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第八話、練習

 次の日の体育の時間、準備体操をし、種目ごとに練習する時間になった。

 朝比奈が小走りで少し長めのハチマキを手に持って近寄ってくる。


「よろしくね」

「ああ」


 例のごとく周りから鬼の形相で睨まれる。胃がキリキリと痛む。

 なんとかそれを彼女に隠しながら、練習を始める。


「どっちが結ぶ?」

「朝比奈で」


 流石に男子高校生が女子高生の足に触れるのはどうかと思うので朝比奈に任せる。


「OK、それじゃあ、結ぶね」


 お互いの足をくっつけ、ハチマキで固定しようと結び始める。

 朝比奈の指が俺の足に触れる。

 結ぶところを見ると、朝比奈はかなり手先が器用なのかもしれない。


「ん」

「どうかしたの?」

「いや、なんでも」


 その、なんというか、意外にくすぐったい。ぞわっとした感触が体全体を包む。(なんだこの抱擁感)朝比奈なら、俺のすべてを肯定してくれそうな気がした。




 結び終わり、コースの前に並ぶ。ルールは30mのコースを往復して先についたペアが勝ちという簡単なルールだ。全部で15ペアぐらいいた。生徒からすると付き合っている同士で出れる競技、ということで結構好評らしい。もっとも、今年は異質なペアがいるんだけどな。

先生に二人三脚のコツを教えてもらい、


「よーいどん」


というやる気のない実行委員の掛け声で走り始める。


「1、2。1、2。1、2。あ、ちょっと待って」


 途中で歩調が合わなくなり、引っかかる。少し合わせた方がよさそうだ。

 もう一度走り始めると今度は、歩調を小さくしすぎた俺が引っかかる。


「ごめん」

「大丈夫だよ、心配しないで」


 謝られたときの対応が俺と朝比奈で違うような気がするのは俺だけだろうか。




 その後、何度か練習をしていく内に、お互いの歩調や呼吸の合わせ方があっていき、それなりの好記録が出せるようになってきた。

 しかし、練習を繰り返していくと、疲れのせいか、朝比奈の足が止まった。


「どうした?」

「足、くじいたかもしれない」

「足、見せて」

「え、あの、いや」


 流石に同年代の男子に足を見せるのは抵抗があるのかもしれない。

 すると、校舎の段差があるところまでヨタヨタと移動し、その場で座って、靴を脱ぎ、靴下まで脱いで、足を見せてきた。

 白い足の足首の部分が腫れていた。


「結構腫れてるな、保健室いった方がいいんじゃないのか」

「ちょっと、保健室いってくる」


 朝比奈はヨタヨタとした足取りで、保健室まで行こうとしていた。

 流石にこれは見過ごせなかった。


「肩貸すぞ」


 朝比奈はちらりとこちらを見、少し戸惑った表情を見せながら


「うん」


とうなずいた。

 俺はくじいた方の足側に移動し、彼女を支えながら、保健室に一緒に向かった。

 途中、彼女の方を見ると、なぜか顔を赤らめていた。

 幸い、保健室の先生によると、体育祭には間に合うとのこと。これで一件落着である。

 周りの生徒に殺気を込めた目を向けられたのはいうまでもないだろう。

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