第十四話、勝負の行方
遂にテスト返却の日がやって来た。
テスト勉強も順調に進んだ。
テストはというと特筆すべきことは何もなかった。
全教科が返された日の放課後、戦いの勝者が決まる。
「覚悟はいい?」
「決まってる」
なんとも重々しい雰囲気で始まる点数対決。周りの生徒は異様なモノを見る目をしているがそんなことは気にしない。
「いくよ」
「ああ」
いっせーのっせ、と声を揃えて答案を相手に見せる。順番は国数英理社となっている。
バン!
一斉に国語の答案を見せ合う。
「95点!」
「97点!」
前者は朝比奈、後者は翼だ。
「く~、負けた」
「よし」
それぞれのコメントが飛び交う。
「次は数学っ」
バン!
「98点!」
「96点!」
「よっしよし」
「あとちょっとなのに」
その後も何事もなく進んでゆく。
「英語っ!」
「94点!」
「92点!」
「理科っ!」
「93点!」
「100点!」
「うっそマジか」
「最後に社会っ!」
「96点!」
「91点!」
「ふぁ」
「へっ」
終わった瞬間、マヌケな声が揃う。その理由は簡単。
「同点?」
「同点だと⁉」
そう、なんと、同点だったのである。
計算間違いがないか、もう一度確認する。
「合ってる……」
やはり同点だった。
それが分かった瞬間、笑いがこみ上げてくる。それは朝比奈も同じだった。
「はははっ」
「ふふっ」
そして次第に互いへの称賛に変わる。
「頭いいね、やっぱ」
「朝比奈こそ」
そしてまた笑い出す。
しばらくそれは止まらなかった。
ひとしきり笑った後、帰ることになった。
「またね」
「ばいばい」
妙に清々しい顔をしている。
朝比奈は数歩歩いたと思ったら、その場に立ち止まる。
「そういや罰ゲーム、どうする?」
「んー、分からん」
二人とも点数が同じではどうしようもない。
「それじゃあ、案が決まったら教えるね」
「分かった」
そして、さようならをする。
(楽しかったな)ぼっちで、テストの点数対決などをしたことがない身としては新鮮だった。
やや浮足立って帰る姿を見られて気味悪がられたことを翼が知ることはなかった。
二人はこの点数対決で同率で学年一位を取り、涙を呑む生徒がいたことを知る由もない。




