第伍什参話 異世界の空気は思春期を加速させる
「ふわあ~…今何時?」
見知らぬ土地での寝起きは感覚がズレるなぁ…
起き上がり窓を開ける。鋭い光が目にしみる。
まだ朝日も昇りきってないみたい。
「へえ…日の出前って結構明るいんだな。こんな時間に起きたこと無ぇから新鮮だ。」
息を吸い込みまた吐き出す。異世界の栄養?をたっぷり含んだ空気が全身を駆け巡る。
「んぅ~…月斗さん…?」
襖を開け出てきたのはシエル。
「あ、おはようシエr…うおおおい!おまおまおまうぇぇぇ!」
「むぅ…?どうしましたぁ?そんなに慌ててぇ…」
どうやらシエルは寝ぼけている様子。が、その格好が問題で…
「お前何で着物はだけてんだよ…」
「はらけてぇ…?えへへぇ…月斗さんも好きれすねぇ…ほらほらぁ…」
「いや俺じゃないからな!?あとこっち来ないでくれ!」
シエルは左肩が出ていて、胸が今にも見えそうなのだ。必死に目を反らしているが、どんどん視界に入ろうとしてくる。
「逃がしませんよぉ~?えいっ♪」
「うおっ」
次の瞬間、シエルは既に俺の上に馬乗りになっていた。
「ちょ!見える見える!隠して!」
「見たいんれすかぁ?もう…しょうが無いれすねぇ…ちょっとだけですよぉ?」
「いやちょっとも何もないから!見たいわけでもないし!」完全に見たくないと言えば嘘になるが。
「素直になるのもいいことですよ…?」
「そういうことでは無い!あと顔が近い…(小声)」
その距離約30cm。正統派王道ラブコメならキスでもするんだろうな、多分。
「ぬぐぐぐぐぐ…(グイグイ)」
「にゃ、にゃんではにゃれようとするんれふか…」
居候の身なのでそんなことをするわけにはいかないのだ。まあそんなことはただの建前なの…
ガラッ
「おはy…邪魔しちゃったかしら?」
「あっ待って行かないで助けてくださー」
パタン
「あらぁ…お姉ちゃん…行っちゃったねえ?」
鋭い視線を感じた時にはもう遅かった。
得物を追い詰めた獅子のような。
漫画なら目が光るような。
蟇蛙を睨む大蛇のような。
「あっ(察)ふーん…(覚悟&諦め)」
どうしてこうなった…
このあとめちゃくちゃ…ってやつである。
第伍什参話 異世界の空気は思春期を加速させる 完




