第24話 やるべきこと、しない方がいいこと
結論から言うと、街に行っても大した情報は得られなかった。
あの八百屋のおじさんも、
「ユノちゃんかい? うーん、イイ子なのは分かるんだけど、おじさんもそんなに色々聞いたわけじゃないからねぇ。なんだか大変みたいだけど、あの明るさでしょ? いや、おじさんもあと10歳若ければ、うん、ほら。ね?」
という感じだ。
ほかに知ってそうな、彼女が懇意にしていたお店の人にも聞いたけど、似たような答えが返って来ただけ。
さらにアモスについて。
どうやらこちらには来ていないらしい。
どこか消えてしまったようだ。
あるいはあの村に戻ったとか?
いや、そんな自殺行為。するわけがないか。
だからせっかく街に来たというのに、無駄足を踏んだ形になったわけで。
「どうしようか……」
若干途方に暮れる。
ゲームならこういう時、『次は~~しよう!』みたいな親切設計なんだけどなぁ。
現実は非情だ。
「こうなったら一度、その村に行くべきじゃない? ほら、あたしなら顔、割れてないし」
とイトナは言うものの、気は進まない。
正直、先日の村人の様子は尋常じゃなかった、
あんなところにイトナを1人で送り込むのは、いくら腕が立つとはいえ躊躇われた。
けどそんな感じのことを言ったら、
『貧弱なあんたと違って、あたしが後れを取ると思う?』
って怒られるんだろうなぁ。
「なによ、その顔」
「え、いや……」
「何か失礼なことを考えていそうな顔」
どんな顔だよ。
とはいえ、図星だったからうろたえが表に出てしまった。
「いいから言いなさいよ。さもないと、力づくで――」
「わ、分かったよ。いや、ただ単にイトナの気持ちはありがたいけどさ。あの村は危ないから、1人で行かせるのは、ね? そう思っただけ」
と、なんとかなだめようと、角が立たないように言ったつもりだった。
その数瞬後には、顔を赤くして目を怒らせたイトナにぼろくそに言われるんだろう。
と、思ったんだが。
「え、いや。ちょっと。その……えぇ……」
あれ、違った反応?
なんだか顔を赤らめては同じだけど、どうも反応が違う。
照れてる、というか、恥ずかしがっているというか。
「イトナ?」
「そんな心配してくれるなんて……って、違うからね! 今のは、その! 違う……バカ!」
結局怒鳴られた。
なんだってんだよ。
「お前、色々残念だな」
肩に乗ったぴょん吉が、俺の頭に手を乗せる。
なんでこいつに同情されなきゃいかん!
「とはいえ、まいったな。手がかりなし。何もない状況で、あの村に乗り込むにはちょっと危なすぎだぜ。まぁ、俺様が変身すれば、あいつらなんざ一瞬だろうけどな?」
「それはやらないぞ。ユノに迷惑がかかるだろ」
「はぁ、てめーはユノユノユノって。女の尻おっかけて、だらしねー」
「違う! そういうのじゃない!」
若干下心があったのは間違いない。
けど、そうじゃない。
だって否定しないと、ここには――
「へぇ、そのユノって子。好きなの?」
イトナがじろっとこちらを睨みつけてくる。
あぁ、ヤバい!
なんかさっきよりもピンチ!
そりゃそうだ。
デート中に他の女の子の話するなんてもってのほかだって『マル秘恋愛マスター白書デート編』にも書いてあったし。
だからイトナが怒るのは当然といえば当然。
まぁデートじゃないけど。
まぁ彼女じゃないけど。
いや、待て。
ここでイトナがそういう反応するってことは、ちょっと脈があるってことじゃないか?
「ふっ、実はユノとは将来を誓い合った――」
「とか言ったら、あんたの骨を1本ずつ折った後に、宇宙空間に放りだす」
「赤の他人です!」
調子乗った途端、これだ。
慣れないことするんじゃないな、と反省。
しょうがない。
本当に納得してくれるかは別として、イトナにはしっかりとユノのことを伝えておこう。
そんなこんなで、ユノとの出会いやその境遇を語ること数分。
「なにそれ! ありえない! ひどすぎじゃない!? その村の奴ら、全員クソね! てかあんた何やってんの! さっさとそのユノって子、救いにいくわよ!」
イトナが単純――いや、純粋でよかった。
なんとか怒りの矛先が逸れて、イトナのやる気も上がったところで。
「聞き覚えのある声がしたと思ったが、少年。確か、リオ、だったか?」
声をかけられた。
凛とした響きのある女性の声。
振り向くとそこには、すらっとした長身にぴちっとしたレザースーツ。
何より圧倒的に威圧感を放つ、その瞳は一度見たら忘れない。
シーラだ。
そう、新たな試練が俺を待っていた。




