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第三話、日直と黒板


「やべぇ」


頭が覚醒した瞬間、気づいたら口走っていた。

 今日は翼が日直の日なのだ。しかも、翼の通ってる白鷺高校(しらさぎこうこう)は隣の人と二人一組で日直を担当するのである。

 つまり、朝比奈と。

(いや気まずっ!昨日のあんな事があったのに顔合わせるの気まずっ!)

 どうこう考えたって行くしかないのだ。2分で着替え、荷物を鞄に詰めると、時計はもう7時50分を指していた。


「姉ちゃん、ごめん!朝飯は自分でつくってくれっ!」

「はぁっ?ちょっと待って」


 寝ていた姉に一声かけ、扉を開け放ち、隣の部屋の住民に怪訝な顔をされながら俺は走った。

 背後で姉の「朝飯作れー!」という声がした。





「マジでごめん。少し遅れた」


 翼はあれから猛ダッシュし、なんとか遅れることは免れた。

 その代償に肩から息をし、とても疲弊している。

 そんな俺に朝比奈は笑顔で「ほんとに大丈夫?疲れてるね、休んでいいよ」とこちらの心配までしてくれる始末。そんな朝比奈に性格の悪い俺は(どうせ、それも仮面だろ)と思ってしまう。前からいけない癖だとは思っていても、なかなか抜けない癖なのだ。信頼して裏切られるより、最初から信用しない方が心のダメージは少ない。


「それに……、青野君と日直やれて嬉しいから」

「ん、なんか言った?」

「なな、なんも言ってないですよ?い、いやほんとに!」

「そうか?」


 彼女は胸の前でアタフタと手を振って慌てている。本当に大丈夫だろうか。

 まあいい。彼女が早く来てくれたおかげで残る作業は黒板を綺麗にすることだけ。

 俺が黒板消しに手を伸ばしそうとすると、


「あ」

「きゃっ」


 同じ黒板消しに手を伸ばした朝比奈と手がぶつかってしまった。


「ごめん」(なんか今日は謝ってばかりな気がする)

「別に大丈夫っ(あたふた)」


 彼女は赤面し、手をしばらく見つめたあと、


「ちょっと待って」


とだけ言って、教室から出て行った。

 多分トイレに行って手を洗ってくるんだろうが、あそこまで嫌そうな反応をされると少し悲しい…

 朝比奈は数分程して帰ってきた。こちらの顔をなぜか見ない。そこまで嫌なのだろうか。

 その後は特に何事もなく(彼女がやたら俺を避けてるような気がしたが)黒板を綺麗にし終わった。最後に「ありがとね」とだけ言って、朝比奈は仲の良い友達の元にいっておしゃべりを始めた。



 ちなみに、感謝されるようなことをした記憶はない。

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