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第二十一話、水着

 朝比奈がこちらへと近づいてくる。

 その間、翼はずっと朝比奈に見とれていた。

 眩しすぎる白い肌。淡い黄色のビキニに身を包まれた体。その上からラッシュガードを羽織っているものの、前を止めていないため程よく主張している胸。無駄に肉のついていないお腹からは綺麗な形のおへそが覗いている。

 最早そこらへんのアイドルよりも完璧だった。

 そう思ったのは翼だけじゃないようで、周りの男性も日葵に目を奪われている。しかしそこに少しだけ不快感を覚えていた。


「どう?」


 しばらく見惚れていたがその言葉ではっとして、目の前に来た日葵に視線を下ろす。


「大変、いいと思います」


 どういう反応をしたらいいかが分からない故にそう答えた。

 すると日葵は満足したようにへへへっ、と無邪気に笑った。


「それじゃ、行こっか」




 まず最初に流れるプールに入った。朝比奈の分の浮き輪をレンタルし、プールに入る。

 足が底に着く。


「冷たっ」


 プールは想像以上に冷えており、猛暑続きのこの夏には嬉しかった。

 朝比奈を見ると浮き輪を浮かべ、それに乗りこんだところだった。

 そして朝比奈の浮き輪に手を添え、流れに合わせて進んでいく。


「えいっ」


 すると突然、顔に水がかかった。


「、ぷはぁ!」


 目を開けると、いたずらに成功した子供のような顔をした朝比奈がいた。

 朝比奈に水をかけられたと理解した。


「なんっ」


 疑問を口にしようとした瞬間、パシャッ、とまた水をかけられる。


「んっ」


 息をする暇もなく、2撃目、3撃目が飛んでくる。


「キャッ」


 それに対抗してこちらも反撃に出る。


「やめ、やめてぇっ」


「仕掛けたのは朝比奈が先だっ」


 また水をかけると、かけ返してくる。

 しばらくそんなことを続けていると、朝比奈の浮き輪が人の集団にドンッ、とあたって止まった。


「?どうしたんだろ」


 なぜここで混雑しているか理由(わけ)が分からず、あたりを見回す。

 すると遠くに何かが動いているのが見えた。

 それはどんどんこちらに近づいてきている気がする。

 あれは、


「波?」


 翼が言うより先に朝比奈が口に出していた。 


「てことは、、、」


(流される!!)


 力強い水が身体を打ち付け、人の浮き輪にぶつかり、翼は水の中に沈んだ。

 だからここに皆は集まったいたのだ。この波で流されようとして。


「ぷっはぁ!」


 水面から顔を出し、ハァハァと肩を上下させる。

吃驚(びっくり)した)

 突然のことに身体は反応できなかった。

 

「大丈夫か、朝比奈」


 朝比奈のことを思い出し、近くにいたはずの朝比奈に声をかける。


「あさ、ひな?」


 しかし朝比奈はいなかった。

 はぐれたと思い、先程の波が流れていった方向を見ると、朝比奈はそこにいた。彼女の方も人が多く、身動きがあまり取れていないようだった。

 そこで翼は朝比奈を目指し、水をかき分けながら進んでいった。

 案外すぐに朝比奈のもとにたどり着き、流れるプールを出、ベンチに座って休憩をすることにした。


「そういやなんで水をかけてきたんだ?」


「聞きたい?」


「それなりに」


「フッフッフー、それはね」


 ややもったいぶりながら、朝比奈は口を開く。


「翼くんがつまらなそうな顔をしていたからだよ」


「つまらなそうな、顔」


 そんなにつまらなそうだったのだろうか。


「だから水をかけたんだよ。ほら、今は少し楽しそうじゃん。どうせなら楽しくしようよ」


 ここで朝比奈は一呼吸置く。


「それに、翼くんが楽しそうにしてると私は嬉しいよ」


 そういって、とてもにこやかな笑顔になる朝比奈。

 翼は不覚にも、その笑顔に心を踊らせていた。

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