20頁
「んじゃ姉ちゃん頼んだよ」
「おっけー!お姉ちゃんに任せてー。みんなちょっと聞いて!今から私がみんなの事おうちまで送っていくから、あの車に乗ってくれるかな」
姉ちゃんがドアが青いスポーツカーを指をさした。
スポーツカーを見つめる姉ちゃんは哀愁の漂っている。
「……お姉ちゃんの車」
愛着を持って大事に乗ってたの俺は分かってるよ。大事に貯めた金で買って名前もつけてた。
車に悠太って名前つけてたのはちょっと引いたけど。
1番に俺と麗奈を乗せてくれたもんな。
姉ちゃんの肩をぽんと叩く。
「蹴りを入れた本人に直して貰お」
大丈夫。金持ちだから、なんなら姉ちゃんが言えば新しい車も買ってくれるよ。
「えーまだ帰りたくないです!てぇてぇを見ていたいっす!」
誘拐された女の子のうちの一人が言った。お前絶対咲良の友達だろ。類友。
他の女の子達もそうだそうだと言っている。
「この後。朝になるけど本来お前らの身柄を引き取るはずだった奴が来る。人数が分からないから危険なんだよ」
「でも私達が居なかったら怪しんで入ってこないかもしれないよ?それなら私達をもう一度拘束して、おびき寄せて一網打尽にした方が効率的だと思うけど」
「言うことはごもっともだけど人質に取られた時助けらんねえ可能性だってあるだろ」
「このメンバーで人質を取られるなんてことある?最高戦力なんでしょ?」
「まあ、これ以上ないメンバーではあるよ」
雪兄とか神田さんとか来てないけど、このメンバーで負ける要素なんてひとつもない。
けどなー。女の子囮にしてまで一網打尽を狙うのもどうかと思うんだよなー。
「春日くんになんと言われようと私達は残るんだけどね。あのお姉さんに話したら良いって言ってくれたから」
推定咲良の友達が視線を向けたのは沙織さんだった。
視線を向けられた本人はいつも通りにこやかに笑顔を作り、俺を見ないでいる。
この人が良いって言ったならいいか。ケツは持ってもらおう。
「沙織さん。覚悟は出来てますね?」
「なんのことでしょう〜私には分かりかねます〜」
「何かあったらケジメつけてもらいますからね」
「大丈夫ですよ〜。今組員総出でこちらに向かってますから〜。それに彼女たちも今回の件、怖いよりも悔しさというか怒りが勝っちゃってるんです。悠太君なら分かってあげられますよね」
犯人たちに対してどうにかしてやりたい気持ちも分かるよ。
それを汲んでやりたい気持ちもある。だからさ。
「組員呼んでるなら先に言ってくださいよ。俺が厳しい態度取った意味がないじゃないすか」
「いえいえ〜。彼女たちにこの行為が危険だってことは十分に分かって貰えたと思いますよ〜」
つまり俺は沙織さんのシナリオ通りに動いたと、解せぬ。
「君は優しいですからねぇ。絶対こう言ってくれるって思ってましたよ?」
沙織さんから顔を背けてそっぽを向いた。
「別に俺が嫌なだけでこいつらが心配だから厳しいこと言ったわけじゃねえから」
「春日くんってツンデレなんだね」
あ?素直じゃないのは自覚はあるけど。
「ツンデレじゃねえよ!」
人質取られて捕まえらんねえとか。真姫ちゃんの時みたいになるのが嫌なんだよ。
俺が幼かったから力がなかったと言えばそこまでだけど、リスクを自分から高めたくは無いんだよ。
「まあ、分かった。安全には留意して拘束は緩くしよう。何かあったらすぐ逃げ出せるようにな」
納得はいかないけども、これ以上俺が意地張っても決まった事だ。組員も来るならそんなに心配しなくても大丈夫だろ。
「後お前。咲良と友達だったりする?」
「えっ。そうだけど何で知ってるの?」
「本人から友達を助けて欲しいって頼まれたからな」
「ももも、もしかして咲良も攻略したの!?」
咲良の友達がずいと顔を寄せてきた。
人聞きが悪いななんだよ攻略って、いくら俺がかっこいいからって誰でも彼でも攻略すると思われたら大間違いだ。
「してねえよ。つかあいつ心に決めたヤツがいるんだろ?」
「あ、そうだった。でもどんな人か教えてくれないんだよねー咲良は」




