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第十三話、図書室での出来事

 雨がしずしずと降っている今日の昼休み。俺は図書室で期末試験のテスト勉強をしていた。テストはもう後一か月と迫ってきている。多分、ほぼ全ての学生が一番嫌いな時期であろう。

 俺はというと勉強自体はあまり嫌いではないし、ある程度の点数は期待できる。

 周りにいるその他生徒もテスト勉強のためかいつもより少し多い。


「隣、いい?」


 聞いたことのある声に後ろから話しかけられる。

 振り返るとやはり朝比奈だった。


「どうぞ」

「ありがとう」


 そして椅子を引き、喜びながら朝比奈は座った。

 朝比奈が椅子ごとこちらに寄る。


「テスト勉強、わからないとこ教えてよ」

「教えるの上手くない」

「嘘。頭良いじゃん」

「なんで知ってる」


 人に頭の良さを自慢したことなんてない。


「だって小テストほぼ満点じゃん」

「それか」


 それなら納得だ。小テストは隣の人の答案にマルをつけるというルールになっている。

 あれ、そういうことなら……、


「朝比奈も高得点維持している気がするが」

「それはそうだけど。私は翼君に教えてほしいから」


 俺に何を期待しているのであろうか。


「絶対にやだ」

「ええ~、頑固だなぁ」

「そうだけど、悪いか」


 ツンっとそっぽを向く。

 朝比奈がニマニマと笑い始めた。


「かっわいい~」


 朝比奈が顔をグイッと近距離に近づけてくる。心臓がバクバク鳴っている。


「やめろ」

 

 拒否反応を示し、朝比奈と距離を取る。


「仕方ないなぁ~、翼君は」


 某人気子供向けアニメの青猫の口調で言われる。


「じゃあさ、勝負しようよ。点数対決」

「どういうこと」

「字のまんま。テストの点数で勝負するの」


 数秒悩み、答えを出す。


「本当にいいのか」


 心の中では勝気満々である。


「言質取ったからね。それじゃあ罰ゲームはどうする」

「罰ゲームあるの」

「当たり前じゃん」


 それは聞いてない。


「でも勝てばいいでしょ」

「……確かに」

「納得するんだ、フフ」


 愉快そうに笑う。


「翼君が罰ゲーム決めてもいいよ」

「いいのか?」

「いいよ。勝負吹っ掛けたのは私だしね」


 さてどうしよう。負けても大丈夫なモノで朝比奈にあまり負荷をかけないものとなると……、


「駅前のケーキ屋のケーキってのは」

「へぇ、意外」

「そんなに変か」


 秒でバッサリ言われ、少し落ち込む。


「罰ゲームとしてはちょうどいいんだけどね。なんというか翼君がケーキを食べようとしているのが意外というか。ずっと甘党だけはないと思ってたし」

「マジか」


 生まれてから15年間、ずっと甘党ですが。


「コーヒーも苦くて飲めません」

「やっぱ可愛いね。翼君って」

「男に可愛いはやめろ」

「別にいいじゃん」


 かっこいいならまだしもかわいいは嫌だ。


「まあいいっか。それじゃあテスト国数英社理の五教科の総合点で勝負ね。逃げるはなしだよ」

「分かってる」


 元から負けるつもりはない。

 

 キーンコーンカーンコーン。キーンコーンカーンコーン。


 タイミングよくチャイムが鳴る。


「鳴ったね。急がないと」

「ああ」


 教材関連を手に取り席を立つ。

 朝比奈に続いて図書室を出る。

 二人並んで教室へと急ぐ。俺たちを見る周りの視線は誰もが揃って「なんでこいつが」という類いのもの。俺で悪かったな。

 


 結局テスト勉強は進まなかった。

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