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「俺も聞いてねえな。ただひとつ言えるのは」

「言えるのは?」

「俺と同じくらいイケメンらしい」

「春日くんと同じくらい可愛い顔してると」


 こいつは日本語が通じないらしい。


「いいなー。男の娘と恋愛かー。秋山先輩と付き合ってないなら春日くん。私と恋愛してみない?」


 そんなゲームしよみたいな感覚で誘われても食指がビクともしない。

 何なら第2のナンパ女と心の中で呼びたくなった。


「しないよ」


「一言だけで否定!?うぅー振られたー。じゃあ友達は?」


「友達くらいならいいけど。そろそろ名前を教えてくれないか?じゃないとナンパ女2って呼ぶ」


「ええ!ナンパ女!?それも2!?やだよー!」


 大変失礼なあだ名を聞いたナンパ女2はショックを受けたようだ。

 


「じゃあ名前を教えてくれ」


「言うよ言うよ!だからナンパ女2だけはやめてー!」


 早く言えよ。じれったいなぁもう。


「石川菫!私の名前!すみれだからね!ちゃんと覚えてね!」

「オーケーナンパさん。ちゃんと覚えたヨ」


 癖のあるイントネーションで言ってみた。


「ナンパさん!?居そうだけど菫だよ!」


「へいへい。すみれな。覚えたよ」


 人の名前覚えるのって大変だなぁ。

 これで話はひと段落着いた。方向性も決まった。

 スマホの時計を見てみると22時をすぎているが朝まではまだ時間がある。

 


「みんな聞いてくれ!このまま起きてて、朝方寝落ちしちまって起きたら船の上とか、そんなマヌケな事は嫌だろ?」


 そう。

「睡眠を怠っては勝てる戦も逃す!取り敢えず寝よう!女性は車で!男は、俺と伏見さんだけだけど交代で見張るから外で寝る!」


「私も見張り役をさせて貰おう!なぁに!三日三晩寝ずとも私なら戦える!」

 織田信長の尖兵じゃ無いんだからそんな戦え……いやこの人なら出来そうだ。


「寝不足はお肌の敵っすよ。琥珀さんも女の子でしょ」


 実を言うとこの人には敵が来てからの活躍に期待している。

 ここにいる誰もが、敵が、ドン引くような一撃、期待してますよ。ええ。


「そ、そうだな。少年の恋人になろう者が肌荒れしてたら、いざと言う時に萎えるものな」


 顔を赤くしながら体をくねらせて言ってきた。

『なんか妄想が加速してない?(´・ω・`;)』


 言ってやるな。俺もどう扱っていいか分からないんだ。


「見張り役には私がつきますよ〜。寝不足と戦うのは慣れてるので〜」

 ヤクザらしくシノギが〜とか執筆が〜とかナワバリ争いが〜とかそれっぽいことを言っている。


 真ん中のは違うか。沙織さんの言う執筆ってなんだろ。

 頼んだら読ませてくれるのかな。

 と言う訳で見張り役が決まった。


 俺と沙織さんと伏見さんが交代で見張ることになった。

 後、麗奈と涼夏もおまけに付いてきた。


 散々っぱら良い子に眠るようにと父親感丸出しで言ったが、『パパといる』とこれまた娘感丸出しで言ってきた。

 これには流石の俺も勝てるわけが無く。了承した。

 続いて涼夏だ。

「ほら娘ちゃんがこう言ってるんだから」

 と麗奈をフォローする素振りを見せながら

「お母さんとお父さんと一緒にお仕事しようね」

 と母親感を出しながら言ってきた。


 まあつまり、俺はこいつら2人には弱いってこと。ちくしょう。


 最初の見張りを沙織さんと伏見さんに頼んで、俺達は高級車の中で眠らせてもらうことになった。

 だけど、朝に控えてるイベントでアドレナリンが過剰分泌されていて眠れるわけが無い。

 しかも、麗奈のワガママで麗奈を中心に後部座席で3人固まって並んでいる。

 流石高級車。座席の座り心地は最高だ。だけど、座席を倒してもフラットにはならないから尚更眠れない。


「悠くん寝たー?」


 

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