第七話、輝き
「はい!」
朝比奈は元気よく声を挙げた。
「あ゛?」
男子たちの殺気を帯びた声が聞こえる。朝比奈と二人三脚をする奴を探し出そうとしている。
この状況、どうすればいいんだろうな。どこか他人事である。
「相手は誰ですか」
「青野君です!」
バッと手を摑まれ、挙げさせられる。冷や汗がタラ~と流れる。
「死ね」「殺す」「呪う」
ひたすらに俺を恨む声が聞こえてくる。
「いやでも、俺は100m走に出たくて……」
「青野君は私と出ます‼」
言葉を被せられて俺の意見は通じそうにない。
「それでは碧野さんと朝比奈さんペアは決まりです。他にいますか」
決まってしまった。それでもどこか、朝比奈とやれて良かったと思う自分がいる。
その後も学生カップルが何人か名乗りをあげる。こいつらは思いっきり無視され、ずっと俺を睨んでる人がクラスの半数以上いる。
「それでは出場科目を決め終わりました。残りの時間は自習に充てていいとのことです」
隣の朝比奈を見ると、すごく得意気な顔をしていた。お前のせいで俺殺されるぞ、おい。
しかし、どうすることもできず、授業の予習をするしかない。
「はぁ」
この日一番のため息をつく。
授業が終わると、朝比奈がこちらに来る。さすがに周りの奴も朝比奈がいる前では手を出せないらしい。
「どうよ、強引にいったでしょ」
勝ち誇った笑みを見せる朝比奈。
「確かに強引だったけどよかったのかあれで、お前に近づかなくなる人も出てくるよ」
「なんで?」
「なんでってそりゃ、こんな陰キャでイケメンでもない俺と二人三脚をすることになったら株が下がる」
「そんなに自分を卑下しないでよ」
気づくと、朝比奈が泣きそうな顔をしていた。
「株とかどうでもいい、私はただ青野君と仲良くしたいよ」
「ごめん」
少し、しゃべりすぎたようだ。
「それに、青野君はかっこいいよ」
「どこが?」
急に話題を変えてきた。それに俺なんかがかっこいい訳ない。
「だってよく見ると顔整ってるし、一つ一つの動作が人に傷を負わせないようにしてるし」
そんなとこに気づいてくれてたなんて。少し、いやかなり嬉しい。でも、それと同時に俺には朝比奈がとても輝いて、手の届かない存在に思えた。そして、それを認めたくなくて、真実から目を逸らす。俺はなんでこんな性格なんだろうか。
「それじゃあ今日は、バイバイ」
朝比奈は屈託のない笑顔を浮かべて去っていった。
なぜそこまで、君は輝いてみえるのだろう。心にぽっかりと大きい穴が開いたような気がした。