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『おっと、怪我したくなかったら暴れない方がいいぜ。別に依頼は後1人だったんだから、ここでバラしちまってもいいんだ』



 しゃがれた声の男の声だ。

『殴るなよ。商品価値が下がる。こんな危険を犯したんだ。お前だってボーナスは欲しいだろ』


『オマケも買い取ってくれるといいですけど』


『そりゃ俺たちの交渉次第だな』


『せめて100万でもくれりゃあ良いけど』


『安かったらする事してバラしちまえばいいんじゃないすか?』


『ばっかおめぇ、バレたらどうすんだ。俺たちは警察に追われているんだぞ?』


『俺いいバラシや知ってるんですよ!そこに持っていきましょうや』


 本人たちを前にしてこんな下卑た話しをしやがって……怖いよな。辛いよな。


『ですねえ。それにしても、この女たちはどうなるんすかね』


『俺が知るわけ無いだろ。大方買い取られて奴隷にされたり。運が悪けりゃ二度と日本の土を踏めなくなる。同情するよ』


『へぇー。そりゃ可哀想だ。まあでも、女に生まれてきた自分たちを呪うしかないっすね』


 思わず叫びそうになった。

 やべぇ。抑えろ。キレるな。情報がねえと吠えてもどうにもならねえ。


 信号待ちで止まったのだろう、エンジンの音が少し小さくなった。

 それによって付近の車のオーディオか?ライブチックな音楽が聞こえてきた。

 恐らくさっきから真っ直ぐ走り続けてるのは分かるけど、真っ直ぐの道なんて何処にでもある。

 

『お前。どっちの子が好みだ?』


 下品な顔で指を指して2人を品定めしている姿が容易に想像出来て気持ちが悪い。


『抱かせてくれるんすか?』


 血が沸騰しそうだ。


『こんだけ顔が良けりゃ処女じゃなくても売れるだろ』


『間違いないっすね。つーかこの髪の長い子なんか遊んでそうっすよ』


『今時の高校生だしなぁ。もしかしたら親父のブツを咥え慣れてるかもしれないな』


 やめろ。美鈴はそんな安いやつじゃない。

 

『決めたっす。俺こっちの小さい方にしやすよ!こっちの気が強そうなやつがさっきめちゃくちゃ庇ってたんすよ!だからよっぽど大事にしてるのかなって思いやして』


 スマホのディスプレイにヒビが入った。


「殺してやる」

 やっと絞り出せた声だ。


『趣味が悪いな。だが、悪くない。先方には連絡しておいた。朝までは楽しむとしよう』


『んぐ!待ってよ!この子には絶対手を出さないで!変わりに私が何でもするから!』


 美鈴の悲痛な声。


『なんだ?猿轡ちゃんと嵌めてなかったのかお前』


『お願いだから。この子よりも私の方が胸も、お尻も大きいわよ?私。男の人を気持ちよくさせる方法色々知ってるんだから』


『ほう?』


『それにさっきからムラムラしちゃってしょうがないのよ。あなたの黒いハイエースみたいにおっきなの。欲しいわ。おっきな黒いハイエースみたいなの。あぁ、想像しただけで濡れてきちゃうわ……あなたのは小さそうね。国道134号線くらい長い私の奥に届くかしら』


 黒いハイエース。国道134号線。ごめんな美鈴。涼夏好きなお前にそんな事言わせて。

 ……心臓の辺りが痛んだ。


『あにきぃ!我慢たまんねえっすわ!』


 発情したのか、何かをする音が聞こえてくる。そいつに触れんな。

 

『ち、ちょっと!乱暴に触らないでよ!レディの扱い知らないの!?』


『兄貴。こいつ着痩せするみたいっすよ!胸。柔けぇ〜』


『おい。車の中で盛るな。臭くなるから、港の倉庫に着いたら何回でもヤレる』


『あー、楽しみっすねぇ』


『プツッ』


 通話が切れた。

「あああぁあ!」


 堪らず吠えてスマホを地面に叩きつけた。

 それだけでは気が収まらず、踏み付ける。なんども、なんども。


「麗奈ぁ。どうしよう。俺。殺してしまいそうだ」

 


 スマホを拾ってボタンを押してみる。画面はバッキバキに割れてけど動く、パスワードを入力する為にタップしても問題はなさそうだ。

 リダイアルから美鈴の名前をタップして通話をかける。


 しばらくして通話が繋がったようだ。


『よう。この女の彼氏らしいな。おい!声を聴かせてやんな』

『悠太?貴方とのセックスではマグロになっちゃうほど私犯されちゃうみたいなの。マグロよ?マグロ。だから私はもう帰らないわ。探しても無駄よ』


 向かってる先はマグロの取れる漁港の倉庫。


『まあそういうこった!警察に言っても無駄だろうからお前はしこって寝とけ』


 ここまで分かれば充分だ。もう美鈴が男に媚びること必要は無い。

 後は俺が、お前と涼夏の受けた屈辱。拐われた女の子たちが受けた屈辱を何倍にもして、こいつらに地獄を見せてやればいい。


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