳い文句にしている親心をくすぐるフレーズに詐称しか感じないが、迷惑掛けている家のメンツも立てないといけないので渋々通っている。


 その無駄に熱がこもった指導が終わった頃、既に九時を回っていた。スーパーに寄り生鮮食品半額シール目掛けて買い漁り帰り道を急ぐ。熱血指導で有名なところなのだが、ラブホの隣にあるのと、この外見なんで夜遅いとよく警官に職質させるのが難点だ。


 酔っ払い達をうまく避けて帰路につこうと思っていた矢先、「--私じゃないです!」店の前でうちの制服を着た女子と警官達が揉めていた。


「じゃあなんでカバンに商品をしまおうとしたんだ?」

「それは…………」

「だんまりか? その制服は剣舞高校……。名門高校に泥を塗ってもいいのか? 親御さん達も君を入れるのに苦労したんだろう?」


 関わりたくないから早足で立ち去ろうと思ったが、見知った顔だった。あの眼鏡に三つ編み……クラスの委員長。

 直接関わったことはないが悪いことをする奴じゃない。お弁当もオシャレも質素で相当切り詰めているのだって未来に向けて努力しているからだ。

 なら俺のできる事は一つじゃないか?


「お巡りさん、こいつうちのクラスの委員長で俺が万引きした現場発見して品物戻そうとしたんです」

「はぁ、また蒼山か。このロクデナシが! どれだけ迷惑掛ければ気が済むんだ! こんどこそ少年院送りにしてやる!」

「蒼山君はちが--」

「俺が全て悪いんだ。盗んですいませんしたー! 委員長も迷惑かけてごめん」


 俺は深々と警官と店の店員と委員長へ頭をさげる。


「どうやら君は関係ないようだな。帰っていいよ」

「…………」


 委員長は何かいいたそうだったが何も語らず立ち去った。幾度も振り返りながら。


「はぁはぁはぁ、蒼山君! また貴方なの⁉」

「げ、ソウルイーター先輩」


 剣舞高校生徒会長、武者小路ソニアが息絶え絶え駆け寄っていた。全力疾走してきたのか呼吸が中々ととわない。

 ウルフに近いボブカット、日系ハーフらしい緑かかったブロンド、吸い込まれそうな緑かかった青の瞳。

 また会いたくない相手にあった。どうやら呼び出されたらしい。格好からして俺と同じく塾に行っていたんだろう。


 おお、生徒会長さん。お疲れ様。悪いね来てもらって。蒼山のこと良く知っているの君しかいないからと、お巡りは敬礼。

 逃げられないように俺の腕を後ろに回してロックする。


「大丈夫です塾帰りなので。すみませんお巡りさん、うちの生徒がまたご迷惑を。担任に連絡します」

「緑川先生には知らせるな」

「不埒者は黙って。毎回毎回また色んな人に迷惑をかけて恥を知りなさい」

「別にあんたには関係ないだろ?」


 やっておいてなんだが軍曹殿に迷惑を掛けたくない。あの人、悲しそうな目をして俺を叩くんだ。

 しかも近場の焼き鳥屋でご機嫌機になっているから幸せの時間を取りたくない。


「なんで貴方は悪いことをばかりするんですか?」

「さあね。何か気に食わないことでもあったんでないかい?」

「このクズ。こんどこそ退学にしてもらいますからね。色んな問題ばかり起こして、もうこれ以上恩情はないでしょう」


 それは願ったりかなったり。そうすれば妹とまた共に生活も夢じゃない。あの両親から藍梨を側で守れるのは兄貴の俺だけだ。


「そう願いたいものだな。俺もあんたと会うの正直ウザかったんだ」

「それは奇遇ですね。私も二度と貴方に会いたくないと常日ごろから思っているんですよ」


 俺が問題を起こす度にこの人は来てくれる。巻き込んで悪いとは思っているが、売り言葉に買い言葉。それにソウルイーター先輩も結局は生徒会長の責任全うして内申やキャリア積みたいだけの俗物だろ? うちの親父達とそう変わらん。

 なら軽蔑の対象だし、気を使う必要性もないさ。


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