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俺はどっちかって言うとお尻派だ。変態チックだから言わないけど。
『お姉さん。お尻には自信あるよ』
俺の考えを読んだようにご自慢の尻をフリフリと振った。知ってる。麗奈の尻は肉付きが良い。ピチピチのスパッツを履いてる時にそれはもう観察した。
『お姉さんのお尻。君好きだもんね』
着替えの時、後ろを向いてたからバレてないとは思っている。
『女の子は視線に敏感なんだぞ?』
「すまんかった。出来心だ」
直ぐに謝った。下卑た視線を送っててすみませんでした。
ちくしょう。今日日の女子は第六感的なやつを備えているのか。
いや、でも、こいつ。わざと尻をアピールするような着替え方してるから目がいくんだよな。
というか男女が同じ部屋で着替えをしてるのが良くねえだろ。
『いいよ。確信を得られたからお姉さんにとっては収穫d('∀'*)』
なんの収穫かは聞かないでおこう。
「あぁ、百合カップルがイチャイチャしておられる」
「違うよ!俺達付き合ってねえから!」
学校の子達は勘違いをしていたようだ。俺は満更でもねえけど麗奈に失礼だろ。
つーか百合カップルじゃねえ。付き合ってもノマカプってやつだよ。
「え!そこまで距離近いのに付き合ってないの!?」
それぞれが驚きの顔で口々にコソコソと話し始めた。
やだねえ噂ってやつは。ひとりでに歩き出しやがる。
この感じだと一刻も早く家に返した方が良い子は居なさそうだな。適当に話しながら姉ちゃんが来るのを待つとしよう。
うーん。めちゃくちゃ話を振られるのだが、女子が集まるとこんなにも賑やかになるのか。
意外にも友達の女子は麗奈を筆頭に静かな人が多かったから苦手意識は無かった。涼夏と美鈴以外。
だが、今は涼夏も含めて、みんな口々に盛り上がっていて何処と無くその場に居ずらい。
疎外感を感じている訳では無い。
ただ、胸がどう。恋愛がどう。コスメがどう。生理がどう。とこの場に男子の存在なんて微塵も感じさせないトークが繰り広げられていて男の俺には、着いていけない気恥しい話題のオンパレードだ。
俺に生理なんて来ねえよ。男だから!
女装はしてるけど!男だから!
でも、麗奈がこういう場に混じって話せて居るのは良かった。
もしかしたら新たな友達も出来るかもしれない。来年は同級生になる人も居るだろうからな!
「ジュース買ってくる。人数分。適当に」
そう言って輪を抜け出して暗がりを1人歩く。女子のフィジカルに終始押され気味で疲れたよ。
俺はこっちのが似合う。後ろにお姉さん的なやつが居ないのは少し寂しいけど。
うーさむ。真夏とは家深夜は少し肌寒いな。地球温暖化はどこへ行ったのか。
誘拐された人達は薄着だから暖かいのがいいのかな。
適当に人数分の飲み物を買って地面に並べる。全部で9本、どうやって持って帰ろう。パーカーがあれば袋替わりにしたのに。かと言って血濡れのタオルに包むのは気が引ける。
「困ったなー。寒いし、ひとっ走りして2往復するかなぁ」
そうしたら体もあったまって一石二鳥。よし。
両手に持てるだけの飲み物を抱えて振り返ろうとした。
「…………っ!!!!」
後ろから俺の体を包み込むように手が伸びてきてビビった。声も出なくて折角買った飲み物もその場に全部落とした。
首だけ振り返って後ろを見る。
「麗奈か」
わざとらしく頬をふくらませたむくれ面の麗奈がいた。
『君はすぐお姉さんを置き去りにする』
「楽しそうに話してただろ。喉乾いたから飲み物買いに少し離れただけだ」
『約束の内容は』
「ずっと一緒にいる」
『君も信頼出来るようになったけどまだまだだねm9(^^)お姉さんは誰よりも君の傍にいたいのさ』
「何それ。イケメン過ぎて惚れちゃいそうだ」
『だからお姉さんにも飲み物運ばせなさい』
「麗奈さんだけにいい顔はさせないぜっ!私も運ぶー!」
衝撃が背中に加わるとともに、涼夏の声が聞こえた。
「ありがとうな」
「んっふっふー礼には及びませんぜ!ダンナ!あっしはダンナの為なら直ぐに駆けつけますぜ!」
涼夏は俺の前まで来てあざとく敬礼のポーズを取った。
「じゃあ涼夏は7本。麗奈と俺は1本ずつでいいか?」
「なーにー!?そんな事を言う悪い子はこうだ!」