第二話、姉
俺の学校は家から徒歩15分のところにある。実家が少し学校から遠かったため、より学校に近い、姉【青野紬(20歳)。血の気たっぷりですぐ暴力をふるってくるがなにかと頼りになる】が借りているマンションに住んでいる。
もちろん、ただで住めるわけでもなく、なにかと雑用に駆り出されることもしばしば。
「ただいま」
まだ姉は帰ってきてない。
今日は翼が夕飯を作る日のため、スーパーへ買い出しに行く。(今日はポイント五倍の日だったな)
目当ての食材を買って家に帰ると姉はもう帰宅していた
「はやく夕飯作れー」
帰って早々酷いことを言われる。しかもその手にはプリン!(俺が自分用に買ってきたプリンだ)
しかし、そのことを言うと腹パンがついてくるため、なにも言えない。
「夕飯すぐだからプリン食うな」
「へいへい」
さっさと夕飯をつくって、消しゴムの処分をするか。
その後は二人で夕飯を食べ風呂を沸かし姉に風呂をとられた。
俺が風呂を上がるとなぜか姉が例の消しゴムを持っていた。(ああ、終わった…)
「ねえねえこれなに~?(笑)」
なんか目元がニヤニヤしている。姉は美人な方だと思うが、目の奥が嗜虐的なせいで台無しになっている。
「隣の席のやつに書かれた」
ぶすっとして答える。
「へぇ~、この翼を好きな人がいるんだね~。その子って可愛い?」
「この」は余計である。
「それなりに美人。姉ちゃんと違って(小声)」
「なにか言った~?(怒り)」
あ、拳がプルプル震えている。
「それに冗談だろ。俺を好きな奴がいるわけない」
「まーたすぐそういうこという。身内贔屓抜きにしても顔はいいのに、顔は」
顔がよくても、性格がクソなら駄目だ。それに、過去のこともあるし。
「その子、家に連れてきなよ。私が許可する!」
「無理。それに今日初めて話したし」
「マジで?隣の席にそんなかわい子ちゃんいるのに?てか名前は?」
数秒悩み、
「確か、朝比奈日葵」
「隣の席の子ぐらい名前覚えとけ」
バンッ‼せっかく教えたのに、頭をはたかれた。
「と・に・か・く、その子今度家に連れてこい。そういうことは見逃してあげるから」
「そういうことって?」
「そういうことはそういうことだ、それじゃ」
一瞬で部屋に帰っていった。
「はぁ~」
なんかどっと疲れた。
「へぇ~、翼を好きな人がいるなんてね」
幸か不幸か、その言葉を俺が聞くことはなかった。
「結局この消しゴム、どうすんだよ」
姉にとやかく言及はされなかったが、消しゴムを処分するのには変わりない。
長いこと悩み、気づいたら朝になっていた。