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プロローグ

 数年前、まだ幼かった俺は滑り台と砂場しかないような小さな公園でよく一人で遊んでいた。

そしてセミが鳴く暑い真夏の日。

この日もまた俺はこの公園で一人砂をいじっていた。

「……あついなぁ。」

そういった後、ふとあることに気づく。

「ぼうしがない。」

道理で暑い訳だ。

「さがしてるのはこれ?」

そう後ろから声をかけられ、振り返ると、

一人の女の子が立っていた。その時の俺と同じくらいの背丈だったから、多分同い年くらい。

腰まで伸ばした髪の毛がとても綺麗だったのを今でも覚えている。


それから、その女の子とは仲良くなり、よく二人きりで遊ぶようになっていた。

「かーくんは、なんでいつもこの公園にいるの?」

(俺の名前は楓なのでかーくんと呼ばれていたのだ。)

「おかあさんとおとうさんはおしごとでたいへんだから。」

当時の俺はそう答えたと思う。

「そっか。わかんないけどたいへんなんだね。」

そんな他愛の無い会話をしていただけだけど。

その子はよく笑い、よく喋る子だった。

笑った顔は特に可愛かった。


よく一緒に遊んでいたのだが、何故か当時の俺は、

その子の名前を聞かなかった。単に聞くのを忘れていただけなのか、それとも別に聞かなくてもいいと判断したのかは分からないが、とにかく名前は聞かなかった。今は聞かなかったことを後悔している。

聞いとけよ。当時の自分!!


その子と遊ぶようになり、しばらく経った頃。

外は大分涼しくなっていた。いつもと同じように、二人で遊んでいると、

「わたし、もうちょっとでひっこすんだって。」

その子は少し悲しそうに打ち明けた。

「……なんで?」

「わかんない。でもとおいところにいくんだ。」

俺は何も言えなかった。目の前の女の子は、必死に泣くのを堪え、無理矢理笑っている。こんなの見たら、一緒に居たいだなんてワガママすら言えっこないと思う。

「おおきくなったらあいにいくね。そのときは、」

    ―かーくんのおよめさんにしてね―

「うん。わかった。」

「かーくん、じゃあまた……」

「ちょっとまって。」

今しかないと思った。家族と海に行ったとき偶然二つ見つけた、綺麗だったからこの子にあげようと思っていた、青い貝殻。この子の瞳と同じ色。

「これあげる!」

俺は片方の貝殻を渡した。

「きれい……ありがとう!だいじにするね!」

夕焼けに染まるその子の顔は本当に綺麗だった。

「じゃあまたね。かーくん。」

そう告げて彼女は公園から去って行った。

「もうすこしだけ、あそびたかったな。」


次の日から、その子が公園に来る事はなくなっていた。

「また……ひとりぼっちか。」

次第に俺もこの公園に来る事はなくなっていた。





始めまして!小説初心者の苹果です。

この度は、この作品に興味を持って頂きありがとうございます。これからも読んでもらえると、制作の励みになります!

では改めてよろしくお願いします!

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