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 琥珀さんが大きな胸を張っている。


「……人間?」


 どれだけ鍛錬を積もうと人間をやめられてしまった貴女を超えられそうどころか追いつけそうにありません。


「え、酷くない?」


「凄い技だったっすけど、あんな人間離れした技は真似出来ねえっす」


「失神キックの後に失神パンチはセットだぞ!」


「まずあんなに跳躍力ないっすよ。あんなに飛べるの蓮さんと涼夏くらいっす」


「あらぁ、お口が悪いぞっ」


 蓮さんが俺の前までやってきてこれ以上余計な事を言うなと、唇に指を当ててきた。


 微笑んではいるが、目つきが怖い。


「琥珀ちゃんだっけ。凄いわねえ。本当、貴女が最強ね」


「私が最強……あはは!やった!最強だ!」


 蓮さんが煽てると単純な琥珀さんは、ガッツポーズでそれを受け入れた。


 いや、本当の最強は俺の目の前に居ます。


「……チビがきぃ」


 心を無にしよう。終わったはずなのに生きた心地がしない。


「そうだよ!琥珀さんは最強だよー!めっちゃかっこよかったー!」


 涼夏が慌てて声を上げた。


「そうかそうか!私が最強か!ふふん!」


「そ、そうね。お姉ちゃんもびっくりだよ。まるで葉月ちゃんみたいだったなぁ」


「へぇ。悠太くんのお姉さんてめっちゃかっこよかったのね。琥珀さん凄かったわよ」


 姉ちゃんが言って美鈴が続いた。美鈴、お前の好感度が上がったよ、そうだよ、葉月姉ちゃんは世界で1番かっこよくてびじ……2番目に美人だぞ。


「おおお!菜月さんまで褒めてくれて葉月さんみたいだなんて今日はいい日だ!」


 そうだ。今日のヒーローは琥珀さんだ。


「琥珀さんが最強っすね。かっこよかったっすよ。葉月姉ちゃんみたいだった」


 たまには弄らないで素直に褒めよう。


「そうだろうそうだろう!兎にも角にもこれで終わりだな!」


 そう言って笑う琥珀さんはぶっちゃけ、かっこ可愛かった。



 ――――――――

 夏休み前から続いた事件も琥珀さんの一撃によってようやく終幕を迎えた。

 そろそろ男達が自白した事で警察が来ると見て直ぐに撤収する事にした。


 誘拐されてきた子達は男達から拝借したハイエースに乗せて伏見さんが送っていった。

 ハイエースの前後を護衛するようにハイエースを黒塗りの高級車が挟んで出走する所は圧巻だった。


沙織さんと伏見さんの車に涼夏と蓮さんと美鈴が乗り込んで、姉ちゃんの車に、俺と麗奈と琥珀さんが乗って、帰り道を走っている。


 あっちの車、大丈夫かな。急加速して消えていったけど。


 きっと蓮さんが伏見さんを煽って喧嘩腰の荒っぽい運転になったに違いない。

 ご愁傷さま。涼夏、美鈴、沙織さん。俺の要望でそのメンツになった事をどうか恨まないでくれ。


「それで、少年。どうしてわたしがこっちなんだ?涼夏さんと蓮さんがこっちの方が良かったんじゃないのか?お隣だろう?」


 琥珀さんが正論を混じえて質問してきた。


「どうもこうもないっすよ、なんで敵が銃もってんの分かってて飛び出したんすか。めちゃくちゃ心配したっすよ」


 俺がこのメンバーにした理由、それは琥珀さんにお説教をする為だ。


「私なら避けられると思ったからだよ」


 俺が怒っているにもかかわらず、ケロッとした表情だ。


 『馬鹿なの?奇跡でも起きないと人間じゃ避けられないんだよ?』


「でも、信じてくれてたのだろう?二人とも。だから私に大役を任せてくれた」


「それはそっすけど、怖くなかったんすか?」


「私はあの時からずっと鍛錬を続けてきた。葉月さんを殺した奴と会っても負けないように、麗奈と出会ってからは麗奈を守る為に、少年と出会ってからは二人とも守れるようにずっと、ずっとだ」


拳を握り締めながら琥珀さんが言った。


「君たち二人が信じてくれた。だから怖くない。だから私が戦う時は安心してくれていい。私は負けない」


 琥珀さんの心情を映し出すように真紅の瞳は輝いてる。

 さも当然と、自信満々な表情だ。


「俺たち。似た者同士っすね」


 俺も似たような事を麗奈に言った。

 琥珀さんは俺と違って努力を積み上げてきた。


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