第伍什玖話 治外法権は使えるのだろうか…
「戻った!誰かおらんか!」
「はえ~…すっごい大っきい…」
士郎の実家に着き馬車を降り、玄関前で人を呼ぶ。かなり立派な家でその上道場までしているとなると…使用人の一人や二人、普通にいそう。
「ううむ…誰も出て来ん。道場の方に行ってこよう、ここで待っていろ。」
「あ、なら2人の様子見てきますよ。何かあったら呼んで下さい。」
士郎とは逆に歩き出し馬車に戻る。そういやここ砂利が敷かれてるんだな。気持ちのいい音が1歩1歩体に響く。
「さて、戻ってきたは良いものの。」
馬車に乗り込み思考する。手綱を取るだけじゃ何も思いつかんわな。
この高貴なお嬢様お二方はどうするべきか…荷台ですやすや寝てらっしゃる。
とりあえず日陰に移動させたいが。
「ん、誰か来る。足音の重さからしてそんなに背丈は大きくないな…」
「其処の御仁、その娘らをどうなさるつもりで?」
背後から声。高いな、女か?それもそこそこ若い。恐らくは10代前半…
「どうって…とりあえず日陰に移動を。ここだと日が照って綺麗な肌に害が出る。」
背中を向けたまま応答する。友好的な声のトーンじゃない…
「では、今直ぐにその罪斬ってくれる!」
え?何故?とりあえず馬車から降りよう…と振り向いた時。
「破ッ!」ガゴォッ!
座っていた所に剣が当たり鈍い音を響かせた。跳び避けたものの普通に痛そうではある。
「危なっ!急に斬り掛かってくるとかイカれてんのか!」
「誘拐者の戯れ言に耳を貸す気は無い!神妙にお縄に付け!」
勘違いされてんのか…よく見ると道着だし刀は木刀だし動きやすいように髪を結ってる…あっ、ここの訓練生か。
「やっ!」「右。」
「はっ!」「左。」
「せやっ!」「突き…よっ。」
あまりにも剣速が遅すぎるので掴んでしまった…振りかぶりが大きすぎてどっちに振るかバレバレ。
「ぐっ…離せ!」
「断る。どうせまた殴り掛かってくるだろう?」
「当たり前だ!悪は成敗せねばならん!」
「人の話を聞けよ…っと!」
剣を離すついでに髪紐を解いてやった。これでちょっとは頭が冷えるといいがな…
「何をする!それを返せ!」
「話聞いたら返してやる。そうしないのなら話を聞く気になるまで構うぞ?」
「卑怯な…やああああっ!」
やれやれ、駄目みたいだな。最悪気絶させて起きたら2人に話してもらおう…
第伍什玖話 治外法権は使えるのだろうか… 完




