第六話、出場種目
少しだけ二人の関係が変わった次の日、なぜか教室がざわついていた。詳細に耳を傾けると、どうやら今日、体育祭の出場種目を決めるらしい。そういや昨日、掲示板にかいてあったな。
そんなことを思いながら、席に着くと「おはよう」と朝比奈が挨拶をしてきた。俺は「おはよう」と返した。というか挨拶をするのはこれがはじめてかも知れん。あいかわらずクズな俺だ。
「青野君はなにに出場するか決めた?」
「まだ決めてない。朝比奈は?」
「私はねー、秘密」
朝比奈は悪戯っ子のような笑みを含んで言った。
「そうか」
朝比奈と話し始めたあたりから少しだけ周りの視線が痛いような気がする。男子に至っては、殺気まで宿してる。俺死ぬかも。
仕方ない、朝比奈には悪いが少し狸寝入りをすることにしよう。
「それでねー、あれ?寝ちゃった。おーい青野くーん」
気づいたらマジで寝ていた。
五時限目の学活の時間、どうやら本当に出場種目を決めるらしい。
学級委員が種目を黒板に書いていく。
・全体種目
…綱引き
・個人種目
…100m走
…400mリレー(女子)
…800mリレー(男子)
…借り物競争
…二人三脚(男女ペア)
という感じだった。綱引きは絶対か、めんどい。個人種目はすぐ終わる100m走か借り物競争だな。
「それでは5分時間をとるので自分の出る種目を決めてください。一人最低、個人種目で一種目は
出てください」
一気に教室がうるさくなる。「お前何出るー?」とか「体育祭だる」とか様々な声がいきかう。ぼっちな俺は、その場で5分を待とうとしたとき、朝比奈が話しかけてきた。
「ねえねえ、君と私で二人三脚出ない?(ニター)」
「出ない(即答)」
「なんで、そんなこと言うの?」
うっ、その上目遣いはやめてほしい。
「恥ずかしいだろ、こんな俺と出るの」
「へ?そんなことないよ、楽しいじゃん」
まったくこいつは理解してない。そんなんで株が下がったらどうすんだ。
「絶対に出ない」
「仕方ないなー、強引な手段に出るけどいい?」
「好きにしろ」
どうせたいしたことことはできない。
「それでは、自分の出たい種目に手を挙げてください。」
学級委員の声で5分が過ぎたと初めて気づく。
「100m走に出たい人ー」
挙手しようとしたとき、なぜか朝比奈に手を抑え込まれる。
「?」
気づいたら100m走の挙手タイムが終わっていた。
まあいいか、と思いながら借り物競争の時に手を挙げようとしたらまたもや朝比奈に手を抑え込まれる。「これはヤバイ」と今更ながらに気づいたがもう遅い。
「それでは最後の二人三脚です。男女ペアですので、二人の合意の元、挙手してください」
終わった……